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第124話 北風と太陽……ではなく『ロミオとジュリエット作戦』

 無人島での一件以来、秘書天使メルの我が家での地位は確固たるものになっていた。


 彼女は、俺の「言わなくても察してほしい」という要望(主にお茶のタイミングや、妻たちの機嫌取りのフォロー)を完璧にこなす。


 そのあまりの有能さに、最初は警戒していた正妻セレスティアたちも、


「……メルさん、貴女やるわね」


「旦那様のあのだらしない顔を、仕事モード(キリッとした顔)に切り替えさせるなんて」


「悔しいけど、認めるわ。貴女は『こちら側(管理する側)』よ」


 と、半ば公認の仲魔として受け入れつつあった。


   ◇


 そんなある日の作戦会議。


「前回の『無理やりくっつける作戦』は、あの二人の天邪鬼な性格により失敗しました」


 メルは冷静に分析し、新たな作戦ボードを掲げた。


「そこで、心理学における『カリギュラ効果』……禁止されるほどやりたくなる心理を利用します」


「禁止?」


 俺が首を傾げると、メルは眼鏡をキラリと光らせてニヤリと笑った。


「はい。『二人の仲を裂く』のです。徹底的に」


 名付けて、『逆誘導・ロミオとジュリエット作戦』である。


   ◇


 その日の夕食後。


 俺は心を鬼にして(という演技をして)、くつろいでいるアルテミスとミカエルに宣告した。


「二人とも、ちょっといいか。……正直、お前たちが一緒に行動すると被害が大きすぎる」


「む? クラーケンのことか?」


「それだけじゃない。島の破壊、食費の増大、騒音……よって、今後はお前たちの接触を禁止する」


「「はぁ!?」」


 二人の神様が同時に声を上げた。


「接触禁止とはどういうことだ!」


「そうよ! 私たちがいつ一緒にいようが勝手でしょ!」


「いーや、ダメだ。アルテミスは東の離れ、ミカエルは西の客間。食事も別々。オセロも禁止。会話も筆談のみとする!」


 俺がビシッと言うと、二人は猛反発した。


「そんな横暴が許されるか! 我々はセットで……いや、共に天界の危機を救った戦友だぞ!」


「そうよ! ミカエルがいないと、誰が私のボケに突っ込むのよ! じゃなくて、誰が私の神聖な弓の手入れをするのよ!」


「ええい、こうなったら実力行使だ!」


 ガシッ!


 ミカエルがアルテミスの手を掴んだ。


「行くぞアルテミス! こんな理不尽なルールには従えん! 我々の絆を見せてやる!」


「ええ、望むところよミカエル! 二人でストライキよ!」


 二人は固く手を繋ぎ合い、肩を寄せ合って、俺たちを睨みつけた。


「我々は屈しない! たとえ主殿の命令でも、我々の『友情(腐れ縁)』は引き裂けないぞ!」


 その姿は、まさに悲劇の……いや、喜劇の恋人たちそのものだった。


   ◇


 二人が「篭城だー!」と叫んで、庭の倉庫へ走っていくのを見送りながら、俺とメルは顔を見合わせた。


「……計算通りですね」


 メルが小さくガッツポーズをする。


「ええ、あそこまで単純だと助かるわ」


 セレスティアも満足げにお茶をすすっている。


「『離れろ』と言われれば『くっつく』。これで二人の距離は物理的にも精神的にも縮まりました。あとは……」


「あとは?」


「あの倉庫の中で『吊り橋効果』ならぬ『共犯者効果』が生まれれば、ゴールインも近いです」


 メルはバインダーに『作戦成功』と書き込んだ。


 俺は、倉庫の方から聞こえる「狭い!」「足踏むな!」「くっつきすぎ!」という楽しそうな(?)怒鳴り声を聞きながら思った。


(……メルさん、やっぱり敵に回すと一番怖いタイプだな)


 こうして、我が家の平和維持活動カップリングは、新たなステージへと突入したのだった。


【次回予告】


 第125話:倉庫の恋人たち……じゃなくて『神々の篭城戦』? 愛の逃避行先が庭の物置だった件


「我々の愛(反骨精神)は誰にも邪魔させない!」 倉庫に立てこもったアルテミスとミカエル。 だが、そこは俺が隠していた『黒歴史ノート』や『秘蔵のエロ本』の保管場所だった! 「主殿、この『異世界最強ハーレム計画』という書きかけの小説は何だ?」 「やめろミカエル! それ以上読むな! 読み上げたら即座に供給おやつを止めるぞ!!」 愛の逃避行が一転、俺の尊厳をかけた攻防戦へ! そしてメルが冷たい目で俺を見る! 違うんだ、それは若気の至りで……!


 次回、『開かずのパンドラボックス』。 ……神様って、人の弱みを握る時だけ結束力が高いよね。


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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