第16話 地下に太陽を作ったら、隣国の皇帝が驚愕し交易を求めてきた
ドワーフとエルフ、そして人間の住民たち。 種族間のいざこざも酒と飯で解決し、我が国は安定期に入っていた。
だが、俺は気になっていた。
ドワーフはともかく、エルフや元農民たちは「太陽の光」を欲している。 ビタミン不足は健康に悪い。
「……よし。太陽を作るか」
「「は?」」
レオンとソフィアがまた固まった。
俺はダンジョンの天井(高さ数キロメートル)を見上げた。
管理者権限、フルアクセス。
【環境設定変更:天井部に『擬似恒星(人工太陽)』を設置】 【時間設定:地上と同期】 【気象操作:快晴、気温24度、湿度40%】
カッッッ!!!
深層の闇が消し飛んだ。
頭上に燦然と輝く太陽が出現し、青空が広がった。
どこからともなく爽やかな風が吹き、小川がせせらぐ。
「……ま、眩しい……」
「嘘だろ……地下70階層だぞ……? ここだけ別世界(異界)じゃないか……」
住民たちは歓喜し、エルフたちは「精霊が喜んでいる!」と踊りだした。
これで住環境は完璧だ。
◇
そんなある日。
工業都市からついてきた敏腕商人、ベルンが俺の元へやってきた。
「ディラン様。倉庫がパンクしそうです」
「ん? 何がだ?」
「Sランク食材と、ドワーフ製の武具です。生産効率が良すぎて、消費が追いつきません。……外貨を稼ぐためにも、『輸出』を提案します」
「なるほど。だが、王国に売る気はないぞ」
「もちろんです。あんな貧乏国に売っても利益になりません」
ベルンは悪い顔で笑った。
「ターゲットは、王国の西にある『ガレリア帝国』です。あそこは軍事大国で、常に高品質な武具と食料を求めています。……王国のライバル国ですね」
「いいな、それ。採用だ」
俺たちはゲートを使い、帝国の国境付近に「出張所」を開設した。
◇
ガレリア帝国、辺境伯の城。
そこに持ち込まれた「サンプル品」を見て、帝国軍の上層部は騒然としていた。
「な、なんだこの剣は!? 鉄をバターのように切り裂くぞ!」
「この野菜はどうなっている! 一個食べただけで、老兵の古傷が治った!」
帝国の皇帝自らが、お忍びで視察に来る事態となった。
そして、出張所にいたベルン(と、護衛のアリシア)に詰め寄った。
「……貴殿らは何者だ? どこの国の密偵だ?」
ベルンは慇懃無礼に頭を下げた。
「我々は『ディラン国(仮)』の商人です。
お隣の王国からは『不要なゴミ』として捨てられた者たちですが……皇帝陛下のお眼鏡には適いましたかな?」
「ゴミだと!? 王国は狂っているのか!?」
皇帝は即決した。
「……契約だ。その物資、我が国が言い値で買う。
その代わり、我が国からは金、宝石、美術品、そして『香辛料』を提供しよう」
「商談成立ですね」
こうして、強力な貿易ルートが確立された。
帝国には、最高級の武装と食料が流れ込む。
我が国には、莫大な富と、生活を彩る嗜好品が流れ込む。
蚊帳の外に置かれたのは、両国に挟まれた『王国』だけ。
彼らは知らなかった。
かつての自国民が、ライバル国を最強の軍事国家へと育て上げていることを。
◇
数日後。拠点にて。
「ん~! この帝国のスパイス、お肉に合いますね!」
アリシアがカレーを頬張る。
俺も、帝国から届いた高級ワイン(金貨100枚相当)を傾けた。
「商売繁盛で何よりだ。……さて、次は何をして遊ぶかな」
地上のパワーバランスが崩壊していく音を聞きながら、俺たちは優雅にティータイムを楽しんでいた。
(第16話 終わり)




