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第118話 女神堕つ 快適すぎて「私、神様辞めます」宣言

「……なんですか、これは」


 王城の客室にて。 ポチ(フェンリル)の教育係として居座ることになった獣の女神アルテミス(仮)は、震える手で『それ』を指差した。


 彼女の目の前にあるのは、ディラン(俺)が前世の知識で再現し、ソフィアが魔導技術で完成させた『全自動洗浄機能付きトイレ(ウォシュレット完備)』だ。


「これはトイレだ。……使い方は教えただろ?」


 俺が説明すると、女神は頬を紅潮させ、信じられないものを見る目で俺を見た。


「嘘をおっしゃい! これは『聖なる泉』でしょう!? ……ボタン一つで温かい聖水が湧き出し、不浄を清め、さらには『温風』で乾かしてくれるなんて……!」


 彼女は感動していた。 天界のトイレ事情は知らないが、少なくとも「お尻に優しい温水」はなかったらしい。


「ああ、なんて罪深い快楽……。……もう、天界の硬い紙には戻れません……」


 女神はトイレから出てこなかった。 1時間後、恍惚とした表情で出てきた彼女を待っていたのは、次なる文明の利器だった。


「お姉ちゃん、これ食べる?」


 ピヨちゃんが差し出したのは、『ポテトチップス(コンソメ味)』と『コーラ』だ。


「……これは?」


「大地の恵みを揚げたものと、黒いシュワシュワの聖水よ」


 女神は恐る恐る口にした。


 パリッ。 ゴクッ。 シュワァァァ……。


「!!!!!」


 女神の背後に稲妻が走った。


「な、なんという破壊的な味……! 塩分と糖分と炭酸の暴力! ……神酒ネクタルよりも刺激的です!」


 彼女は袋ごとポテトを流し込み、コーラを一気飲みした。 そして、そのままリビングに置かれた『人をダメにするソファ(魔導ビーズクッション)』にダイブした。


 ズブブブブ……。


「あぁ……。体が……溶ける……」


 彼女の神々しい肢体が、クッションに埋もれていく。 天界の雲よりも柔らかく、一度座ったら二度と立ち上がれない魔の家具。


「ポチ……。ここが天国だったのですね……」


 足元で寝ているポチを撫でながら、女神は完全に『ダメな目』をしていた。


 …… …………


 数日後。 事件は起きた。


 王城のバルコニーにて、女神アルテミスが、集まった俺たち家族に向かって高らかに宣言したのだ。


「私、決めました」


 彼女は、片手にポテトチップス、もう片手にスマホ(ゲーム中)を持ち、ジャージ姿(ノエルの借用)で言った。


「私、神様を辞めます」


「「「はぁ!?」」」


 俺とセレスティア、ヴェルザードの声が重なった。


「辞めるって、あんた……天界の仕事はどうするんだよ!?」


「知りません。……あんな堅苦しい職場、もううんざりです。毎日礼拝を聞いて、願い事を叶えて、定時もありませんし」


 彼女は鼻で笑った。


「ここには、温かいトイレと、美味しいジャンクフードと、可愛い子供たち(とポチ)がいます。……私はここで、子供たちの『ペット係』として一生を過ごすのです」


「ふざけないでください!」


 セレスティアが激怒した。


「神様がニート(無職)になるなんて、教育上よくありません! それに、貴女がいなくなったら獣たちの生態系が乱れます!」


「そうですわ! さっさと天界に帰って仕事をしなさい!」 ヴェルザードも珍しく正論を吐く。


「嫌です! 絶対に帰りません!」


 女神はソファにしがみついた。


「帰りたくない! ウォシュレットがない生活なんて耐えられない! コーラがない世界なんて滅びてしまえ!」


「なんて駄女神だ……!」


 俺は頭を抱えた。 世界を管理すべき存在が、文明の利器に屈服し、ただの「ワガママな居候」に成り下がっている。


「パパ、お姉ちゃんをいじめちゃダメ!」


 そこに、ピヨちゃんやレオンJr.たちが割って入った。


「お姉ちゃんは、僕たちと遊んでくれるよ!」 「ゲームも上手いんだぞ!」 「ポチの言葉もわかるし!」


 子供たちにとっては、威厳のない女神様は、最高の「遊び相手(年上のお姉さん)」だったのだ。 彼女もまた、子供たちに甘やかされることで、承認欲求を満たしている。


「ふふふ。……見なさい。この子たちは私を必要としています。……さあ、ピヨちゃん。一緒に『新作RPG』をクリアしましょう」


「うん!」


 女神と子供たちは、俺たちの制止を振り切ってゲーム部屋へと消えていった。


「……どうする、ディラン」


 セレスティアがこめかみを押さえる。


「……とりあえず、置いとくしかないだろう。天界から『捜索願い』が出るまでは」


 俺は溜息をついた。 ポチ(フェンリル)に続き、女神までペット化してしまった。 我が家のカースト(序列)において、ディラン王の地位は下がる一方だった。


 こうして、ダンジョン国には「働かない女神様」という新たな名物が誕生した。 彼女が時折、気まぐれに起こす奇跡(トイレを黄金に変える等)が、さらなるトラブルを招くことは言うまでもない。


(第119話:女神のせいで天界から苦情が来る。……『天使長』が視察に来るが、彼もまたダンジョンの『温泉』と『サウナ』に骨抜きにされる?)


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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