怒り〜そして次へ〜
「ふあぁ〜」
あれ?空が見える?そうだった。異世界に来たんだった。昨日は住人たちの好感度上げ祭につきあわされたんだっけ?あぁまだ体がだるい.....
「おはよう、レオ君。朝ご飯の用意ができているわよ。」
あ、クリスさんだ。朝から彼女が見れるなんて、なんていい日なんだろう·····。この紫色のスープうめ~。毒入ってそうだけど。
ちょっと待て!?なんで普通にクリスさんがうちにいて、僕の朝食を作っているんだ!?
本来ならこう、自分で自炊するのが一般的だろ!?流石に昼食は自分で作んないとまずいよな。どれだけ金を持っていたんだっけ?異世界の通貨ってそもそもなんだ?
あれ?ってことは僕、金持ってないじゃん!!異世界にきてからクリスさんに!おんぶにだっこで!何もしてないじゃん!
「レオ君、君今金がないと思ったわね。」
怖っ!
的確に僕の思っていること当ててくるよこの人。でも、僕に、衣食住、すべてを用意してくれたクリスさんならいい仕事先知っているのではないか!?
「なんか、いい仕事とかあるんですか?」
「ふふふ、とびっきりのいい仕事があるわよ!」
あれ?なんだ、クリスさんの背後にめっちゃ黒いオーラが出てきたぞ。
「大丈夫ですよね。本当に合法ですよね。」
「ふふふふ・・」
クリスさんの普段の優しい顔が悪い笑顔に変わっていっているぞ・・・
問。仕事内容は単純だけど、新人でもめっちゃ給料が貰える仕事!これな〜んだ?
A、冒険者!
と言うわけで、冒険者ギルドの前にいます!ここ、ムルティコルの建物は色が派手だけど、冒険者ギルドも例に漏れないな。補色を使いまくるって頭バグってるんじゃないのか!?
「ここが冒険者ギルドよ。」
知ってるよ。眼の前にデカデカと「冒険者ギルド」って書いてあるんだからな。青色で。青色ってセンスなくない!?せめて黒で書けよ!でも、冒険者ギルドがあったと驚くことより、もっとすごいことがある。
魔法があった!なんかすごい武術があった!異世界といえばこれ、があった!
そんな風に感心しながら、扉を潜り抜け、中に目をやると、めっちゃ体格のいい人がゴロゴロいた。そして酒クセェ〜。朝っぱらから飲んでいるよこの人たち。というか、全員昨日の祭りで見た顔だぞ!
とまあ、いろんなことに驚きつつも、受付嬢(本物ガチで見た)のいるところに向かっていくと。
「いらっしゃいませ。冒険者登録はこちらの窓口で行えます。」
「後は受付のお姉さんに任せれば大体のことはやってくれるわよ。私は仕事しないといけないから帰るわね。」
おおい。いきなり帰っていったぞ!あの人!まぁ仕事があるのはわかるよ。でもさぁ全くわからない人をおいていくのはどうかと思うけどね。受付嬢の人に聞けば大丈夫かな。さぁて、冒険者になって生活費を稼いでいくぞ〜!お〜!まずは登録からだね!
「冒険者登録をお願いします。」
「では、こちらの紙に記入をお願いします。必要があれば、魔法や、武術などの講習も受けられますが、そちらも受けますか?」
マジで!?無料で受けられるのか。じゃあ受けない手はないじゃん。
それじゃあ講習受けて憧れの魔法撃てるようになってみよう!
◆
そう思っていた時期もありました。
「魔力を感じたら、手に集めて、そこから火を出すんだ!」
「こう!」
頭から火がドバー!
......うん。何故か僕がやると、魔力の操作がうまくできないんだよ。
手に集めようってなったら、頭に集まるし、じゃあ頭に集まるようにすれば手にいくんじゃね?と思って頭に集めようとしたら、足から火が出て、空を飛び回るし・・・。魔法クソじゃねぇか!
「なんで言った通りにできないんだ!ここは大体の人は普通に通り過ぎていく分野なのに・・・」
うぅ。常に勉強や運動を簡単にそして一番にできていたのに、なんで魔法はこうもうまくいかないんだ・・・。い〜や認めない。僕はどんなこともスパっとできる超エリートなんだ!こんな問題も一瞬で解決して一気にトップに躍り出れる人なんだ!
もう一回手のひらに集めてボン!
「何やってんだー!いきなり背中から炎を吹き出しながら壁に突っ込んで!」
もしかしなくても、魔法だけは、本気で下手なのか?
◆
さあて、次は武術だ。これは、魔法とは大違い。めっちゃ得意分野だ!なんてったって、僕は勉強と運動は一番だったからね。
あの魔法を教えてた鬼教官も武術は認めてるくらいだからな〜。ほらこんな風に。
「お前、武術の筋はめちゃくちゃいいな。初心者にしてはトップレベルだぞ!」
ふふんどうだ。僕はやればできる男なのだよ。魔法以外は・・・。
かっこよく使えるようになりたかったのに・・・・
◆
「はあ、魔法、使えるようになりたかったな〜」
家に帰りながら、そんなことを呟いてみる。でも、そんなことでうまくいくわけはない。もしそうだったら、1日中念仏のように唱えてやるよ!
手から炎を出してみようとする。「ボン!」やっぱり頭からでちゃうのか。
待てよ、意識する場所と出る場所が常に一緒なら、パターンをしっかり把握すれば、出したいときにすぐに出せるってことじゃないか!まぁどこから出そうとしたら手から出るのか、把握しないとな。
あれ?なんかここらへん人の声が小さくなってないか?それにそこに人混みができているぞ。なにかあったのか?
「やめてください!それは今日稼いだ金なんです。それがないと生きていけません!」
「うるせぇ。ここは俺達ノクターナルの縄張りだ!店を出したいなら俺達に金を払え!」
「払います。払います!ですから、その金だけはお願いします。お願いします・・・」
何だあれ。ガタイの良いおっさんたちが弱い老人によってたかって。なんで他の人達は手を出そうとしないんだ?おかしな奴らだけど、仲間意識は強い奴らじゃなかったのか。
「あら、レオ君おかえり。どうしたのそんな険しい顔して?」
「あれを見ても何も思わないんですか?」
「あれはあのノクターナルの人たちがいなくなった後に老人を助けようとしているのよ。真正面からけんかを売って勝てるようなやつじゃないからね。」
でも、それは対症療法で根本的な解決にはならないじゃないか。
心の奥底で、感情が煮えたぎってくるのを感じる。正直、人のためにこんな感情を抱いたことは初めてだったが、そんなことも気にならないくらいに荒ぶっている。
そうだ、僕は怒っているのだ。あのクソ野郎どもに。
やり方がどうであれ、僕が異世界に来て困っていたときに、励ましてくれたんだ。ここの人たちは!
よし、決めた。俺が正面から喧嘩売ってやろう!
他の人達がやらないなら、僕がやってやる!