第31話 住民がハンバーガーで激太りしたので、地獄の『フィットネスジム』を開設して絞り上げることにした
便利なタワーマンション生活と、美味しいジャンクフード。
この二つが揃えば、どうなるか。
答えは明白だ。
ある朝。
俺が朝食のコーヒーを飲んでいると、聖騎士アリシアが真っ青な顔でやってきた。
「……で、ディラン様。ご相談が……」
「どうした? 敵襲か?」
「いえ……その……鎧が、入りません」
アリシアが涙目でお腹をさする。
見れば、普段はスマートな聖騎士の鎧の、腹部の留め具が弾け飛んでいた。
原因は明らかだ。最近、彼女はマヨネーズたっぷりの『てりやきバーガー』にハマり、深夜のコンビニで『からあげクン』を買い食いしていた。
「……そういえば、最近エルフたちの動きも鈍いな」
窓の外を見る。
農作業をするエルフたちが、以前のような軽やかな動きではなく、どっこいしょ、と重そうに動いている。
女王セレスティアに至っては、腰回りの布面積が明らかに増えていた。
「まずいな。このままでは、我が国の戦力が『生活習慣病』で全滅する」
食の欧米化と運動不足。
現代社会の病巣が、異世界ダンジョンにも及んでいたのだ。
「よし。やるぞ、アリシア」
「な、何をですか?」
「『ダイエット』だ。……地獄のトレーニングジムを開設する」
◇
ダンジョン第51階層。
そこに作られたのは、最新鋭の魔導マシンが並ぶ『ダンジョン・フィットネス』だ。
「えぇ~、運動するのぉ? めんどくさーい」
「私は研究で忙しいのよ……」
集められたのは、アリシア、エルフたち、そして運動不足のソフィアや魔王ヴェルザードといった「予備軍」たち。
彼女たちはジャージ姿で不満タラタラだ。
「甘えるな! 自分の腹の肉を見てから文句を言え!」
俺が一喝する。
そして、今回の「特別インストラクター」を紹介した。
「鬼の指導官、レオンとイグニスだ!」
「うおっす! お前ら、だらしない身体しやがって! 俺がSランクボディに改造してやるよ!」
タンクトップ姿で筋肉を見せつける剣聖レオン。
「脂肪燃焼なら任せろ! 俺の炎で強制的にカロリーを消費させてやる!」
同じく筋肉ダルマの炎将軍イグニス。
この脳筋コンビが、ニカリと笑った。
「ひいっ……!?」
女性陣が震え上がる。
ここから、地獄のメニューが始まった。
【ランニング・エリア】
「走れ走れぇぇ! 止まると床が抜けてマグマだぞぉぉ!!」
「いやぁぁぁぁ!!」
ベルトコンベア式のランニングマシン。
だが、後ろからは『飢えたスライム』が追いかけてくる仕様だ。
エルフたちが必死の形相でダッシュする。
【ウェイト・エリア】
「んぐぐぐ……重い……!」
「まだまだぁ! バーガー一個分消費するには、あと百回だ!」
アリシアが持ち上げているのは、鉄アレイではなく『重力魔法のかかったミスリル塊』。
レオンの罵声(檄)を受けながら、彼女は涙ながらにプレスを続ける。
【ヨガ・エリア】
「はい、息を吸って~。体幹を意識して~」
ここでは、夢魔リリスが先生となり、魔王やソフィアにホットヨガを教えていた。
サウナ並みの室温で、ありえないポーズを取らされている。
「くっ……! 私の体が硬いだと……!?」
「関節が……外れるぅ……!」
魔王と大賢者の悲鳴が響く。
◇
一ヶ月後。
カジノのプールサイドにて、水着ファッションショー(という名の成果発表会)が行われた。
「見てください、ディラン様! 鎧が……ゆるゆるです!」
アリシアが腹筋の割れた見事なスタイルを披露する。
エルフたちも、くびれを取り戻し、以前より健康的な色気を放っていた。
「ふん。まあ、悪くない気分だ」
魔王ヴェルザードも、引き締まった肢体でポーズを決めている。
運動後のプロテイン(特製バナナ味)が、今や彼女たちの新たな主食になっていた。
「健康的になったのはいいが……」
俺は苦笑した。
彼女たちの「物理攻撃力」が以前より倍増しており、うかつにツッコミを入れると俺の骨が折れそうになっていたからだ。
こうして、我が国は「食」だけでなく「美と健康」までも手に入れた。
地上では、食糧不足で痩せこけた兵士たちが、望遠鏡でこちらの水着美女たちを見て、「天国か……?」と血涙を流していたが、まあ、目の毒なので見ないほうがいいだろう。
(第31話 終わり)




