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第87話 渋滞よさらば! 『夢の超特急』と、狂気のサーキット建設

「……動かん」


 王城のテラスから見下ろす王都は、今日も今日とて『ディラン・カブ』の大渋滞で麻痺していた。 空飛ぶ車が空中で数珠つなぎになり、クラクションの合唱が響いている。


「これでは経済が停滞する。……やはり、あれを導入するしかないか」


 ディランは決断した。 個人の移動マイカーの次は、大量輸送マストラだ。


「ソフィア! ヴェルザード! 至急、『線路』を敷くぞ!」


 俺の号令で、新たな国家プロジェクトが始動した。


 …… …………


 数週間後。


 王都の中央駅には、巨大な流線型の鉄塊が横たわっていた。


「ご覧ください、ディラン様。これが我が国の技術の結晶……『超伝導・魔導リニア列車・ライトニング・スネーク号』です」


 ソフィアが誇らしげに説明する。


「車輪はない。ヴェルザードの『重力魔法』で浮上し、風精霊のジェット推進でかっ飛ばす。……最高時速は500キロ。王都から第1階層まで、わずか10分じゃ」


「完璧だ。これで通勤ラッシュも解消される」


 俺は満足げに頷いた。 中身も豪華だ。 ノエル監修の『癒やしのグリーン車』には、スライム・マッサージ機が完備され、セレスティア考案の『駅弁(魔物肉弁当)』も販売される。


「出発進行!」


 プォォォォン!!


 警笛と共に、列車は音もなく滑り出した。 振動ゼロ、騒音ゼロ。 窓の外の景色が線になって流れていく。


「速い! そして快適だ!」


 これで一般市民の移動は劇的に改善された。 だが、俺にはもう一つ、解決しなければならない問題があった。


 それは、高性能すぎるスーパーカーを買ってしまった『彼ら』の処遇だ。


「おいディラン! 俺の『レッド・ドラゴン号』のエンジンが唸ってるんだよ! 渋滞でノロノロ運転なんて耐えられねぇ!」


 レオンが執務室に怒鳴り込んできた。 イグニスやザインも、不満たらたらだ。


「分かってる。……お前らのために、最高の『遊び場』を用意した」


 俺はニヤリと笑い、転移ゲートを開いた。


 場所は、ダンジョン第66階層・荒野エリア。 俺はここを【ダンジョン・クリエイト】で更地にし、巨大な建造物を作り上げていた。


「な、なんだここは……!?」


 レオンたちが絶句する。


 そこには、全長10キロにも及ぶ、複雑怪奇なアスファルトのコースが広がっていた。 急カーブ、立体交差、ループ、そしてジャンプ台。 観客席は10万人収容可能。


「名付けて……『ダンジョン・インターナショナル・サーキット』だ!」


 俺は高らかに宣言した。


「公道で暴走するのは禁止だ。だが、ここでは制限速度はない。魔法の使用も(防御のみ)許可する。……思う存分、走り回れ!」


「うおおおお! 最高だぜディラン!」

「一生ついていきます陛下!」


 男たちは歓喜の雄叫びを上げ、愛車に飛び乗った。


 そして、そこに『彼女』が現れた。


「あら。……面白そうなことをしていますわね」


 セレスティアだ。 その手には、いつもの電卓ではなく、分厚い企画書が握られている。


「旦那様。ただ走らせるだけではもったいないですわ。……これを『国営ギャンブル』にしましょう」


「……やっぱりそう来たか」


「『魔導F1グランプリ』です。入場料、放映権、そして賭けブックメーカー。……鉄道の建設費なんて、一瞬で回収できますわ」


 こうして、ダンジョン国には二つの新たな名所が誕生した。


 一つは、市民の足となり、快適な旅を提供する『魔導列車』。 もう一つは、スピード狂たちの楽園であり、鉄と魔法と金が飛び交う熱狂の『サーキット』。


「さあ、第一回グランプリの開催だ! 優勝賞金は……『俺の1日貸切権』だ!」


「「「なんですって!?」」」


 俺の不用意な発言により、レオンたちだけでなく、妻たち(アリシア、ヴェルザード、ノエル)までもがヘルメットを被って参戦を表明した。


「負けませんよ! 私の『ホーリー・チャリオット』の速さを見せます!」(アリシア) 「ふふ、重力加速で音速を超えてやる」(ヴェルザード) 「バブみターボ、全開です!」(ノエル)


「……あ、これ、普通のレースにならないやつだ」


 スターティング・グリッドに並ぶ、規格外のスーパーカーたち。 シグナルが点灯する。


 ダンジョン国の空気が、焦げ付いた魔導オイルと魔力の匂いに包まれようとしていた。

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