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第130話 幼児の逆襲と、解き放たれた『聖なる衣(大阪のおばちゃん)』

「ふふふ。さあ、今日も『魔王体操』の時間よ。整列なさい」


 翌日のダンジョン保育園。


 魔王ヴェルザードは、余裕の笑みを浮かべてプレイルームに入った。


 昨日、彼女は『限界突破(ママ・覚醒)』により、暴徒と化していた幼児たちを完全制圧した。


 今日もあの一撃で、平和な昼寝時間を勝ち取るつもりだった。


 だが。


「……やだー」


「飽きたー」


 子供たちの反応は、冷ややかだった。


 彼らは積み木を蹴り飛ばし、鼻をほじりながら魔王を見上げている。


「おばちゃん、そのエプロンださいー」


「昨日と同じダンスとか、芸がないよねー」


「バブー(マンネリはエンタメの敵だ!)」


 ズドン!


 神の赤ちゃんが、挨拶がわりの破壊光線を放つ。


 ヴェルザードの『フリフリ・エプロン(幻影)』が消し飛んだ。


「な、なにぃぃぃ!?」


 ヴェルザードが驚愕する。


 昨日のカリスマ性はどこへやら。


 子供たちは、たった一日で『ママ・モード』に耐性を持ち、さらには「飽き」という最強のデバフをかけてきたのだ。


「くっ……! 適応能力が高すぎるぞ、最近の子供は!」


 ディランが叫ぶ。


 この保育園にいるのは、魔王軍団の子供や、神の落とし胤だ。


 成長速度も学習能力も、並の人間とは桁が違う。


「ギャハハ! 今日から僕たちが支配者だー!」


「魔王を倒せー!」


 幼児軍団が再び暴れ始める。


 オークの子供が机を投げ、スライムの子供が床を溶かし、神の赤ちゃんが空中から爆撃を開始する。


 阿鼻叫喚の地獄絵図。


 ヴェルザードは膝をつき、絶望に打ちひしがれていた。


「……終わった。我の威厳も、ママとしてのプライドも……」


 彼女の手が震える。


 だが、その瞳の奥にある『魔王の炎』は、まだ消えていなかった。


「……いいや、まだだ」


 彼女はゆらりと立ち上がった。


「ディランよ。……許せ。我は、禁断の封印を解く」


「封印? まさか……」


 俺は嫌な予感がした。


 かつて、俺が冗談半分で教え、彼女が「あまりに強すぎる(そして派手すぎる)」として封印していた、あの装備か?


「見ておれ、クソガキども!! これが……大人の本気マジじゃあああ!!」


 カッッッ!!!


 ヴェルザードの体が、黄金の光に包まれた。


 まばゆい輝きに、暴れていた子供たちが目を覆う。


「な、なんだあの光は!?」


「目が、目があああ!」


 光が収まった時。


 そこに立っていたのは、フリフリのエプロン姿の保母さんではなかった。


 頭には『パンチパーマ(魔法による強制ウェーブ)』。


 顔には『ド派手な化粧』。


 そして全身を包むのは――黄色と黒の斑点模様。


 そう、伝説の防具『O-SAKAのヒョウ柄スパッツ&シャツ』である。


「……な、なんという……威圧感インパクト……!」


 俺は息を呑んだ。


 ただ立っているだけで、周囲の空間が歪んで見える。


 それは『魔王』の覇気とは違う。


 もっと泥臭く、もっと図太く、あらゆる常識をねじ伏せる『おばちゃん』の覇気だった。


「ひ……ひぃぃぃ……」


 さっきまでイキっていた子供たちが、後ずさりをする。


 本能が告げているのだ。


 目の前の存在は、ママではない。


 怒らせてはいけない、商店街の猛獣ヌシだと。


「さあ、ガキども。……かかってきなさい」


 新生ヴェルザードが、ヒョウ柄の袖をまくり上げた。


「バ、バブー!(やっちまえ!)」


 神の赤ちゃんがビームを放つ。


 だが。


「あめちゃん、やるわ」


 ヒュンッ。


 ヴェルザードの懐から、光る物体が投擲された。


 それはビームを相殺し、赤ちゃんの口にスポッと収まった。


「……バブ?(……あまっ、うまッ!?)」


 それは、ダンジョン産の最高級砂糖を使った『黄金のべっこう飴』だった。


 赤ちゃんの戦意が、糖分によって一瞬で溶かされる。


「次! そこのオーク!」


「うわああ!」


「ほれ、みかんやるわ」


 ドサッ。


 どこからともなく取り出したミカンが、子供たちの手に握らされる。


「スライムには、値引きシールじゃ!」


 ペタッ。


 「半額」と書かれたシールを貼られたスライムの子が、嬉しさのあまりプルプルと震えて停止した。


 強い。


 強すぎる。


 暴力ではない。


 『飴ちゃん』と『お節介』と『厚かましさ』による、波状攻撃。


 ヒョウ柄の衣を纏った彼女は、もはや無敵の要塞だった。


「……参りました」


 数分後。


 プレイルームには、飴を舐めながら大人しく座る子供たちと、その中心で仁王立ちするヒョウ柄の魔王の姿があった。


「分かればよろしい。……さあ、言うことを聞くなら、次は『特売のヤクルト』を配ってやるぞ?」


「「「魔王様ー!!」」」


 子供たちはひれ伏した。


 恐怖でも愛でもない。


 『現物支給』と『圧倒的な存在感』による支配。


 俺は、ヒョウ柄に身を包み、高笑いする妻を見ながら思った。


 ……うん。


 世界を救うのは勇者じゃない。


 大阪のおばちゃんなのかもしれない、と。


(第131話:ヒョウ柄の伝染。……ヴェルザードの影響で、アルテミスやセレスティアまで『アニマル柄』に目覚める!? 王城がサファリパーク化する悪夢)


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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