サン・テーレ
目に写り込んできた大きな城壁が目前に迫る。
それを見ながら僕は言う。
「やっと着いたね」
ローナも僕とやりとりする。
「人狼の里も立ち寄ったから少し長めの旅だったわね」
「って言っても、一度来てるからね」
「野盗のせいでドタバタしたから、今度は王都の見学を楽しみましょ」
その言葉にケインが釘を刺す。
「遊びに来たんじゃないだろ」
「そうだったね。勇者さんが居るんだよね。早く会ってみたいよ」
ケインは「情報収集からだが、まずやる事がある」と言うので聞いてみる。
「やる事?」
「ちょっとお呼ばれしててな、まあ中に入ってからだ」
門番の所には兵士とキークと犬が居た。
「よっ! 元気か」
キークは笑顔で答える。
「ケイン。おかげさまでな」
兵士もケインに声を掛ける。
「調停官殿か。この前の活躍、聞いたぞ。アルテアは良い人材をお持ちだ」
そんな言葉にケインは上機嫌で答える。
「ははは、まあな。あの時はバタバタしてたが今度はゆっくりさせてもらうぜ」
「サン・テーレの町を楽しんでいってくれ、あ、一応荷物を見させてくれ。軽くで構わん」
「おうよ」
みんな立ち止まり荷物検査。
ただ、僕らの活躍とケインの顔のおかげでほんとに簡単に見られただけだ。
道着袋も上からのぞき込むだけ。
そんなやりとりをしつつ、一番先に荷物の確認が終わったケインはキークに話しかける。「順調そうだな」
「ああ。ちょうど犬の訓練中だ」
「成果を見せてくれよ」
「成果があっちゃ困るだろう」
「そりゃそうだ。まずい物は何も持ってないからな」
ははは、と笑い合いながら立ち話。
犬たちは僕らを嗅ぎまわす。
ローナは「わあ、可愛いわね!」なんて言いながら撫でまわしたりした。
キークは言う。
「異常なし」
兵士も続ける。
「改めて、サン・テーレへようこそ」
笑顔の挨拶。
こうして僕らはサン・テーレ王都へ入るのだった。
王都の中を歩く僕ら。
僕はケインに聞く。
「ケイン、さっき言ってたお呼ばれって?」
「ああ、王様が会いたいとさ」
「王様!?」
びっくりする僕にケインは説明してくれる。
「いけない葉っぱを売りさばく奴らを懲らしめたろ? その件だ」
ローナはウキウキで言う。
「王様が会ってくれるって、ご褒美かしら?」
「もしかしたら貰えるかもな」
ケインのそんな言葉に僕は言う。
「そうなんだ、でも王様からなんてなんだか緊張しちゃうな」
「もっと喜べよ。いい物貰えるかもしれないだろ」
「良い物…切れ味のいい剣とかかな」
そんな言葉にローナも続ける。
「王宮のお菓子とかでもいいわ」
セリアも同意して言う。
「王妃様とお茶会とかでもいいわね~」
その言葉にケインは言う。
「女は好きだな、そういうの。でももっと違う物を頼んでみるのもいいんじゃないか」
僕は「違う物?」と聞くとケインは答える。
「情報だよ情報。見習い、お前勇者に会いたいんだろ」
僕の事を見習い、と言って聞いてくる。なので答える。
「そうだった、そうだね、王様に聞くのがいいよね」
「国の情報網を駆使して探してくれる筈だ」
ケインの提案に僕は希望を膨らませながら王宮へ赴くのだった。
大きな入り口を抜け、窓も大きな広間のような通路を進む。ガラスは綺麗に磨かれ、壁には太陽だろうか、そんな模様の紋様を施した明るいお城の中。
案内役の兵士さんに付いていくと、玉座の間へ通される。
王冠を被った王様は明るい衣装に身を包み、朗らかな笑顔を湛えていた。
そんな王様が言う。
「おお、そなたたちか。話は聞いている。ご苦労だったな」
全員で頭を下げる。そして隊長が言う。
「ヴァネッサです。謁見に感謝します」
「そちらのアルテアの調停官ケインの上司か?」
「訳あって同行していますが、こういう者です」
言いながら紋章を見せる。
「うむ、近くで見せてはくれまいか、どれどれ…うっ」
王様の顔が驚きに満ちる。
「まさか、天界よりの使者のお仲間か?」
隊長はいつも通り、冷静な表情のまま答える。
「一応天使です」
どよめく城内。それを制する隊長。
「旅の最中での立ち寄りです。あまり騒がれるのも苦手ですので」
王様は玉座から立ち上がりうやうやしく言う。
「そのような言葉遣いはやめてくだされ。神の従僕の顕現、歓迎いたします」
「お気になさらずに。位は大して高くありません。普通の天使です」
「謙遜を。人間界での揉め事の解決、痛み入りますぞ。普段の振る舞いで構いません」
「そこまで言うのなら。ただ、貴方も普段通り、一国の主としてで構わない」
「了承しまし、いや、心得た。して、我が王国には何用で?」
「勇者を探している」
王様は玉座に座り直し、お髭を触りつつ答える。
「おお、我が王国が誇る勇者か」
「この国に滞在していると」
「すぐに調べさせよう」
「手間を掛けさせる」
「構わん。しかし、立ち入った事を聞くが、勇者探しの目的を聞いてもよいか?」
「勇者との会合、それがうちの仲間の新たな経験となる」
「お仲間は、ケインと魔導士、それに少年と獣人の子か…? うむ、英雄との出会いは確かに貴重なものだろう。いや、わずかばかりか不安に駆られて聞いてしまった。魔族との衝突が近く、勇者に声を掛けるのかと」
「心配は無用だ。今回は」
「その言葉が聞けて安心だ。勇者の動向は調べておく。王国の観光でも楽しんでくれ。部屋が必要なら王宮で用意しようぞ」
王様はそう言うけど隊長は断る。
「宿を取る。気にする必要はない」
「費用ぐらいはもたせてくれ。あとで連絡するがいい。では、ゆっくりしてくれ」
再び立ち上がった王様と隊長は握手して謁見は終わった。




