表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/127

第49話 『引きこもり賢者と、A5ランクの誘惑』

 男たちが狩った魚や、持ち込んだ食材でバーベキューが始まった。 河原に香ばしい肉の焼ける匂いが充満する。


 だが、そこに一人の重要人物が欠けていた。 大賢者ソフィアだ。


「ソフィアのやつ、まだテントから出てこないのか?」


 俺が尋ねると、アリシアが困った顔で答える。


「ええ。『紫外線は肌の老化を招く』『ガチャの更新時間だから忙しい』って、結界を張って閉じこもってるんです」


「やれやれ……。せっかくの最高級『ドラゴン牛のA5ランクカルビ』が焼けたというのに」


 俺はわざとらしく大きな声で言い、うちわで肉の匂いをテントの方へと扇いだ。


「……!」


 テントが一瞬、ピクリと揺れた。 天才的な魔力探知能力を持つ彼女が、この匂いの正体に気づかないはずがない。


「さらに、今日は特別に、キンキンに冷えた『カフェイン増し増しエナジードリンク』も用意してあるんだがなぁ」


 ズズズ……と、テントのファスナーが少し開く。 そこから、暗黒のオーラと共に、青白い手が出てきた。


「……ディラン。その肉とドリンクを献上しなさい。そうすれば、私のこの『対紫外線・絶対遮断領域(日傘)』の中に、貴方を入れてあげなくもないわ」


 現れたのは、完全防備のソフィアだった。 水着ではない。 黒いローブを目深に被り、サングラスをかけ、日傘をさし、さらに全身に冷却魔法をまとっている。 夏のレジャーに来たはずが、一人だけ『不審者』か『闇の行商人』のような風貌だ。


「おいおい、そんな格好で肉が食えるか? ほら、少しは肌を出してビタミンDを生成しろ」


「嫌よ! 太陽は敵! リア充も敵! 私は日陰で肉だけを貪るの!」


 ソフィアは素早い動き(身体強化魔法)で俺の手から皿を奪い取ると、猛烈な勢いで肉を吸い込み始めた。


「うまっ……! 何これ、脂が甘い……! ガチャで爆死した心が癒やされる……!」


「……お前なぁ」


 呆れる俺の横で、褌姿のレオンが笑う。


「ガハハ! ソフィア、お前も一緒に川に入ろうぜ! 褌なら貸すぞ!」


「死んでも嫌よ! 近づかないで筋肉ダルマ! 暑苦しい!」


 ソフィアが氷結魔法を放ち、レオンを凍らせる。 その騒ぎを見て、ようやく場全体が一つになった。


 普段は研究室や執務室にいるメンバーたちが、褌とローブと水着入り乱れて肉を奪い合う。 これこそが、ダンジョン国が誇る「カオスな日常」の縮図だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ