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第109話 育児は戦場だ! 最強パパ部隊と『タクティカル・抱っこ紐』

「総員、状況報告!」


 王城の一角にある『パパ専用休憩室(避難所)』にて、ディランは憔悴しきった顔で声を上げた。


 そこに集まっているのは、レオン、イグニス、ザイン。 かつて魔王軍とも戦った歴戦の猛者たちだが、今は全員、髪がボサボサで、服にはミルクの吐き戻しや謎の汚れが付着し、目の下には濃いクマを作っていた。


「……報告します。長男(レオンJr.)の握力が強すぎて、ガラガラが3秒で粉砕されました」 レオンが折れ曲がった鉄製のオモチャを見せる。


「うちは……夜泣きが『範囲魔法』です。泣くたびに俺の髪が燃えます」 イグニスのアフロヘアが焦げている。


「……見失った」 ザインが遠い目をする。 「娘(ルナの子)がハイハイで『天井裏』に潜伏した。……捕獲に3時間かかった」


 地獄絵図だった。 俺たちの子供は、全員が『チート持ち』だ。 俺のところも酷い。 ヴェルザードの子はくしゃみでボヤ騒ぎを起こすし、アリシアの子はベビーベッドの柵をねじ切って脱走する。


「普通の育児グッズじゃ保たねぇ……。俺たちのメンタルも限界だ……」


 俺たちが絶望に打ちひしがれていると、部屋のドアが開き、セレスティアが入ってきた。 彼女は、疲れ切った俺たちを見て、不敵に微笑んだ。


「嘆いている暇はありませんわ、パパたち。……貴方たちのために、開発部が総力を挙げて『新装備』を完成させました」


「新装備……?」


「ええ。コンセプトは『戦う男のための育児ギア』。……名付けて『ダンジョン・タクティカル・ベビーシリーズ』です」


 彼女が指を鳴らすと、エルフのメイドたちがワゴンを運んできた。 そこに乗っていたのは、パステルカラーの可愛いベビー用品……ではなかった。


 黒や迷彩柄を基調とし、ミスリルとドラゴン革で作られた、どう見ても『特殊部隊の装備』にしか見えないアイテム群だった。


「まずはこれ。『タクティカル・抱っこアーマード・キャリア』です」


 セレスティアが掲げたのは、防弾チョッキのような重厚な抱っこ紐だ。


「素材は耐火・耐衝撃のドラゴンレザー。赤ちゃんの不意の頭突きや魔法暴発から、パパの胸部を完全防御します。……さらに、肩ベルトには『ミルクボトル・ホルダー』と『おむつポーチ』を標準装備」


「か、カッコイイ……!」 レオンが身を乗り出す。


「次に、『機動オムツ替えマット』。……展開すると簡易結界が張られ、赤ちゃんの暴れる足を強制的に固定し、いかなる排泄物の爆発も防ぎます」


「欲しい! 今すぐ欲しい!」 イグニスが叫ぶ。


「そして極め付けは、『スマート・マザーズバッグ(パパ仕様)』です」


 それは、多機能ツールボックスのような無骨なバッグだった。


「中には『自動調乳機能付き魔法瓶』、『泣き止み音波発生装置』、『汚物消滅ボックス』を内蔵。……これ一つあれば、ダンジョンの最深部でも育児が可能です」


 俺たちは震えた。 これは育児用品ではない。俺たちの失われた『男の尊厳』を取り戻すための武器だ。 可愛いクマさんの柄なんていらない。俺たちが欲しかったのは、この『機能美』と『タフネス』だったのだ。


「装着せよ! パパ部隊!」


 俺の号令で、全員が装備を身につけた。 黒い抱っこ紐を装着し、腰には哺乳瓶をホルスターのように吊るし、背中には多機能バッグ。 鏡に映った自分たちは、まるで『映画に出てくる特殊部隊』のようだった。


「……悪くない。これなら街を歩いても舐められない」 ザインがポーズを決める。


「よし、実戦テストだ! 行くぞ野郎ども!」


 俺たちは意気揚々と、子供たちの待つ部屋へと突入した。


 …… …………


 数分後。


「目標(赤ちゃん)、オムツ交換を開始する!」 「了解! 結界展開! ……ターゲットの足、固定完了!」 「汚物確認! 消滅ボックスへ投入!」 「ミルク、適温で装填完了! 飲ませろ!」


 俺たちは見事な連携で、暴れる最強ベビーたちを制圧(お世話)していった。 タクティカル抱っこ紐のおかげで、ドラゴンの尻尾ビンタも痛くない。


「すげぇ……! 育児が……楽しい!」 レオンが感動している。


 その様子を見て、セレスティアは満足げに頷いた。


「計算通りですわ。……男性は『形』から入るとモチベーションが上がる生き物。これで育児参加率が1000%向上します」


 そして翌日から。 城下町には、黒ずくめの完全装備で、片手でベビーカーを操り、もう片方の手で哺乳瓶を構える『イカツイ男たち』の集団が出没するようになった。


 一見するとテロリストだが、その表情は慈愛に満ちており、背中の赤ちゃんたちは幸せそうに笑っている。


「きゃー! 見て! あのパパさんたち、強そうで素敵!」 「私も旦那にあれを着せたいわ!」


 街の女性たちからも大好評だった。 セレスティアの狙い通り、『イクメン・タクティカルシリーズ』は爆発的なヒット商品となり、世界中のパパたちがこぞって買い求めた。


 俺は、抱っこ紐の中で眠る我が子の重みを感じながら思った。 育児は戦いだ。 だが、最強の装備と仲間がいれば、この戦場も悪くない。


「……パパ、好き」


 胸元で、ピヨちゃん(長女・すでに喋れる)が呟いた。 その一言で、俺のHPは全回復した。


(第110話:子供たちの成長速度がおかしい。……1歳で『初めてのダンジョン攻略』? 英才教育にもほどがある運動会編)

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