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第111話 世界を揺るがす『魔の2歳児』 パパ、大嫌い!

 ズゴゴゴゴゴゴ……!!


 王城が激しく揺れていた。 地震ではない。魔物の襲撃でもない。 これは、城内の子供部屋から発せられている『拒絶のエネルギー』だ。


「報告します! 第一子供部屋、レオンJr.が『ニンジン拒否反応』を示しています! テーブルが粉砕されました!」


「第二子供部屋、イグニスJr.が『お風呂イヤイヤ』を発動! 大浴場の湯がすべて蒸発しました!」


「第三子供部屋、ザインJr.が『まだ遊びたい』と主張し、影の中に立てこもっています! 説得に応じません!」


 執務室で頭を抱えるディランのもとに、悲痛な報告が次々と入ってくる。 そう、ついに来てしまったのだ。 育児における最大の難所、『イヤイヤ期』が。


 普通の子供でも大変なこの時期。 しかし、俺たちの子供は『ドラゴンの魔力』や『英雄の筋力』を受け継いでいる。 彼らの「イヤ!」は、拒絶の言葉ではなく、物理的な破壊衝撃波となって大人たちを襲うのだ。


「くそっ……! 魔王軍の侵攻よりタチが悪いぞ!」


 俺は叫んだ。 そこへ、我が家の長女・ピヨちゃん(2歳)が、プンスカと怒りながら入ってきた。


「パパなんて知らない! あっち行って!」


「ピ、ピヨちゃん? どうしたんだ? パパと遊ぶんじゃなかったのか?」


 俺が恐る恐る近づくと、ピヨちゃんは小さな腕を組み、冷ややかな目(セレスティア似)で俺を見上げた。


「パパの積み木はセンスがないの。 美的センスの欠落した構造物なんて、積み上げる価値もないわ」


「ぐふっ……!」


 精神的ダメージ。 2歳にしてこの語彙力。 さすが商魂たくましい俺の娘だ。


「それに、パパは『歯磨き』を強要する独裁者よ。 口の中の自由を侵害しないでちょうだい」


「い、いや、虫歯になったら大変だから……」


「イヤ! 絶対イヤ!」


 ピヨちゃんが口を大きく開けた。 俺は「お、口を開けてくれたか?」と思ったが、違った。 喉の奥で、小さな光が輝いている。


 カッッッ!!!


「ギャーーース!!(ドラゴンの咆哮)」


「うわあああああ!!」


 俺は娘の放った『イヤイヤ・ブレス(小規模)』をまともに食らい、執務室の壁まで吹き飛ばされた。 髪がチリチリに焦げる。


「ふん! パパなんて大嫌い!」


 ピヨちゃんはプイッと横を向き、ドスドスと部屋を出て行ってしまった。


「……嫌われた……」


 俺は真っ白に燃え尽きた。 肉体的なダメージよりも、最後の「大嫌い」という言葉が、俺の心臓を鋭利なナイフで抉った。


 …… …………


 夜。 『パパ避難所』には、ボロボロになった男たちが集まっていた。


「……俺、殴られたよ。息子に」 レオンが腫れ上がった頬を冷やしている。 「着替えさせようとしたら、クロスカウンターが飛んできた」


「俺は燃やされた……。ドライヤーが嫌いなんだと」 イグニスが煤だらけで呟く。


「……俺は、無視された。存在を認識してもらえなかった」 ザインが一番深い傷を負っていた。


 俺たちはどん底だった。 世界を救った(かもしれない)英雄たちが、2歳児相手に完全敗北している。


「どうすればいいんだ……。力で押さえつければ、城が壊れる。かと言って放置すれば、教育によくない……」


 俺が溜息をつくと、ドアが開き、セレスティアたち妻連中が入ってきた。 彼女たちも少し疲れた様子だが、それでも目には強い光が宿っていた。


「情けない顔をして、どうしましたの?」


「セレスティア……。俺たちはもう限界だ。子供たちの『イヤイヤ』には勝てない……」


 俺が弱音を吐くと、セレスティアは呆れたように笑った。


「貴方たち、真正面から受け止めすぎですわ。……子供の『イヤ』は、自我の芽生え。成長の証です。……交渉術ビジネスと同じで、押してダメなら引いてみなさい」


「引く?」


「ええ。……例えばピヨちゃんの場合、『歯磨きしなさい』と命令するから反発するのです。『イチゴ味とメロン味、どっちの歯磨き粉がいい?』と選択肢を与えればいいのです」


「な、なるほど……!」


「自分で選ばせることで、自尊心を満たす。……基本ですわ」


 俺たちは目から鱗が落ちた。 さすが最強の管理者。


 翌日。


「ピヨちゃん。……歯磨きの時間だ」


 俺は震える手で、二つの歯磨き粉を差し出した。


「今日は特別に、ピヨちゃんに選ばせてあげるよ。……王室御用達の『プレミアム・イチゴ』か、それとも新作の『ロイヤル・グレープ』か。……どっちにする?」


 ピヨちゃんは少し考え込んだ。 そして、チラリと俺を見た。


「……グレープ。 今のトレンドはブドウ系よ」


「よし! じゃあグレープで磨こうな!」


 俺は心の中でガッツポーズをした。 磨かせてくれた! 口を開けてくれた!


「……ん。 上手よ、パパ」


 磨き終わった後、ピヨちゃんが少し照れくさそうに言った。


「昨日は……火を吹いてごめんなさい。 ……パパのこと、嫌いじゃないわ」


 ズキュゥゥゥン!!(効果音)


 俺の心臓が撃ち抜かれた。 破壊力抜群のツンデレ。 焦げた髪も、吹き飛んだ壁もどうでもよくなった。


「うおおおお! パパも大好きだぁぁぁ!」


 俺はピヨちゃんを抱きしめた。 レオンたちも同様に、選択肢作戦で子供たちとの和解に成功していた。


 こうして、第一次『イヤイヤ戦争』は、大人たちの知恵(と妻の助言)によって休戦協定が結ばれた。 だが、子供たちの成長は早い。 次に訪れるのは『なんでなんで期』か、それとも『おませな初恋』か。


 パパたちの心労と幸せな日々は、まだまだ続くのである。


(第112話:パパ活……じゃなくて『パパ友』活動? 公園デビューで他の保護者(魔物や亜人)と派閥争い勃発)


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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