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第112話 公園デビューは命懸け 高さ100メートルの『天竜滑り台』

「……おいおい。ここが公園かよ」


 レオンがサングラスをずらして呟いた。 俺たち『パパ部隊』がやってきたのは、ダンジョン国の都市部に新設された『王立中央キッズパーク』。 セレスティアが「子供たちがのびのび遊べる場所を」と予算を投じて作った場所だ。


 だが、そのスケールは完全に狂っていた。


 目の前に広がるのは、地平線まで続く緑の芝生。 パンフレットによれば、敷地面積は『サッカーコート100面分』、さらに『野球場20面分』の多目的エリアを完備。 端から端まで移動するのに、車でも数十分はかかる広さだ。


「遭難するぞ、これ……」


 イグニスが戦慄する。 だが、もっと恐ろしいのは遊具だった。 ジャングルジムは5階建てビルくらいの高さがあり、ブランコは遠心力で1回転しそうなほどチェーンが長い。


 そして、中央にそびえ立つのが、この公園のシンボル。 高さ100メートル、全長1キロメートルにも及ぶ超巨大滑り台――通称『天竜の背骨ドラゴンズ・バック』だ。 雲を突き抜けるその頂上は、もはや登山レベルの装備がないと到達できない。


「……1歳や2歳の幼児に遊ばせる遊具じゃねぇだろ」


 ザインが呆れるが、俺たちの腕の中にいる子供たちは違った。


「あー! あー!」(あそこで遊びたい!)


 ピヨちゃんやレオンJr.たちが、目を輝かせて暴れだした。 ドラゴンの血を引く彼らにとって、この程度の高さは『ちょうどいい冒険』らしい。


「よし、行くか! パパ友としての『公園デビュー』だ! 他の保護者に舐められるなよ!」


 俺たちは『タクティカル抱っこ紐』を締め直し、戦場(公園)へと足を踏み入れた。


 …… …………


 公園内は、すでに多くの家族連れで賑わっていた。 ただし、客層もダンジョン国仕様だ。


 砂場で遊ぶのは、オークの親子。 ジャングルジムに張り付いているのは、スパイダー・ベビーとアラクネのママ。 池で泳いでいるのは、サハギンの家族。


 異種族が入り乱れる中、俺たち『黒ずくめのパパ集団』が現れると、空気が一変した。


「ヒッ……! あれはディラン陛下と幹部たちだ!」 「目を合わせるな! 因縁をつけられるぞ!」


 周りのパパ(ゴブリンやミノタウロス)たちが、怯えて子供を隠す。 完全に『近寄ってはいけないヤンキーグループ』扱いだ。


「(……違うんだ。俺たちはただ、平和にママ友ならぬ『パパ友』トークがしたいだけなんだ)」


 俺は心の中で泣いた。 だが、子供たちはお構いなしだ。


「パパ! あれ! あれ行く!」


 ピヨちゃんが指差したのは、やはりあの『天竜の背骨(100メートル滑り台)』だった。


「よし、行ってみるか。……ただし、パパと一緒にだぞ」


 俺たちはエレベーター(魔導リフト)で、遥か上空のスタート地点へと昇った。


 …… …………


 地上100メートル。 風が強い。寒いくらいだ。 下を見ると、パパたちが米粒のように見える。


「……これ、滑り台っていうか、滑走路だろ」


 レオンが滑走面を見下ろす。 角度は45度。摩擦係数を極限まで減らしたミスリルコーティングが施され、最高時速は新幹線並みに出るらしい。


「いくぞパパ! ビビってんじゃねぇ!」(意訳)


 レオンJr.が、パパの手を振りほどいて飛び出した。 なんと、腹ばいになって頭から滑り降りる『スケルトン・スタイル』だ。


「おい待て! 危険だ!」


 レオンが慌てて追いかける。


「私も行くわ! 風になるのよ!」


 ピヨちゃんも飛び出した。 彼女はスカートを押さえながら優雅に、しかし猛スピードで滑降していく。


「キャッキャッ!」(燃えるぜ!)


 イグニスJr.は、自身の炎をスラスター代わりにして加速した。


「……消えた」


 ザインJr.は影と一体化して滑り落ちた。


「待てぇぇぇ! お前たちぃぃぃ!」


 俺たちパパ部隊も、覚悟を決めて滑った。 スーツが風圧でバタバタと音を立てる。 速い。速すぎる。 景色が流線となって後方へ飛び去っていく。


『ヒャッハーーー!!』


 子供たちの歓喜の声と、俺たちの悲鳴が交差する。 カーブでは強烈なGがかかり、俺は必死にピヨちゃんの背中を追った。


 そして、ゴール地点。 減速用の『スライム・クッション・プール』に、俺たちは次々と突っ込んだ。


 バシャァァァァン!!


「……ぷはっ!」


 俺はスライムまみれになりながら顔を上げた。 横ではレオンやイグニスも、ずぶ濡れになって息を切らしている。


「し、死ぬかと思った……」


 だが、子供たちは。


「もう一回! もう一回!」


 目をキラキラさせて、リフトの方へ走っていく。 無傷だ。それどころか、興奮で魔力が増幅している。


「……化け物か、あいつら」


「俺たちの子だからな……」


 俺たちが疲労困憊で座り込んでいると、周りで見ていたオークやミノタウロスのパパたちが、恐る恐る近づいてきた。 そして、尊敬の眼差しで俺たちにタオルを差し出した。


「す、すげぇ……。あの『処刑台』と呼ばれた滑り台を、生身で制覇するなんて……」 「さすが陛下のお子様たちだ……! 俺たちじゃ真似できねぇ!」


 どうやら、あの滑り台は魔物たちにとっても恐怖の対象だったらしい。 それを遊び場にしたことで、俺たちの『カースト上位』は決定的なものとなった。


「へへっ、まあな。……これくらい、朝飯前よ」


 レオンが震える足で立ち上がり、精一杯の虚勢を張った。


 こうして、ダンジョン中央公園における俺たちのデビュー戦は、伝説として語り継がれることになった。 その後、俺たちが夕方まで延々と『天竜の背骨』をリピートさせられ、翌日全員が筋肉痛で動けなくなったのは秘密だ。


(第113話:公園の次は『お稽古』? リトミック教室に行ったら、講師が元・魔王軍四天王だった件)


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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