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第128話 天界スカウトキャラバン 男たちに『逃げ場』はない

「……足りないわ」


 神様の赤ちゃん(アルテミスの子)が産まれ、ダンジョン国が祝賀ムードに包まれていたある日。


 第一夫人セレスティアが、電卓を片手に呟いた。


「人手が圧倒的に足りませんわ。神様の育児、増え続ける国民の管理、そしてディラン様のスケジュールの監視……。既存のメイドや文官だけではパンク寸前です」


 彼女の眼鏡がキラリと光る。


「こうなったら、現地調達しかありませんね」


「現地? どこの?」


 ディランが尋ねると、セレスティアは天井――その遥か上空を指差した。


「天界です。……あそこには、職を失ったり、ブラック労働に喘いでいる優秀な天使がたくさんいるはず。私が直接『引き抜き(ヘッドハント)』に行ってきます」


「えっ、天界に!? 殴り込みに行くのか!?」


「いいえ、『求人活動』です。……皆様、行きますわよ!」


 セレスティアの号令で、アリシア、ヴェルザード、ノエル、ソフィア、そして案内役のメルが立ち上がった。


 最強の妻たちによる、天界への出張カチコミが決定した瞬間だった。


     ◇


 数時間後。


 俺とレオン、イグニス、ザインの男連中は、王城の広場で妻たちの帰還を待っていた。


「へっ、大丈夫だって。ウチのシーラは嫉妬深いからな。変な天使なんて連れてくるわけねぇよ」


 レオンが余裕の表情で笑う。


「ああ。前回、勝手に来た天使たちをボコボコにして追い返したばかりだろ? 俺たちの嫁が、他の女を認めるはずがない」


 イグニスとザインも同意する。


 俺もそう思っていた。


 だが。


 ズズズンッ……!


 空が割れ、巨大な飛行船(ダンジョン製)が帰還した。


 タラップから降りてきたのは、満足げな表情の妻たち。


 そして、その後ろには――。


「……ようこそ、我が国へ」


 セレスティアが指揮棒を振ると、ゾロゾロと降りてきたのは、完全武装した3名の『上級天使』たちだった。


 一人は、巨大な『黄金のそろばん』を背負った、知的な眼鏡天使。


 一人は、全身に『冷却パイプ』を巻き付けた、氷の魔導天使。


 一人は、背中に『揺りかご』と『ガラガラ(鈍器)』を装備した、母性溢れる巨乳天使。


「な、なんだあいつら……?」


 レオンたちがざわつく中、セレスティアが俺の前に進み出た。


「ディラン様。素晴らしい人材が確保できましたわ。……彼女たちは、天界でも選りすぐりのエリート。ですが、彼女たちを雇用するには『条件』がありました」


「条件?」


「はい。『住居』と『食事』、そして……身元引受人となる『夫』の提供です」


 俺は嫌な予感がして、一歩下がった。


「ま、まさか俺に……?」


「いいえ。ディラン様にはもう私たちがいますから(定員オーバーです)。……今回、白羽の矢が立ったのは、彼らです」


 セレスティアがビシッと指差した先。


 そこには、他人事だと思って鼻をほじっていたレオンたちがいた。


「は?」


 3人が固まる。


「ちょ、ちょっと待てセレスティア様! 俺たちには妻がいる! シーラたちが許すわけないだろ!」


 レオンが叫ぶ。


 当然だ。あの恐妻家たちが、夫の浮気(重婚)など許すはずがない。


 前回、天使の群れを追い返したのは彼女たちなのだから。


 しかし。


「……あら、あなた。何を騒いでいるの?」


 人混みを割って現れたのは、レオンの妻シーラだった。


 彼女は、いつものように不機嫌……ではない。


 なぜか、ご機嫌な笑顔を浮かべていた。


「シ、シーラ? 怒らないのか? こいつらが俺の嫁になりたいとか言ってるんだぞ!?」


「ええ、知っているわ。……だって、私が面接して採用したんだもの」


「はあああああ!?」


 レオンのアゴが外れた。


 シーラは、連れてこられた『そろばん天使』の肩を抱き、紹介した。


「彼女は『監査天使』のミリエルさん。……あなたの借金返済計画を、今の3倍の速度で完遂させる『鬼の計算能力』を持っているの。それに、私が家事で忙しい時、あなたの監視を代行してくれるそうよ」


『初めまして、旦那様ターゲット。貴方の財布の紐、私がガッチリと握らせていただきます』


 そろばん天使が、ジャキッと音を立ててそろばんを構えた。


 その目は、愛する夫を見る目ではなく、搾り取るべき債務者を見る目だった。


「ひぃっ!?」


 続いて、イグニスの妻エレナが進み出た。


「イグニス。この子は『冷却天使』のフローズン。……あなたの暑苦しいイビキと体温を、就寝中に強制冷却してくれる便利な子よ。夏場のクーラー代わりに最適だわ」


『任務了解。……対象を凍結フリーズします』


 冷却天使が、絶対零度の冷気を放つ。


「凍死するわ!!」


 最後に、ザインの妻ルナが、母性天使の手を引いて現れた。


「ザインちゃん。……私一人じゃ、あなたのお世話(幼児プレイの相手)にも限界があるの。だから、この『保母天使』さんを雇ったわ。二人体制なら、24時間よしよしできるでしょ?」


『バブーと言ってみてください。……さあ、全力で甘やかし(洗脳)ますよぉ~』


 保母天使が、巨大なガラガラを構えて迫る。


「や、やめろぉぉぉ!!」


 男たちの絶叫が広場に木霊した。


 そう。


 天使たちは「武装」していた。


 物理的な武器ではない。


 「正妻にとって都合の良いスキル」と「絶対服従の契約書」で武装し、妻たちの懐に入り込んでいたのだ。


 彼女たちは「第二夫人」ではない。


 「正妻の忠実な部下(兼・夫の追加看守)」だったのだ。


「……というわけで、ディラン様。彼らの『第二夫人受け入れ』を許可していただけますわね?」


 セレスティアが、有無を言わせぬ笑顔で承認を求めてくる。


 俺は、涙目で助けを求める親友たちを見た。


 すまない。


 俺に拒否権はない。


「……許可する。……友よ、強く生きてくれ」


「ディラァァァァァァァン!!!」


 ガシャーン!


 レオン、イグニス、ザインの首に、それぞれ2つ目の首輪(天使との契約の証)が嵌められた。


 これで彼らは、家では正妻に管理され、外では天使に監視されるという、完全なる24時間監視体制ダブル・ロックの下で生きることになった。


 広場には、天使たちの高らかな笑い声と、男たちの断末魔、そして「これで家事が楽になるわ~」と喜ぶ妻たちの声が響き渡った。


 これが、ダンジョン国流の『ハーレム』の真実である。


(第129話:赤ちゃん、初めての『迷宮攻略』。……ハイハイでドラゴンをなぎ倒し、最深部のボスを『おしゃぶり』にする?)


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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