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前編

晴人は4月からこの学校に転校してきた。

高学年ということもあり、クラスではグループが既にできている。みんなと馴染めずにいるのだ。

(クラスの人気者になれたら、学校楽しくなるかな)

そう考えていた晴人は、ある噂を耳にする。


「願いを叶えてくれる幽霊が出るんだって」


噂話は基本信じないが、もし本当にいるなら…と少しの期待を抱きその場所へ向かうことに。


向かった先で出会ったのは、透明で色白な女の子の幽霊だった。

「この学校、出るんだって。幽霊がー」

放課後女子生徒たちがヒソヒソ話しているのを耳にした。

どうやらその幽霊は願いを叶えてくれるらしい。

僕は噂は信じない。見たものしか信じないタイプってやつだ。

ましてや幽霊なんて、いるとも思えない。


だが、僕はこのクラスで浮いていた。

転校してきたばっかで、友達が1人もいない。

みんなグループに分かれていてどうも輪に入りづらい。

クラスの人気者になれたらどれだけ学校生活が楽しくなるだろうか。

願いを叶えてくれる、幽霊。


(ちょっとだけ、行ってみるか)


その日の放課後、興味本位でその場所に向かってみる。

時刻は16時を過ぎた頃。

いつも聞こえる子どもたちの声は聞こえない。

その場所へと向かう自分の足音だけが響く。


そこは、学校の屋上に繋がっている階段。

電気はなく薄暗い。窓から光が差し込んでるだけだ。

カーテンを仕切りに奥には使われていない古びた机や椅子の物置となっている。


(こんな場所、あったんだ。)


興味本位で来てみたが、その幽霊が出る気配なんてない。

やっぱり噂だったのか。


見上げると階段の1番上には屋上につながる扉が見える。少し期待してた分、残念な気持ちになった僕は外の空気を吸いたくなって階段を登る。

扉を開けようとした時


…?


後ろに気配を感じた。

ハッと振り返る。

そこには、今にもなくなってしまいそうなほど透明な女の人が立っていた。


人なのか?でも、人だよな?

いや、髪は長く、肌は白い。細い腕がワンピースの袖を通している。これはまさか…


(ゆ、幽霊!!)


青ざめる僕を見て、口を開いた。


「あなた、誰?」

「だ、だれって、最近転校してきた晴人だけど…君は?」

「わたし、見ての通り幽霊なの。なにしにここへ?」

(やっぱり幽霊だったのか!)

「いや、その、噂を聞いて…願いを叶えてくれる幽霊がいるって」

「あぁ私のことね。あなたも願いを叶えて欲しいの?」

この子が噂の幽霊。何度も願いを叶えてほしい生徒が訪れてるのだろうか。意外にも会話ができる。

そしてなんだかツンとしている。

「…! あの、僕を、クラスの人気者にしてくれない?」

「良いわよ」

あっさり承諾だ。

「え、いいの?」

「その代わり、条件があるわ」


窓は開いていないはずなのに、幽霊の長い髪が優しく揺れて、少し笑ってる顔を隠す。


僕は唾を、飲み込む。


「私を、成仏させて。」

長い髪の隙間から、幽霊の透き通る目は僕の目をしっかりと見つめていた。


ーー


最初は幽霊と喋ることに躊躇した。

だけど、いくつか質問をしているうちに普通の人間と同じように喋れるんだとわかった。

幽霊はもう何十年もこの学校にいる。彼女はいつから自分がここにいるのかはっきりとは覚えてないらしい。

年齢は僕より1つ上みたいだ。

「どうやったら成仏できるの?」

「私にもわからないわ」

こんな感じで彼女も自分がどうやったら成仏できるのかわかっていない。


結局僕は彼女の条件を飲むことにした。

成仏の方法なんてわからないけど、願いを叶えてくれたらお寺にでも連れて行って成仏させてやろうと、考えていた。


僕の願いは、クラスの人気者になることだ。

学校では幽霊に協力してもらって手品を成功させたり、運動会で幽霊が助けてくれて1番になったり、ぼくは幽霊の力を借りて人気者になるはずだった…だったのに


全然友達すらできねえじゃねえか!


「ねえ!いつになったら願いを叶えてくれるんだよ!」

「だってぇ〜」


この幽霊はとてもやる気がない。

連れてからというもの、もう1ヶ月は経っている。

どうもこの幽霊はめんどくさがり屋のようだ。

僕が助けて欲しい時に、1番めんどくさそうなのだ。そのおかげで僕は失敗をするばかりでクラスのみんなからはドジ扱いをされている。1番の失敗は、クラスでドッチボールをしていた時だ。幽霊は目がいい。相手がどこに投げるかすぐ判断できる。僕にそれを教えてくれる。最初はいい感じだったのに、

「ごめん、飽きた」

始まって5分も経っていない。

幽霊は教えるのをやめた。

転校生の僕はすぐに狙われた。協力してくれないことにびっくりしたせいか、目の前のボールに気づかず、顔面でボールを受け止めた。

変な動きをしていたに違いない。周りからは心配の声と少し笑われてる声がする。

幽霊は後ろを向いて肩を振るわせた。

「僕は、からかわれているのか…」

幽霊に少しムカついた。


他にも、読書の時間中に僕の耳をふーとしてきて変な声を出させたり、家庭科の時間には女の子用のフリフリのエプロンを用意させられたり。

どう考えても僕の邪魔をしてるに違いない。

(暇なのか?)

僕の邪魔をしてる時だけ、幽霊は少し楽しそうなのが憎い。


しかも僕はよく幽霊とコソコソ喋っているので周りから見れば1人でブツブツ言ってる気味の悪いやつにみえている。余計に人気者からは遠ざかる。


「あのさぁ、俺、人気者から遠ざかってる気がするんだけど」

「そんな気もするわね」

「誰のせいだと思ってるんだ?」

「…」

幽霊は少し笑って、はぐらかす。


放課後の誰もいない教室に晴人と幽霊の2人だけだ。


「いつになったら俺の願いは叶うんだよぉ…あと君って本当に成仏したいの?」

「うるさいわね」

成仏の話をすると幽霊は幽霊は色白い頬をすこし赤くさせる。

たまにツンとする仕草が、

ムカつくが、最近は少しだけ可愛く思えてきた。


こんな感じで僕は幽霊と日々を過ごしていると、事件は起きた。


「最近出るんだって、幽霊」


ある日の休み時間、幽霊を連れてる晴人の耳にこんな噂が入ってきた。


「幽霊が出るって…もしかして君の仕業?」

晴人は半目になって幽霊を見る

「ちがうわよ。」

「だったらなんだろう?」

僕は気になってその噂話をしてる女の子たちに話しかけた。

「ねえ、その出るって話、僕も聞いていい?」

「あ、晴人くん…」

普段、僕から話しかけるなんて滅多にない。今日はなぜか体が先に動いてしまった。

その女の子たちはそんな僕に話しかけられてお互いに目を見合い少し気まずそうだ。しかも話を盗み聞きして話に入っていくなんて、少し申し訳ない。

「いいよ…その…音楽室のピアノなんだけど、誰もいないのに放課後に鳴るんだって」

1人の女の子が答えた。

「へえ、どういう風に鳴るの?」

「ポーンって、音が聞こえるだけ見たい。でもその音楽室、放課後は誰も使ってないらしいの。だから不気味で、みんなそれで幽霊が弾いてるんだって噂になってて」

「音楽室か…俺、行ってみるよ」

「ええ!?怖くないの…?」

「うん、大丈夫」


僕は幽霊を連れているからなのか、失敗ばかりしてるからなのか、不思議と怖さはなかった。女の子たちも興味があるらしく、一緒に向かうことになった。

(ここで事件を解決できれば、人気者になれるかも)

僕はそう思って、ぎゅぅと手の拳を握った。


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