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第133話 保健室の聖女様 その『絆創膏』は聖遺物級

「うえぇぇぇん! 痛いよぉぉぉ!」


 『聖女の午睡シエスタ』から目覚めたダンジョン保育園。


 元気に遊び回る幼児たちだったが、そこはやはり魔物の子供。遊びが激しすぎる。


 鬼ごっこで音速を超え、積み木崩しで爆風が起きる。


 その結果、あちこちで「擦り傷」「タンコブ」、そして「ちょっとした打撲(岩盤激突)」を作る子供たちが続出していた。


「よしよし、泣かないの。……怪我をしたら、どこに行くんでしたっけ?」


 ルナ先生が優しく尋ねると、子供たちは涙目で声を揃えた。


「「「ほけんしつー!!」」」


 そう。この保育園には、世界最高峰の医療設備――通称『保健室』が存在する。


     ◇


「失礼しまーす……」


 子供たちが保健室のドアを開けると、そこには白衣を羽織ったピンク髪の美女――ノエルが待っていた。


 彼女の背後には、薬品棚(怪しい瓶が並ぶ)と、純白のベッドが並んでいる。


「あらあら、派手に転びましたね。……見せてごらんなさい」


 ノエルは、膝を擦りむいたゴブリンの子供を抱き上げ、診察台に乗せた。


 ただの擦り傷だ。


 普通なら、消毒して絆創膏を貼れば終わりだ。


 だが、ここはダンジョン国。そして彼女は『元・聖女』である。


「痛いの痛いの、飛んでいけ~……【聖女の祈り(エクストラ・ヒール)】!」


 カッッッ!!!


 保健室が、直視できないほどの聖なる光に包まれた。


 それは、瀕死の重傷者すら蘇生させ、アンデッドなら即座に昇天するレベルの超高位回復魔法。


「……あ、あれ?」


 光が収まると、ゴブリンの子供の膝は、傷が治るどころか、肌がツルッツルのビッカビカに輝いていた。


「す、すごい! 傷が消えただけじゃなくて、お肌が若返ってる!」


「あたりまえです。……ついでに『身体強化』と『病気耐性』の加護もかけておきましたよ♡」


 ノエルはニッコリと笑い、仕上げにペタリと何かを貼った。


「はい、特製絆創膏(世界樹の葉・加工済み)です」


「ありがとう、ノエル先生!」


 ゴブリンの子は、以前より強靭な肉体を手に入れて走り去っていった。


 過剰医療オーバー・ヒール


 それが、この保健室の日常だった。


     ◇


 しかし、問題はここからだった。


「バブー!(我も手当てを所望する!)」


 神の赤ちゃん(アルテミスの子)が、指先にほんの小さな『ささくれ』を作ってやってきた。


 神の肉体を持つ彼にとって、それは顕微鏡で見ないと分からないレベルの傷だ。


 だが、ノエルは真剣な表情になった。


「大変! 神様の御体に傷がつくなんて! ……ソフィアさん! 緊急オペです!」


「うむ。任せたまえ!」


 奥のカーテンが開き、白衣を着た大賢者ソフィアが登場した。


 彼女の手には、怪しく発光する試験管が握られている。


「この『万能細胞活性化ポーション(試作品)』を使えば、ささくれなど細胞レベルで融合するじゃろう!」


「えっ、それ大丈夫なやつ?」


 見学に来ていたディランが止めようとするが、遅かった。


 ソフィアはポーションを赤ちゃんの指に振りかけた。


 ジュワワワ……!


「バブッ!?」


 赤ちゃんの指が緑色に発光し、ささくれがモリモリと膨れ上がり――。


 ポンッ!


 指先から、小さな『キノコ』が生えてきた。


「……生えたな」


「……生えましたね」


 俺とノエルが顔を見合わせる。


「失敗じゃ! 細胞分裂の方向性を間違えたわい!」


「バブー!!(指がキノコになったー!!)」


 赤ちゃんが泣き叫ぶ。


 その鳴き声に合わせて、キノコから胞子が撒き散らされた。


「げほっ! こ、これは……笑いキノコの胞子!?」


 吸い込んだ俺が、急に笑い出した。


「あはははは! 指からキノコって! 傑作だ! あははは!」


「うふふふ! ディラン様、笑い事ではありませんわ! あははは!」


 ノエルも笑い出す。


 保健室中が、強制的な爆笑の渦に巻き込まれた。


「ええい、笑っている場合か! ……こうなったら物理療法じゃ!」


 ソフィアがノコギリ(医療用)を取り出す。


「切り落として再生させる!」


「バブー!?(やめろヤブ医者ー!!)」


 赤ちゃんが必死に逃げ回る。


 そこへ、騒ぎを聞きつけたアリシア(聖騎士)が乱入してきた。


「何事ですか! ……ええい、怪我なら私が治します! 気合いです! 筋肉に力を入れれば、傷口など塞がります!」


「脳筋理論はやめて!」


 結局。


 笑い転げるノエルが涙を流しながら【聖なる浄化ピュリフィケーション】を発動し、キノコも胞子もまとめて消滅させて事なきを得た。


「……ひどい目にあったバブ……」


 疲れ果てた神の赤ちゃんは、指をさすりながら俺の膝に乗った。


「教訓だな。……この国では、病気よりも『治療』の方がリスキーだ」


 俺は赤ちゃんの頭を撫でながら、保健室の壁に貼られた『健康第一』の文字を虚しく見上げた。


 過剰な聖女、マッドサイエンティストな賢者、脳筋の騎士。


 彼らにかかれば、風邪ひとつ治すのにも、命がけの冒険が必要になるのだ。


(第134話:初めてのお使い。……ポチ(フェンリル)にお金を渡してコンビニへ。彼が買ってきたのは『高級ドッグフード』と『週刊誌』だった?)


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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