第27話 Sランク食材で『ハンバーガー』と『マヨネーズ』を作ったら、エルフも騎士もカロリーの虜になった
カジノは連日大盛況。
だが、オーナーである俺は不満を抱えていた。
「……パンチが足りない」
休憩室で、最高級の「ドラゴンのステーキ」と「焼きたてのパン」を食べながら呟く。
素材はいい。味もいい。
だが、ギャンブルや遊びに疲れた脳が求めているのは、こういう上品な味じゃない。
もっとこう、下世話で、背徳的で、食べた瞬間に脳汁が出るような……そう、ジャンクフードだ。
「米とか味噌汁なんていらない。俺が欲しいのは『ジャンク』だ」
俺は立ち上がった。
「よし。世界を堕落させる『悪魔の調味料』と『携帯食』を作るぞ」
◇
厨房にて。
俺はドワーフの料理長と、エルフの農場長を呼び出した。
「まず、この『コカトリスの卵』。黄身だけを取り出す」
「へい」
「そこに『オリーブオイル』と『酢』を加え、風魔法で超高速撹拌!」
ブォォォォォッ!!
俺の魔法でボウルの中身が乳化し、クリーム状のドロリとした液体に変わる。
黄金色に輝く、カロリーの塊。
そう、マヨネーズだ。
「な、なんですかい大将、この油っこい物体は……」
「舐めてみろ」
料理長が恐る恐る舐める。
「――っ!? 濃厚!? 酸味とコクが……なんじゃこりゃあ!?」
ドワーフの目がカッ開かれた。
酒飲みの彼らにとって、この濃厚な脂の味は直撃コースだ。
「まだだ。次は『小麦』だ。
今までの硬いパンじゃない。もっとふわふわで、少し甘みのある『バンズ』を焼け」
品種改良した小麦を使い、イースト菌(酒造りの副産物)で発酵させ、柔らかく焼き上げる。
「最後に、余っている『オークのバラ肉』と『ドラゴンの端材』をミンチにして焼き、このチーズとマヨネーズをたっぷり挟む!」
ドンッ。
完成したのは、大人の拳二つ分はある巨大な『Sランク・スペシャルバーガー』。
サイドメニューには、ラードで揚げたカリカリの『フライドポテト』。
暴力的な脂の匂いが、厨房を支配した。
◇
その日の昼食。
学園の食堂(カジノのVIPルーム兼用)に、その新メニューが出された。
「……ディラン。なによこの、品のない食べ物は」
ヴェルザード(魔王)が、ハンバーガーを指先で摘まむ。
彼女は美食家だ。こんな油ギッシュな塊、プライドが許さな――。
ガブリ。
一口食べた瞬間。
「…………ッ!!?」
魔王の動きが止まった。
肉汁の洪水。
とろけるチーズ。
そして全てを包み込む、マヨネーズという名の悪魔的なコク。
「……なんだ、これは」
魔王の手が震えている。
「肉とパンを一緒に食べているだけのはずなのに……脳が……痺れる……!」
「おいおい魔王様、抜け駆けはずるいぜ!」
レオンもバーガーにかぶりついた。
「うおっ!? この黄色いソース(マヨ)すげぇ! 野菜が肉みてぇな味になるぞ!」
「ポテトも止まりません! カリカリで……指についた塩まで美味しいです!」
アリシアも聖騎士の礼儀を忘れてポテトを貪っている。
そして極めつけは、エルフたちだ。
普段は「森の恵み(サラダ)」しか食べない彼女たちだが……。
「い、いけません女王様! それはカロリーの塊です!」
「うるさい! マヨネーズをよこしなさい! 野菜スティックにつけると無限に食べられるのよ!」
エルフの女王セレスティアが、マヨネーズの瓶を抱え込んで離さない。 ベジタリアンすら陥落させる、油と卵の魔力。
◇
こうして『ハンバーガーセット』は、カジノの看板メニューとなった。
片手で食べられるため、スロットを回しながら食べる客が続出。
帝国の皇帝に至っては、「この『黄色い奇跡』を輸出してくれ! 金ならいくらでも払う!」と泣いて懇願してきた。
一方、王国では。
「ディラン国では、パンに挟むだけで兵士が狂喜乱舞する『謎の軍用食』が開発されたらしい」という誤情報が流れ、新たな脅威として恐れられていた。
……ただのジャンクフードなのだが、飢えた彼らにとっては、ある意味で戦略兵器以上の破壊力を持っていたのだった。
(第27話 終わり)




