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第110話 パパの撮影魂! 魔導8Kカメラと『1歳児ダンジョン運動会』

「諸君。ついにこの日が来たな」


 王城の地下にある『作戦指令室(旧・パパ休憩室)』。 ディランは、重厚な円卓を囲むレオン、イグニス、ザインに向かって厳かに告げた。


「今日は、我が子たちの1歳の誕生日。……そして、妻たちが企画した『初めての運動会』の日だ」


「運動会……。響きは可愛いが、場所がマズイ」 レオンが渋い顔で地図を指差す。


 場所は、ダンジョン第1階層『はじまりの草原』。 スライムやゴブリンが出る場所だ。


「1歳児をダンジョンに放り込むなんて、正気かよ」 イグニスが頭を抱える。


「妻たち曰く、『才能ある子には早期教育が必要』らしい。……まあ、俺たちがついていれば危険はない」


 俺はニヤリと笑い、卓上のアタッシュケースを開いた。


「それより、重要なのは記録だ。……我が子の初めての勇姿。一瞬たりとも見逃すわけにはいかないだろ?」


「当然だ!」 「そのために、俺たちは寝る間を惜しんで開発したんだ!」


 彼らがそれぞれのケースを開く。 そこに収められていたのは、もはやホームビデオカメラの域を超えた代物だった。


 レオンが取り出したのは、バズーカ砲のような巨大なレンズがついたカメラだ。


「『ギガ・ズーム・キャノン』。……5キロ先の赤ちゃんの産毛まで鮮明に捉える超望遠仕様。手ブレ補正は完璧だ。俺の震える感動すら補正してくれる」


 イグニスが出したのは、複数のレンズが球体状についた奇妙なカメラだ。


「『360度・サラウンド・アイ』。……死角なし。うちの子がどこで炎を吐いても、全角度からその輝きを逃さない」


 ザインが出したのは、コンタクトレンズ型の極小カメラだ。


「『ステルス・レコード』。……目に装着する。俺が見た景色そのものが記録される。瞬き厳禁だ」


 男たちのロマン(執念)が結晶化していた。 画質は、ソフィアの技術協力により『魔導8Kレゾリューション』を実現。現実よりも鮮明に映ると言われている。


「よし、俺も行くぞ。……装着!」


 俺が担ぎ上げたのは、もはや放送局の業務用機材をも凌駕する、肩乗せ式の超大型魔導カメラだ。


「『アルティメット・メモリー・ユニット』。……魔力感知センサー搭載。赤ちゃんの感情の高ぶり(魔力波)を検知して自動でズームする。……編集用AIソフィア・タイプⅢも内蔵だ」


 俺たちは頷き合った。 これは運動会ではない。俺たちにとっては、絶対に失敗できない『撮影ミッション』なのだ。


「撮影班、出動せよ!」


 俺たちは重装備に身を包み、ダンジョンへと向かった。


 …… …………


 ダンジョン第1階層。 そこは、妻たちの手によって『運動会会場』に改造されていた。


「さあ、可愛い赤ちゃんたち! ママのところまで競争ですよ!」


 ゴール地点で、セレスティアやノエルが手を振っている。 スタート地点には、ハイハイの姿勢をとる8人の1歳児たちが並んでいた。


 ただし、コース上には障害物として『野生のスライム(弱体化済み)』や『ゴブリンのぬいぐるみ(中身は自動人形)』が配置されている。


「位置について……よーい、ドン!」


 号砲が鳴った。


 その瞬間、俺たちパパ部隊は、戦場カメラマンの如く散開した。


「カメラ回せぇぇ! 録画開始!」

「レオンJr.、A地点通過! ズームイン!」

「イグニスJr.がスライムに接近! 決定的瞬間だ!」


 俺たちは地面を這いずり回り、最適なアングルを確保する。


 しかし。 子供たちのスペックは、俺たちの予想を遥かに超えていた。


 ドォォォン!!


「……え?」


 レオンJr.が、ハイハイのまま地面を隆起させ、スライムごと障害物を粉砕して直進した。 さすが脳筋の子。


「キャッキャッ!」


 イグニスJr.がくしゃみをすると、前方のゴブリン人形が火だるまになった。 火力が高すぎる。


「……消えた!?」


 ザインJr.がスタート直後にステルス化し、誰も気づかないうちにゴールテープを切っていた。


 そして、俺の長女ピヨちゃんは。


「ちょ、待ちなさいよアンタ!」


 なんと、障害物のゴブリン(人形)相手に、流暢な言葉で話しかけていた。


「この道を通りたかったら、通行料を払いなさいよ。……今ならマヨネーズ1年分と交換してあげるわ」


「(ゴブリン人形の困惑した顔)」


 ピヨちゃんは、まさかの『交渉カツアゲ』で障害を排除した。 1歳児にして、すでに商魂が完成している。


「す、すげぇ……。これ、本当に1歳児の運動会か?」


 俺たちはカメラを回しながら戦慄した。 もはや運動会というより、『魔獣のスタンピード(暴走)』だ。


 あっという間に全員がゴールした。 タイムは10秒足らず。


「まあ、もう終わりですの?」 「物足りないのう。……やはり第10階層くらいでないと準備運動にもならんか」


 妻たちが不満げに話し合っている。 恐ろしい英才教育だ。


 だが、俺たちパパ部隊の仕事はここからが本番だった。


「……撮れたか?」

「ああ。完璧だ」


 俺たちは、砂埃にまみれたカメラを抱きしめた。


「今夜は徹夜だぞ。……最高のBGMをつけて、スローモーション編集をして、感動のドキュメンタリー映画に仕上げるんだ」


 その夜、王城の編集室(パパ部屋)は、朝まで明かりが消えることはなかったという。 後に『ダンジョンの奇跡・1歳児たちの伝説』と題されたその映像は、親バカフィルターにより3時間の超大作となり、妻たちに「長すぎます!」と怒られることになるのだった。


(第111話:子供たちの成長は止まらない。……イヤイヤ期? 反抗期? 世界を揺るがす親子喧嘩が勃発する)


 ※注:予告は執筆中にさらなるアイデアのために変更することがあります。むしろ予告通りにならないことが多々ありますのでご了承ください。

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