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第125話 神々の『ご懐妊』騒動と、秘書天使の暴走

「……太った?」


 リビングで、ポテチを食べているアルテミスを見て、俺は何気なく言った。


 最近、彼女の食欲が凄まじい。ミカエルと一緒に倉庫に篭城していた一件以来、二人は晴れて(?)公認の仲となり、堂々とイチャつきながら飯を食っているのだが……。


「失敬な! 女神に『太った』なんて! これは聖なる膨らみよ!」


「いや、どう見ても腹が出てるぞ」


「む……確かに。最近、妙に体が重いし、やたらと酸っぱいものが……」


 その時、バインダーを持ったメルが血相を変えて飛んできた。


「た、大変です! アルテミス様の魔力数値を測定したところ、異常な反応が!」


「え? 病気?」


「いいえ……お腹の中に、新たな『神核』の反応があります!」


「「「は?」」」


 全員が固まった。


 ミカエルが、持っていたお茶をこぼしながら震え声で尋ねる。


「……そ、それって、まさか……?」


 メルは眼鏡をくいっと押し上げ、冷酷な事実を告げた。


「おめでとうございます、ミカエル様。……ご懐妊です」


   ◇


 そこからは大騒ぎだった。


「俺が……パパ? 神のゴッドファーザー!?」と白目を剥いて倒れるミカエル。


「嘘でしょ!? 私まだ現役バリバリの狩猟神よ!?」とお腹をさするアルテミス。


 そして、メルがさらに追い打ちをかける。


「さらに重大な問題があります。天界の法第108条。『下界の生命と融合、あるいは下界にて新たな生命を宿した神は、その土地の守護神として定住義務を負う』……つまり」


「つまり?」


「アルテミス様は、もう天界には帰れません。この土地に『紐付け(インストール)』されました」


「「ええええええええ!?」」


 二人は絶叫した。


 天界に帰るつもりだったのか、それとも一生ニートする気だったのかは定かではないが、「帰れない」という事実は重かった。


「……まあ、いいじゃない。ここで子育てすれば」


 セレスティアが呆れながらも祝福する。


「そうね……ミカエルもいるし、主殿もいるし……なんとかなるか!」


 アルテミスは開き直りが早かった。


「ようし、パパ頑張っちゃうぞー! まずはベビーベッド(神殿)を作る!」


 ミカエルも復活し、すでに親バカモードだ。


 一件落着……かと思われた、その時だった。


   ◇


「……ズルいです」


 背後から、怨念のような低い声が聞こえた。


 振り返ると、メルがゆらりと立っていた。


 彼女の瞳はハイライトが消え、どこか焦点が合っていない。


「メ、メルさん?」


「アルテミス様だけ……『既成事実』を作って、堂々とこの家に永住するなんて……ズルいです」


 彼女は一歩、また一歩と俺に詰め寄ってくる。


「私は? 私はどうなるのですか? 上司二人がここに定住してしまったら、私一人が天界に戻って、膨大な残務処理と謝罪行脚をするハメになります」


「あ、ああ……それは、うん、大変だね……」


「嫌です。私もここにいたいです。ここのご飯はおいしいし、お風呂は気持ちいいし、主殿は優しいし……」


 メルは俺の胸元をギュッと掴んだ。


 その顔は、有能な秘書のものではなく、追い詰められた一人の女性の顔だった。


「ですから、主殿」


「は、はい」


「……同じことを、いたしましょう?」


「……はい?」


 彼女は顔を真っ赤に染めながら、しかし事務的な口調で爆弾発言を投下した。


「つまり、私も主殿との間に『永住権(既成事実)』を作れば、ここから追い出されることはなくなります。合理的かつ効率的な解決策です」


「ちょ、論理が飛躍しすぎ!」


「計算済みです。今なら排卵び――」


「わあああ! ストォォォップ!!」


 俺の悲鳴と同時に、横からセレスティアとヒロインたちがタックルをかました。


「ちょっとメルさん! 何ちゃっかりドサクサに紛れてるの!」


「抜け駆けは禁止よ! しかも理由が事務的すぎるわ!」


「離してください! これは業務命令です! 私の安住の地確保のための、必要な手続きなんですぅぅぅ!!」


 暴れる秘書天使、止める妻たち、呆然とする新米パパママ神。


 俺たちのスローライフは、神様の妊娠という特大イベントを経て、ますますカオスな方向へと突き進んでいくのだった。


【次回予告】


 第126話:ベビーブームは突然に……じゃなくて『育児パニック』? 神様の赤ちゃんが強すぎて家が半壊した件


 アルテミスのお腹が光ったと思ったら、なんか卵が出てきた!? 「哺乳類じゃないのかよ!」というツッコミも虚しく、孵化したのは背中に翼が生えた超可愛い赤ちゃん(スペックは破壊神)。 ハイハイで床を砕き、夜泣きで衝撃波を放つ! ミカエルは育児ノイローゼ気味、メルは「育児マニュアル」を作成するも1ページ目で挫折! そして俺は……なんで俺がミルク係なんだよ!?


 次回、『バブみが強い(物理)』。 子育ては、世界を救うより大変だ。


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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