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第88話 魔導F1開幕! 最速の夫を賭けた『デス・レース』

「紳士淑女の諸君! そしてスピードに魅せられた馬鹿野郎ども! ようこそ!」


 第66階層『ダンジョン・インターナショナル・サーキット』。 10万人の観客が見守る中、実況のマイクを握るのは、なぜかディランだった。


「主催者権限で実況席に逃げたな、ディラン!」


 グリッドの最前列で、愛車『レッド・ドラゴン号』のエンジンを吹かしながらレオンが叫ぶ。


「うるさい! あんな『走る凶器』に混ざれるか! ……さあ、スターティング・グリッドを紹介しよう!」


 ポールポジションは、借金王レオン。 2番手、魔王ヴェルザード(重力制御カスタム)。 3番手、聖騎士アリシア(フルアーマー装甲車)。 4番手、賢者ソフィア(自動運転AI搭載)。 5番手、聖女ノエル(機体名『ゆりかご・マークⅡ』)。


 優勝賞品は『ディラン様・1日貸切券(何でも言うことを聞く権利)』。 この賞品のせいで、妻たちの目が完全に据わっている。


「シグナル……オール・レッド! ブラックアウト……スタート!!」


 ドゴォォォォン!!


 爆音と共に、全車が弾丸のように飛び出した。


「ヒャッハー! 俺のドライビング・テクニックを見せてやるぜ!」


 レオンがロケットスタートを決める。 彼の『野性の勘』によるドリフトは、物理法則を無視した鋭角ターンを描く。


「甘いな、人間風情が」


 ヴェルザードが指を鳴らす。


「重力魔法・ゼロG(無重力)!」


「うおっ!? 車が浮いた!?」


 レオンの車が宙に浮き、タイヤが空転する。 その隙に、ヴェルザードが音速で抜き去っていく。


「ふふ、これで1位は……なっ!?」


 ズドォォォン!!


 ヴェルザードの背後から、黄金の光を纏った塊が突っ込んできた。 アリシアだ。


「どいてください! 『聖なる突撃ホーリー・チャージ』!!」


「貴様! ブレーキを踏まぬか!」 「ブレーキ? 神の加護があれば、壁に当たっても死にませんから不要です!」


 アリシアはガードレールもライバルも全て弾き飛ばしながら直進していく。 もっともタチの悪い『無敵の特攻』だ。


「非効率的じゃな」


 混乱する先頭集団を、冷静にパスしていく影があった。 ソフィアだ。


「最短ルート計算完了。……空間転移ショートカット理論、実証開始」


 彼女の車は、コーナーの入り口で消滅し、出口で再出現した。 もはやレースではない。ワープだ。


「おい審判! あれは反則だろ!」 「ルールブック第1条:『ゴールすればよかろうなのだ』」


 カオスだ。 コースは破壊され、アスファルト片が降り注ぐ。 そんな中、最後尾をのんびりと走る車があった。


「わ~、風が気持ちいいですね~♡」


 ノエルだ。 彼女はレースに参加している自覚があるのかないのか、優雅に手を振っている。 だが、その車体からは謎の『バブみオーラ』が出ており、近づく後続車イグニスたちが勝手に戦意を喪失してリタイアしていく。


「ママ……僕、もう走れないよ……」 「お家に帰ってミルク飲みたい……」


 恐ろしい。精神攻撃デバフだ。


 ファイナルラップ。 先頭は、車体がボロボロになりながらもデッドヒートを繰り広げるレオン、ヴェルザード、アリシア。


「貰ったぁぁぁ! 賞品は俺のもんだぁぁ!」 「寝言は寝て言え!」 「ディラン様は渡しません!」


 3台が並んで最終コーナーへ飛び込む。 その時、3人の闘気が共鳴し、巨大な魔力爆発が起きた。


 カッッッ!!!


 閃光がサーキットを包む。


 …… …………


「……ゴール!」


 土煙の中から現れたのは……タイヤが1本だけになったレオンの車でも、翼が折れたヴェルザードの車でもなかった。


 無傷で、ニコニコと笑いながらゴールラインを切った『ゆりかご・マークⅡ』。 ノエルだった。


「あれ? 皆さん、どうしたんですか?」


 爆発で共倒れし、黒焦げになって倒れている3台を不思議そうに見つめるノエル。 『漁夫の利(聖女の奇跡)』である。


「勝者、ノエル!!」


 会場がどよめきと歓声に包まれる。


「やりました~! ディランさん、約束ですよ? 1日ずっと、私の『赤ちゃん』になってくださいね♡」


「……え?」


 俺は戦慄した。 あのレースの勝者が、一番ヤバい要求をするノエルだとは。 サーキットの修理費と、これからの『バブみ地獄』を思い、俺は実況席で静かに気絶した。

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