第105話 衝撃の結果発表! まさかの『全員同時』と国家予算の危機
「……おめでとうございます」
王城の医務室。 ソフィアが開発した『超精密・コウノトリ感知魔道具』の結果が表示されたモニターを見て、医師(とソフィア自身)が震える声で告げた。
「ディラン様。……全員、反応あり(陽性)です」
「……へ?」
俺は耳を疑った。 セレスティア、ヴェルザード、アリシア、ノエル、ソフィア。 5人並んでベッドに座っている妻たちが、一斉に顔を輝かせた。
「まあ! やりましたわ!」 「でかしたぞディラン! 一発必中とはな!」 「私の計算通り……いえ、計算以上の確率変動です」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 全員!? 同時に!?」
俺は腰を抜かした。 あの『誤解が解けた夜』から数週間。 まさか、これまで堰き止められていた運命が一気に決壊し、こんなミラクルを引き起こすとは。
「確率的にありえん……。だが、これが『愛の力(とドラゴンの生命力)』ということか……」
ソフィアが眼鏡を直す手も震えている。
「ディラン様! すごい! すごいです! 一気に5人のパパですよ!」
ノエルが俺に飛びつこうとするが、セレスティアが「安静になさい!」と止める。
「喜んでいる場合ではありませんわ。……大変なことになりました」
セレスティアの目が、母親の目から『財務大臣』の目に戻った。 彼女は高速で電卓を叩き始めた。
「王族の出産費用、ベビー用品、将来の養育費、家庭教師代、城の増築費……。……試算が出ました」
彼女はモニターに数字を映し出した。
「……国家予算の3年分が飛びます」
「さ、3年分!?」
「5人同時に、しかも最高級の環境で育てるのです。……オムツ代だけで城が建ちますわ」
場が静まり返った。 喜びが一転、財政破綻の危機。 俺が頭を抱えていると、廊下からドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。
「ディラン! おいディラン!」
飛び込んできたのは、レオン、イグニス、ザインの3人だった。 彼らは息を切らし、顔を真っ赤にしている。 後ろには、彼らの妻であるシーラ、エレナ、ルナも、どこか恥ずかしそうに立っていた。
「どうしたレオン? 仕事中にサボりか?」
「違う! 緊急事態だ! ……俺の嫁が……シーラが……!」
レオンがシーラの手を握りしめ、叫んだ。
「『できた』んだよ!」
「え?」
「俺もパパになるんだよぉぉぉ!!」
「なっ……!」
続いてイグニスも叫んだ。 「俺もだ! エレナのお腹に、俺の炎を受け継ぐ子が!」
ザインもボソッと言った。 「……俺も。ルナが懐妊した」
まさかの全員同時。 レオンたちの『愛の覚醒』と、俺の『リミッター解除』の時期が重なり、ダンジョン国全体に空前のベビーブームが巻き起こっていたのだ。
「すげぇな……。お前らもかよ……」
俺たちは顔を見合わせた。 かつては借金と見栄にまみれた独身男たちだった俺たちが、揃いも揃って父親になる。 なんとも言えない感慨が込み上げてきた。
「おめでとう、レオン。……だが、覚悟しておけよ?」
俺はセレスティアの出した試算表を指差した。
「子供一人育てるのに、お前らの借金と同じくらいの金がかかるぞ」
「……まじか」
レオンたちの顔が青ざめる。 ただでさえ借金地獄なのに、養育費地獄まで追加されるのか。
「ですが、ご安心ください」
セレスティアがニッコリと笑った。
「人口増加は国力の要。……貴方たちの子供には、国から『特別手当』を出しますわ」
「お、おお! さすが王妃様!」
「ただし」
セレスティアの眼鏡が光った。
「その分、貴方たち(父親全員)には、死ぬ気で働いていただきます。……これからは『第100階層』の未開拓エリアまで遠征し、希少資源を根こそぎ回収するのです」
「「「イエッ・マム!!」」」
男たちの返事は揃っていた。 もはや、やらされる労働ではない。 守るべき小さな命のためなら、ドラゴンの巣だろうが神の領域だろうが、ツルハシ一本で切り開く覚悟ができていた。
「稼ぐぞ、野郎ども! オムツ代のために!」 「おう! ミルク代のために!」 「……学資保険のために」
俺たちは固い握手を交わした。 王城の医務室は、未来への希望と、男たちの悲壮な決意に包まれていた。
こうして、ダンジョン国は『スーパーベビーブーム』に向けた、狂気の『総力戦(金稼ぎ)』に突入することになった。
そして、街では新たな噂が流れていた。 「王様のマヨネーズを食べると子宝に恵まれるらしい」 その噂により、マヨネーズの売上がさらに爆発し、結果的に育児費用の一部が賄われることになるのは、また別の話である。




