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第123話 無人島ハネムーン……の副作用

 無人島サバイバルという名の『怪獣大決戦』から、俺たちはなんとか生還した。


 結局、アルテミスとミカエルが巨大クラーケンを巡って「どっちが焼いて食べるか」で喧嘩し、島が半壊したところで俺が強制送還魔法を発動させたのだ。


 愛なんて芽生えるはずもなかった。


 だが、予想外の副作用が一つだけあった。


   ◇


「……あのアジト設営の際の手際、見事でした。主殿がいなければ、私は今頃、野宿で蚊に刺されていたでしょう」


「いやいや、メルさんこそ。あの時、崩れた岩から俺を庇ってくれた結界魔法、完璧なタイミングだったよ。助かった」


「そ、そうですか? ふふ、お役に立てて光栄です……」


 帰宅後のリビング。


 俺とメルは、お茶を飲みながら互いの健闘を称え合っていた。


 あのカオスな島で、まともな感性を持っていたのは俺たち二人だけだった。


「あの二人が暴れている間に、二人で火を起こしてスープを作った時……なんだか、久しぶりに心が安らぎました」


「わかる。言葉を交わさなくても、次に何が必要か通じ合う感じ……あれは良かった」


「……主殿」


 メルが少し顔を赤らめ、上目遣いで俺を見る。


「私、思いました。あのような無秩序な上司の下で働くより、貴方のような方の補佐をする方が、よほど……幸せなのではないかと」


「え?」


「いっそ、転職を……」


 空気が、ほんのりとピンク色に染まりかけた、その時だった。


「――ストップ!! そこまでよ!!」


「――異議あり!! 断固として認めん!!」


 ドカドカドカッ!


 背後から凄まじい足音が響き、俺とメルの間に二つの影が割り込んできた。


 アルテミスとミカエルだ。


 二人は鬼のような形相で、俺の両腕をガシッと掴んだ。


「ちょっとメル! あなた、私たちをくっつけるとか言っておいて、自分が抜け駆けする気!?」


「そうだぞメル君! 職務放棄も甚だしいが、私の……いや、我々の『一番の理解者(兼・飯係)』を独占するとは何事だ!」


 二人の目は血走っていた。


 それは恋愛感情というより、お気に入りの玩具やおやつを取られそうになった子供の必死さに近かった。


「は、離してください! 私はただ、主殿の有能さに感銘を受けただけで……!」


「それがダメなのよ! この人の『よしよし』は私たちだけの特権なんだから!」


 アルテミスが俺の右腕に頬擦りをする。


「ずるいぞ! 私も主殿に褒められたい! クラーケンを倒したのは私だぞ! ほら、主殿、頭を撫でたまえ!」


 ミカエルが俺の左腕を引っ張り、自分の頭に乗せようとする。


「ちょ、二人とも重いって!」


「うるさい! メルには渡さない!」


「そうだ! メル君は書類でも作っていればいいのだ! ここは我々の聖域だ!」


 ギャーギャーと騒ぐ駄神たち。


 その騒ぎを聞きつけて、奥からセレスティアたち妻連中がやってきた。


 そして、俺の両腕に絡みつく神様たちと、赤面しているメルを見て――。


「……あら」


「……あらあら」


 室温が氷点下まで下がった。


「作戦失敗ね。……むしろ、敵が増えたわ」


 セレスティアが般若の面を被ったような笑顔で、包丁を研ぎ始めた。


 俺は天を仰いだ。


 無人島より、ここの方がよっぽどサバイバルだった。


   ◇


 次回予告


 第124話:『神々の嫉妬ジェラシーストーム』


 無人島から帰還したら、なぜかモテ期(物理的な圧)が到来!? メルとの急接近に焦ったアルテミスとミカエルが、「いかに自分たちが主殿にふさわしいペット(?)か」を競い始めた! 「見て見て主殿! 隕石を拾ってきたわ!」 「私は小惑星を持ってきたぞ!」 やめろ地球が滅びる! お土産のスケールがでかすぎる! そしてセレスティアたちの冷たい視線が一番痛い!


 次回、『星を継ぐもの……じゃなくて星を砕くもの』。 ご期待ください(遺言)。


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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