第82話 食い倒れの都『O-SAKA』と、ヒョウ柄に染まる魔王
「まいど! ようおこし!」
「兄ちゃん、安くしとくで! 買うてってや!」
ダンジョン第77階層・商業特区『O-SAKA』。
転移ゲートをくぐった俺たちを待っていたのは、極彩色のネオン看板と、ソースの焦げる香ばしい匂い、そして威勢のいい商人たちの声だった。
ここは、世界中の珍味と商人が集まる「食い倒れと商売の街」。 公用語はなぜか関西弁ライクな『オーサカ弁』だ。
「……賑やか、というより騒がしいな」
俺が呟くと、妻たちの目の色が輝き始めた。
「ディラン様! 見てください! 巨大なタコの看板が動いています!」 アリシアが目を丸くして指差す。
「あれは……『クラーケン焼き(タコ焼き)』じゃな。匂いだけで分かる。美味いやつじゃ」 ソフィアが眼鏡を曇らせ、涎を垂らしている。
「ふふ、ここには『値切りの美学』があると聞きます。商売人として血が騒ぎますわ」 セレスティアが電卓を片手に戦闘態勢に入る。
「さあ、行きましょうディランさん! 食べ歩きデートですよ!」
ノエルに手を引かれ、俺たちはO-SAKAの雑踏へと繰り出した。
…… …………
「へいらっしゃい! 『灼熱クラーケンの大玉焼き』やで! 外はカリカリ、中はトロトロ、食べたら火傷間違いなしや!」
まずは腹ごしらえだ。 屋台のおっちゃんが、バスケットボール大の巨大タコ焼きを焼いている。
「おじさま、一つ頂くのじゃ」 「はいよ! マヨネーズは?」 「致死量で頼む」(ソフィア)
渡されたタコ焼きは、熱々のマグマのようだった。
「あーん♡ ディラン様、はい♡」 ノエルがフーフーして差し出してくる。
「んむ……熱っ!? でも美味い!」
ダンジョン産の高級食材を、ジャンクなソース味で食らう。 これぞB級グルメの極致。 ソフィアに至っては、無言でハフハフと言いながら、すでに3皿目を平らげている。
「ふぅ……食ったな」
腹が満たされた俺たちが次に向かったのは、ファッションストリート『シン・サイバシ』エリアだ。
ここで、魔王ヴェルザードがとあるブティックの前で足を止めた。
「……ほう。なんという……前衛的な柄じゃ」
彼女が手に取ったのは、黄金と黒の斑点が入り乱れる、ド派手な『ヒョウ柄のローブ』だった。
「店員! これは何の皮じゃ?」
「お目が高い! こら『魔獣ゴールデン・レオパルド』の直毛皮や! 着るだけで魔力が3倍、オバチャン力が50倍になるで!」
「気に入った! これをくれ!」
「ちょ、待てヴェルザード!」 俺は止めた。 「それは魔王というより、ただの『大阪のオカン』だぞ!?」
「何を言う。この威圧感、余にふさわしいではないか。……どうじゃ?」
ヴェルザードがヒョウ柄のローブを羽織り、サングラスをかけた。 その姿は、魔王のカリスマ性と、商店街のドンのような貫禄が奇跡の融合を果たしていた。
「……似合ってるのが悔しい」
「兄ちゃん、嫁さん似合ってるやん! ついでにこの『虎柄のスパッツ』もどうや!」
「買うのじゃ!」
ヴェルザードは完全にO-SAKAファッションに染まった。 食べ歩き、買い物、そして漫才のような掛け合い。 O-SAKAの熱気に当てられ、俺たちは笑い転げた。




