第35話 コロシアムを作ったが殺し合いは野蛮なので、魔物による『プロレス』興行を始めたらバカ受けした
映画、音楽とくれば、次は「スポーツ」だ。
男たちの闘争本能を満たし、かつ安全に楽しめる娯楽。
俺は、ダンジョン最下層に巨大な『円形闘技場』を建設した。
「さあ、第一回『ダンジョン・格闘トーナメント』の開催だ!」
観客席は超満員。
ポップコーンとコーラ片手に、観客たちが熱狂している。
だが、ここはローマの処刑場ではない。
ルールは簡単。「相手を3カウントフォールするか、ギブアップさせたら勝ち」。
回復魔法班が待機しているので、怪我も即座に治る。完全なスポーツだ。
「赤コーナー! 地獄の重戦車、ミノタウロス選手ぅぅぅ!」
「青コーナー! 疾風の爪、ウェアウルフ選手ぅぅぅ!」
ゴングが鳴る。
ドゴォォォォン!!
ミノタウロスがラリアットを放ち、ウェアウルフがロープワークでかわしてドロップキックを決める。
派手な技の応酬に、会場が揺れるほどの歓声が上がる。
「すげぇ! 魔物があんな技を使うなんて!」
「いけー! 牛野郎! バックドロップだ!」
実はこれ、俺とレオンが事前に「プロレスの型」を指導している。
彼らは殺し合いではなく、観客を沸かせるための「試合」をしているのだ。
◇
さて、ショーの次はガチの時間だ。
「次は『チャレンジ・マッチ』!
一般参加者が、我が国の魔物と戦い、勝てば金貨100枚の賞金だ!」
このコーナーには、腕に覚えのある冒険者や、コッソリ潜入していた王国の騎士たちが殺到した。
「へっ、所詮は飼い慣らされた魔物だろ? 俺が成敗してやるよ」
リングに上がったのは、王国の近衛騎士団長(お忍び)だ。
対する魔物は……。
「対戦相手は、スライムの『プルちゃん』だ!」
ぽよん。
リング中央に、青いプルプルした物体が現れた。
「は? スライム? バカにしているのか!」
騎士団長が笑い、剣(ルール上は刃引きした鉄パイプ)を振り下ろす。
バチンッ!!
しかし、スライムは弾力で剣を弾き返した。
「なっ……!? 硬い!?」
「プルちゃんの『物理耐性』はレベル99だ。生半可な攻撃は効かないぞ」
俺が解説席でマイクを握る。
騎士は顔を真っ赤にして斬りつけるが、プルちゃんは「ポヨポヨ」と受け流し、逆に体当たり(タックル)をかます。
ドォォォォン!!
「ぐわぁぁぁぁっ!?」
騎士団長がロープまで吹っ飛び、ダウン。
「カンカンカン! 勝者、プルちゃん!」
「うおおおおお! プルちゃん最強! プルちゃん最強!」
会場は大盛り上がり。
王国の騎士が、最弱モンスターであるスライムに負ける。
これ以上の「ざまぁ」ショーはないだろう。
◇
そして、メインイベント。
会場の照明が落ち、スポットライトが二人の戦士を照らす。
「スペシャルマッチ!
謎の覆面レスラー『マスク・ド・ゼウス(レオン)』
VS
謎の覆面女戦士『クイーン・オブ・ダークネス(ヴェルザード)』!!」
どう見てもバレバレだが、二人はノリノリでリングインした。
「ふん。人間にしては良い筋肉だ。私のジャーマンスープレックスに耐えられるかな?」
「へっ。魔王……いやクイーンの技なんぞ、俺の『聖剣チョップ』で迎撃してやらぁ!」
カーン!
始まったのは、次元を超えた超人プロレスだ。
衝撃波でリングが砕け、空中で魔法と剣技が交差する。
「す、すごい……! 目で見えない!」
「あれが演出だって言うのか!? 魔法特撮じゃないのか!?」
観客たちは、これが「演技」なのか「本気」なのか分からず、ただただ圧倒されていた。
結果は、30分一本勝負の引き分け(時間切れ)。
二人は互いの健闘を称え合い、ガッチリと握手をした。
「いい汗かいたな!」
「うむ。たまには肉弾戦も悪くない」
その清々しい姿に、会場からは惜しみない拍手が送られた。
こうして、コロシアムは「血を見ない熱狂の場」として定着した。
なお、ボコボコにされた王国の騎士団長が、スライム恐怖症になって引退したのは、また別の話。
(第35話 終わり)




