表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/45

第36話 子供たちのために『職業体験テーマパーク』を作ったら、将来の夢が『魔王』一色になってしまった

 ダンジョンの人口が増え、子供たちの数も増えてきた。


 学園での勉強も大事だが、将来のために「社会の仕組み」を知ることも重要だ。


「よし。今日は授業を変更する。 『ダンジョン・ワークランド』の開催だ!」


 俺の宣言により、体育館(巨大コロシアム)が、即席のパビリオン会場へと変貌した。


 ここには、我が国の主要な職業を体験できるブースが並んでいる。


 子供たちは目を輝かせて、自分の興味のある仕事場へと走っていった。


 ◇


【騎士・冒険者ブース】


「いいか、剣というのはこう構えるんだ!」


 剣聖レオンと聖騎士アリシアが、子供たちに模擬剣(ウレタン製)を持たせて指導している。


 男の子たちは興奮気味だ。


「うおお! 俺、レオン様みたいになる!」


「私もアリシアお姉ちゃんみたいに、強くて可愛くなるの!」


 ここは順調だ。 正義感と体力を養う、健全な教育現場である。


【農業・生産ブース】


「土というのは正直なんじゃ。愛情を込めれば、美味しい野菜が育つぞ」


 ドワーフのガルド親方と、エルフたちが野菜作りやモノ作りを教えている。


 子供たちは泥だらけになりながら、巨大なカブを抜いたり、トンカチで工作をしたりしている。


「自分で作った野菜、甘ーい!」


「モノ作りって楽しい!」


 ここも素晴らしい。 生産の喜びを知ることは、国の豊かさに直結する。


 ◇


 問題は、ここからだ。


【カジノ・商業ブース】


「いいですか、ボウヤたち。お金というのは、寂しがり屋なんです」


 敏腕商人ベルンが、子供たちに札束レプリカを数えさせていた。


「だから、お金のあるところに、さらにお金が集まってくるんです。これを『複利』と言います」


「ふくり? よくわかんないけど、お金がいっぱいだと嬉しい!」


「そうです。世の中、金が全て……とまでは言いませんが、9割は金で解決できます」


 ……おい、教育に悪いことを教えるな。 子供たちの目が、ゴールドマークになっているぞ。


 そして、極めつけがこれだ。


【統治者(魔王)ブース】


 一番奥に設置された、豪華な玉座のセット。 そこに座っているのは、魔王ヴェルザードだ。


「おねーちゃん、これなんの仕事?」


 子供が尋ねる。 ヴェルザードは足を組み、ポテトチップスを食べながら答えた。


「『支配者(魔王)』だ」


「どんなことするの?」


「基本的には、ふかふかの椅子に座って、部下からの報告を聞き、ハンコを押す。 あとは、好きな時にオヤツを食べ、気に入らない奴がいれば魔法で消し飛ばす」


「えっ」


 子供たちがざわついた。


「汗をかいて剣を振る必要もない。泥だらけになって働く必要もない。 ただ『偉そうにしている』だけで、最高級の肉と菓子が献上される。 ……どうだ? 素晴らしい仕事だろう?」


 その言葉に、子供たちの瞳に衝撃が走った。


「すげえ……! 働かなくていいんだ!」


「私、魔王になる! お姫様より楽そう!」


「俺も! 俺も偉そうにしてオヤツ食べる!」


 魔王ブースに長蛇の列ができた。 騎士ブースや農業ブースから、子供たちが一斉に流れてくる。


「ちょっ、待てお前ら! 剣の道はどうした!」


「野菜作りも楽しいぞ!? 戻ってこーい!」


 レオンやガルド親方の叫びも虚しく、子供たちは「楽して稼げる支配者」の魅力に取り憑かれてしまった。


 ◇


 イベント終了後のアンケート集計。


『将来なりたい職業ランキング』


 1位:魔王(80%) 2位:カジノオーナー(15%) 3位:騎士・冒険者(5%)


「……どうするんだこれ」


 俺は頭を抱えた。 このままでは、数年後には「働きたくないでござる」というニート予備軍と、世界征服を企む野心家ばかりの国になってしまう。


「ふふん。やはり私のカリスマ性は隠しきれんな」


 ヴェルザードだけが、満足そうに鼻歌を歌っていた。


 なお、後日。


  「魔王になるためには、誰よりも勉強して魔法を覚えなきゃなれないんだぞ」と教えたところ、子供たちが必死に勉強を始め、結果的に学力が爆上がりしたのだった。


(第36話 終わり)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ