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第141話 親バカたちの定例会議 議題『うちの子が宇宙一可愛い件について』

「……えー。これより、第一回『チビッ子自慢大会』を開催します」


 王城の広いリビング。  ディランは、目の前に並べられたホワイトボードと、三人の母親たちを見上げていた。


 一人目は、狩猟の女神アルテミス。

   二人目は、大賢者ソフィア。

   三人目は、先日懐妊が発覚したばかりの秘書天使メルだ。


 彼女たちはバチバチに火花を散らして……はいなかった。

   むしろ、互いの健闘を称え合うような、奇妙な連帯感と、それ以上に熱い「プレゼン魂」を燃え上がらせていた。


「まずは私から行くわ!」


 トップバッターはアルテミスだ。

   彼女は愛息(神の赤ちゃん)を抱きかかえ、指示棒でバンとボードを叩いた。


「見てちょうだい、この『太もも』! 昨日の身体測定で、なんとオーク・ジェネラルの腕力数値を上回ったのよ!」


「バブッ!(筋肉は裏切らない!)」


 赤ちゃんがムキッとポーズをとる。

   その背後には、昨日彼が破壊した『城壁の残骸』の写真が貼られていた。


「すごいでしょう? まだハイハイの段階で、ドラゴンを背負い投げできるの! 将来的には素手で惑星を砕く『銀河最強の戦士』になること間違いなしよ!」


「お、おう……。たくましいな……」


 俺は引きつった笑みを浮かべる。

   可愛い我が子だが、兵器としてのスペックが高すぎる。


「ふっ。……筋肉だけではこれからの時代、生き残れんぞ」


 次に進み出たのは、ソフィアだ。

 彼女の腕の中には、先日カプセルから産まれた銀髪の赤ちゃん(ソフィアの子)が、空中に数式を浮かべながら浮遊している。


「見ろ、ディラン。……我が子『ナンバー2(仮称)』の知性を」


 ソフィアがパチンと指を鳴らすと、赤ちゃんが空中のホログラムを操作し始めた。


「……バブ(重力定数、再計算終了。……おむつの快適性向上のため、周囲の重力を0.8倍に設定)」


 フワッ。

   リビングの体が軽くなった。


「なんと! 生後数日にして、環境制御魔法を最適化しているのだ! しかも、ミルクの配合比率まで自分で計算し、私に『もっとタンパク質を』と要求してきた!」


 ソフィアは感涙にむせび泣いている。


「この子は間違いなく、次世代の魔法文明を担う『支配者』になる! ……どうだ、可愛いだろう? この冷徹な眼差しが!」


「……ああ、賢いな。末恐ろしいけど」


 すでに俺より賢い気がする。  この子が反抗期を迎えたら、俺は論破されて立ち直れないだろう。


「皆様、素晴らしいお子様たちですね。……ですが」


 最後に、メルが静かに立ち上がった。

   彼女のお腹はまだ目立たない。  だが、彼女は自信満々に『超音波検査の魔導写真』と『未来予想図(CG)』をスクリーンに映し出した。


「我が子(予定)のスペックをご覧ください」


 映し出されたのは、胎内で静かに眠る胎児の映像だ。


「現在、妊娠3週目ですが……見てください。へその緒が、綺麗な『リボン結び』になっています」


「「は?」」


「すでに胎内の整理整頓を始めているのです。羊水の循環効率を上げ、母体への負担を最小限に抑えるこの気遣い……。間違いなく、私以上の『スーパー秘書』になる資質があります」


 メルはうっとりと画像を見つめた。


「さらに、未来予想図をご覧ください。……パパ(ディラン様)に似た優しい目元と、私の事務処理能力を併せ持つ、最強の『愛され系管理者』……。産まれた瞬間、この国の実権を握るでしょう」


「権力奪取を前提にするな!」


 俺がツッコむが、メルは止まらない。


「名前はもう決めてあります。『アドミニストレータ(管理者)』ちゃんです」


「キラキラネームすぎるだろ!」


 こうして、三者三様のプレゼンが白熱していく。


「うちの子の方が破壊力がある!」

  「いや、演算速度だ!」

「管理能力です!」


 彼女たちは争っているわけではない。

   ただひたすらに、「自分の子の特性がいかにディラン(パパ)の役に立つか、そしていかに可愛いか」を共有し、高め合っているのだ。


 その熱気にあてられ、俺は目眩がしてきた。


「……みんな、落ち着け。どの子も可愛いよ。世界一だ」


 俺がまとめに入ろうとした時。


「あら、楽しそうですわね」


 それまで静観していたセレスティアが、紅茶を片手に割り込んできた。


「破壊神に、魔導王に、絶対管理者……。将来有望な人材ばかりですこと」


 彼女はニッコリと笑い、分厚いファイルを机に置いた。


「では、彼らが将来稼ぎ出す『生涯年収』と、国への『納税額』の試算(皮算用)を始めましょうか? ……英才教育の予算も組みませんとね」


「「「おおっ! さすが第一夫人!」」」


 母親たちが目の色を変えて食いついた。

 親バカ会議は、いつの間にか『国家予算編成会議』へとシフトしていく。


 俺は、キャッキャと遊ぶ神の赤ちゃんと、空中で数式をいじる科学の子、そしてメルのお腹を眺めながら、遠い目をした。


「……元気に育ってくれれば、それでいいんだがなぁ」


 俺のささやかな願いは、最強の母親たちの熱狂にかき消されていった。


 ダンジョン国の未来は、間違いなく彼ら(チビッ子たち)の手の中にある。

   ……主に、破壊と支配と管理という意味で。


(第142話:赤ちゃんたちの秘密結社。……大人たちが目を離した隙に、神の子と科学の子が手を組み、『おやつ独占計画』を立案する?)


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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