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第77話 乱入する『空気読めないフサフサ』と、最後の選択

「……では、誓いの言葉を」


 ダンジョン国・大聖堂(兼・披露宴会場)。 煌びやかなシャンデリアの下、ディランは祭壇の前に立たされていた。


 目の前には、ウェディングドレスに身を包んだ5人の美女たち。 アリシア、ノエル、ヴェルザード、ソフィア、セレスティア。 正直、18歳になった俺でも直視できないほど美しい。 (まあ、性格と独占欲は規格外だが)


 観客席には、レオンたちや、ハゲた貴族たち、そして国民たちが詰めかけ、固唾を飲んで見守っている。


 神父役のガリバーが、厳かに告げた。


「この結婚に異議のある者は、今すぐ申し出よ。さもなくば永遠に黙――」


「異議ありぃぃぃ!!」


 バーン!!


 大聖堂の扉が、空気を読まない轟音と共に開かれた。


 そこに立っていたのは、不自然なほど黒々とした髪をなびかせた男――俺の父親、アークライト公爵だった。 後ろには、武装した私兵団を引き連れている。


「お、父上……?」


 俺が呟くと、会場がどよめいた。

  「なんだあのフサフサは!」

「殺せ!」

「結婚式の邪魔だ!」

 と、ハゲた貴族たちがブーイングを飛ばす。


 父親は、祭壇まで大股で歩み寄ると、俺の腕を掴んだ。


「ディラン! 目を覚ませ! こんな『化け物』どもと結婚など、アークライト家の恥だ!」


「……は?」


 父親は、花嫁たちを指差して叫んだ。


「魔族にエルフに平民だと!? 公爵家の嫡男が何を考えておる! 貴様の相手は、ワシが決めた『由緒正しき人間の貴族の娘』でなければならん!」


「……今さら、何を」


「戻ってこい、ディラン! お前の『フサフサ遺伝子』と『稼いだ金』は、実家のために使うべきだ! さあ、こんなふしだらな女どもは捨てて、ワシと一緒に来るんじゃ!」


 父親は俺の手を強引に引いた。


(……ああ、なるほど)


 俺は冷めた目で父親を見た。 こいつは、俺を助けに来たわけじゃない。 俺が『イケメン化』し『大金持ち』になったのを知って、利用価値が出たと判断し、回収しに来ただけだ。


「……ふざけるな、人間風情が」

「消し炭にしてくれる」


 背後から、凍てつくような殺気が膨れ上がった。 ヴェルザードの手に黒い炎が、アリシアの聖剣に光が宿る。 花嫁たちがブチ切れたのだ。 このままでは、父親どころか公爵家ごと地図から消滅する。


「待て」


 俺は花嫁たちを手で制した。 そして、父親の手を乱暴に振り払った。


「ディ、ディラン?」


「帰れ、父上。……いや、アークライト公爵」


 俺は18歳の低い声で、冷たく告げた。


「俺を『無能』と呼んで追放したのはあんただろう。今さら『家族』面して割り込んでくるな」


「な、なんじゃと!? ワシは親心で……!」


「親心? 違うな。あんたが見ているのは、俺の『金』と『髪の毛』だけだ」


 俺は振り返り、5人の花嫁たちを見た。


 彼女たちは、強引で、重くて、計算高くて、厄介だ。 俺の静かな生活を壊し、振り回し続けてきた。


 けれど。 俺が子供の姿で無力だった時も、俺の才能を信じ、背中を預け、一緒に笑ってくれたのは彼女たちだ。


「……こいつらは、確かに重いし、怖いし、面倒くさい」


「ディラン様?」


「でもな、あんたの用意した『顔も知らない貴族の娘』よりは、100億倍マシだ」


 俺はニカっと笑った。


「俺は、この『クレイジーな連中』を選ぶよ。……悪いな、俺の人生は俺が決める」


 その瞬間、会場が静まり返り――そして、爆発的な歓声が上がった。


「「「キャーッ!! ディラン様ぁぁぁ!!」」」


 花嫁たちの顔が、一斉に輝いた。 アリシアが泣き崩れ、ノエルが飛び跳ね、ヴェルザードが頬を染め、ソフィアが眼鏡を拭き、セレスティアが「今のシーン、DVDの特典映像にしますわ!」と叫ぶ。


「ええい、ならず者どもめ! こうなれば力ずくでも……!」


 父親が私兵に合図しようとした、その時。


「お客様、退場のお時間です」


 レオンとイグニス、ザインが父親の背後に立っていた。


「花婿の『男の決断』を邪魔する野暮天は……つまみ出せぇぇ!!」


「ひ、ひいいぃぃ! 乱暴するな! ワシの髪が! 髪が乱れるぅぅ!」


 父親と私兵たちは、レオンたちによってボールのように放り投げられ、空の彼方へと消えていった。 キラリと光る星となって。


 邪魔者は消えた。 残ったのは、俺と、5人の花嫁だけ。


「……さて。邪魔が入ったが」


 俺は観念して、ガリバーに向き直った。


「続けてくれ。……誓うよ」


「……はい!」


 ガリバーが感涙しながら頷く。


「では、誓いのキスを!」


「「「いただきまーす!!」」」


 5人が同時に俺に飛びかかってきた。 逃げ場はない。 俺は目を閉じ、彼女たちの愛(と物理的な衝撃)を受け止めた。


 チュッ、チュッ、ブチュッ!


「んむっ……!?」


 唇、頬、額、首筋。 四方八方からのキスの雨。 もはや儀式というより、捕食だ。


『おめでとうございます!!』


 鐘が鳴り響き、ドラゴンが空を舞い、マヨネーズ型の風船が飛ぶ。 王都始まって以来の、最もカオスで、最も盛大な結婚式。


 こうして、ディラン・アークライトは、名実ともにダンジョン国の王となり、5人の最強の妻を持つ『世界一の勝ち組(兼・尻に敷かれ夫)』となったのだった。


(……まあ、悪くないか)


 もみくちゃにされながら、俺は空を見上げて苦笑した。 45歳のおっさんが夢見た『スローライフ』とは程遠いが、退屈しない人生になりそうだ。


 これにて、第1部・完! (そして今夜から始まる、恐怖の初夜編へ続く……)

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