第48話 『園長先生の特別授業(スク水)と、漢(おとこ)たちの褌(ふんどし)』
上流で聖騎士アリシアと魔王ヴェルザードが、最新の水着で華やかに涼んでいる頃。
川の下流では、全く別の熱気が渦巻いていた。
「おいディラン! 女子たちだけズルいぞ! 俺たちにも『夏専用の戦闘服』があるんだろうな!?」
筋肉を誇示しながら詰め寄ってきたのは、剣聖レオンだ。
その横で、斥候のザインも期待と不安が入り混じった目をしている。
「安心しろ。お前たちには、東方の島国に伝わる『伝説の戦士の正装』を用意してある」
俺はアイテムボックスから、純白のサラシを取り出した。
「これだ。『ザ・フンドシ(FUNDOSHI)』」
「ふ、ふんどし……? ただの長い布に見えるが……」
「甘いなレオン。これは腰一点で全身の気を支え、防御を捨てて攻撃力を底上げする『漢』のための装備だ」
「おおお! 背水の陣! 燃える! 俺に巻いてくれ!」
数分後。
純白の褌一丁で仁王立ちするレオンと、顔を真っ赤にして岩陰に隠れるザインの姿があった。
「凄いぞ! 下半身がスースーして、逆に感覚が研ぎ澄まされる!」(レオン) 「(帰りてぇ……Sランクの肉につられて来るんじゃなかった……)」(ザイン)
◇
その喧騒から少し離れた木陰に、遅れて到着した一団がいた。
「み、みんな……! 走っちゃダメよ、転ぶから……!」
息を切らして現れたのは、元聖女ノエルだ。
彼女は現在、『国立ダンジョン保育園』の園長として、魔物の子供たち(ベビー・オークやスライム・キッズ)を引率してやってきたのだ。 子供たちの世話に追われ、神官服(保育士エプロン着用)は泥と汗で少し汚れている。
「遅かったな、ノエル。引率ご苦労だった」
俺が声をかけると、ノエルは恐縮したように頭を下げた。
「ごめんなさい、ディラン様。……あの、私も皆さんと一緒に水遊びをさせていただいても……?」
「当然だ。だが、その服では動きにくいだろ。お前には園長としての責任がある。水難事故の際、即座に子供たちを救助できる『公式インストラクター用装備』を用意してある」
俺は恭しく、紺色の布地を差し出した。
「こ、これは……?」
「異世界の教育現場で採用されている『Type-S』だ。水の抵抗を極限まで減らし、かつ『先生』としての威厳を示すための伝統的なデザインだ」
「威厳……ですか? なんだか下着みたいに見えますけど……」
「その無駄のなさが、子供たちに『規律』を教えるのだ。さあ、着てみろ。子供たちもノエル先生の勇姿を待っているぞ」
「は、はい! ディラン様がそうおっしゃるなら!」
◇
数分後。
簡易テントから出てきたノエルの姿に、その場にいた全員(特に下流の男連中)の視線が釘付けになった。
「ど、どうでしょうか……? 胸元が少しきついような……」
彼女が身に纏っていたのは、旧型の紺色スクール水着。 元聖女としての清楚な雰囲気と、少しあどけなさが残る顔立ち。 そこに、体のラインを容赦なく露わにする紺色の密着スーツ。 さらに、胸元にはひらがなで『のえるせんせい』と書かれた白い名札。
破壊力が凄まじい。
アリシアのビキニのような派手さはないが、「真面目な先生が言われるがままに着ている」という背徳感が、見る者の理性を揺さぶる。
「……素晴らしい。これこそが教育だ」
俺は深く頷いた。
下流の方で、褌姿のレオンが「うおおおお! ノエル先生ぇぇぇ!!」と叫びながら濁流に流されていったが、放置した。
「せんせー! それかっこいいー!」
魔物の子供たちや、すでに水遊びをしていた妖狐のルナが、ノエルの周りに集まってくる。
「あ、こら、引っ張っちゃダメ! 肩紐がずれちゃう……!」
子供たちにじゃれつかれ、困った顔で水着を直すノエル先生。
その光景は、まさにこの世の楽園だった。
一方その頃。 河原の奥にある洞窟の陰では……。
「……絶対に嫌よ。太陽は敵」
大賢者ソフィアが、黒いローブに日傘、サングラスという完全防備で、岩陰から肉の焼ける匂いだけを嗅いでいた。
「おいソフィア、お前も泳がないのか? 水着ならあるぞ」
「お断りよ。私はここで、皆様が紫外線のダメージを受ける様を高みの見物させてもらうわ。……あと、焼き上がったお肉はこっちに回して」
頑として動かない引きこもり賢者。 だが、俺は知っている。彼女が水着(おそらく学校指定のジャージか、競泳水着)に着替えるのは、日が沈んでからだということを。




