宿屋
王都の中心部にある宿に部屋をとる。
少し高そうな宿を選び、ドキドキしてしまう。
僕なんがが普段使う冒険者用の宿ではなく、貴族や商人が使う宿だ。
馬車を着けるエントランス、そして大きな入り口、綺麗な受付。
それらを抜け、部屋へ。
僕は言う。
「ええと、大きな部屋と小さな部屋だよね」
ケインが答える。
「四人部屋と二人部屋だ」
ローナも続ける。
「じゃあ女性と男性ね。ヴァリーとセリアと私で大きな部屋!」
ケインも頷く。
「まあそうなるな」
隊長が指示を出す。
「荷物を置いたら部屋へ来い」
ケインは答える。
「はい。打ち合わせですか」
「そうだ」
「了解」
こうして僕らは荷物を置く。
室内は二人部屋なのに普通の宿屋の四人部屋のような広さだ。
ベッドの他に窓際には一人用のソファが二脚と机がある。
「すごいね」
そう言うとケインが答える。
「費用が相手持ちだからな。こんなトコ滅多に泊まれないから堪能しておけよ」
「うん」
荷物をソファに置き、少しだけ窓の外を見る。
喧騒に包まれた街並み。
それを眺めながら、考える。
この町のどこかに。この国のどこかに。
僕が目指す勇者がどこかに居る。
会えるだろうか?
話が出来るだろうか?
分からないけど、賑やかな街並みを見ながら、今後の期待に胸を膨らませたのだった。
隊長の部屋で話をする。
「何か話があるのかな」
「一応町へ出るぞ」
ローナは「やったわ!」と喜ぶけどケインが釘を刺す。
「喜んでるが多分遊びじゃないぞ」
「え?」って顔をするローナだけど隊長が続ける。
「情報収集だ」
僕は聞いてみる。
「王様に頼んであるけど、僕らも調べるのかな」
「貴族の領地や近隣諸国の話なども把握しておくに越した事はない」
「そうだね、人任せだけじゃ駄目だね」
ローナは「う、やっぱりお仕事もしないと駄目ね」と落ち込むけどセリアが言う。
「聞き込みで名物とかも聞けるかもしれないわよ」
そう言われローナも笑顔に戻る。
「そうよね! 美味しいデザートのお店とかも聞けるかもしれないわよね!」
ケインはやれやれといった感じで返す。
「まあ名産品探しも悪くはないか」
僕は言う。
「そうだね、じゃあさっそく町へ行こうか」
ははは、とみんなで笑う。
ローナが掛け声を掛ける。
「それじゃ、レッツゴー!」
僕らは意気揚々と宿の部屋を出るのだった。
宿屋の受付でギルドの場所を聞く。
「すみません、ギルドへ行きたいんですけど」
「大通りを行った先ですが、少し道順が複雑ですね、今地図をお出しします」
そう言われるけど、僕らに横から声を掛ける人が居た。
「ギルドですか? ここからだと少しありますが、案内しましょうか?」
その人は一人の商人だった。
僕は戸惑う。
するとそのままその人は言う。
「ああ、気にしないでください、私はセルジ。商人をしてます」
ケインが受け答えする。
「商人か、アンタらもこの宿に?」
「ちょうど商売がありまして。どうです? 一緒に行きますか?」
ケインは隊長に目配せするが隊長は静かに頷くだけだ。
それを見てケインが言う。
「じゃあお言葉に甘えて」
そんなやりとりをして僕らは宿を出た。
歩きながら商人の人は言う。
「サン・テーレは初めて? 私は何回か来たことありますが」
セリアの「大きな町ですよね」の言葉に「だからギルドも大きいですよ」との答え。
ローナも「それなら情報もたくさん集まるわよね」と言う。
その言葉に商人さんは「この町は人もたくさん集まるから賑やかですし、あんな大きな宿もあるし、私が泊まる事にもなったんですけどね」と言った。
僕は聞く。
「いつもあの宿に泊まるんですか?」
するとセルジ商人は答える。
「いいや、いつもは安い宿に泊まっています。でも今回は町に色んな冒険者が来ててね。安い宿は満室でね、だから普段は泊まれないあんな高い宿に入ったんだ。」
ケインは言う。
「宿は高い方がいいぞ、疲れが取れる」
「ごもっともですな。いつもの宿が満室だった時は野宿も覚悟しましたが、情報に詳しい者がこの町の事を教えてくれましてね。おかげであの高い宿を知ることができました。まあ、たくさん稼ぎが出そうなので、今回は奮発してもいいでしょう」
そんな言葉にケインが言う。
「情報に詳しい人物、そんなのが居るのか」
「町の情報屋さんですな、この王都で色々な情報を集めているんです」
「そんな奴が居るのか、そいつはいい。ちょうど人探しをしようとしてたんだ」
「たまたま商品を搬入した道具屋に居ましてな。普段は違う所に居るらしいのですが。尋ねてみるのがいいですよ、多分ギルドか酒場あたりが彼の居場所じゃないかと思いますよ」
「助かるぜ」
「ははは、お役立てて嬉しいですよ」
みんなで笑いながらギルドを目指した。




