踏み込み
サン・テーレの町中を進む僕ら。
僕は言う。
「ここがサン・テーレ王都かあ」
ケインが答える。
「散策はあとだ、面倒ごとを片付けるぞ」
キークが言う。
「こっちだ」
匂いを辿る方へ行くと、やや寂れた町の一角へ。
古い住居や倉庫が立ち並ぶ。
そのひとつ、一際大きな倉庫。
「あそこだ」
そう言うキークに隊長が指示を出す。
「お前はまだ怪我が癒えてない。ラルスとローナと一緒に兵士を呼べ」
「分かった」
ケインは僕に調停官の身分証と天使の紋章を投げつける。
「持ってけ、兵士長にある程度調べ事をしてると言ってある。薬をキメたロクデナシのアジトを見つけましたって伝えてこい」
「うん」
二手に分かれた僕らはいよいよ踏み込みをする事になった。
ヴァネッサ、ケイン、セリアの三人で倉庫の様子を伺う。
音を立てないように近づき、扉の前へ。
倉庫の大きな両開きのドアを開けようとするが、当然開かない。
ケインはヴァネッサに聞く。
「開きませんね。裏口を探しますか?」
「必要ない」
「じゃ、どうします?」
「こうする」
ヴァネッサは剣を抜き、一振り。
特大になった剣閃は扉を破壊する。
轟音と煙に紛れて中へ悠々と入る。
ケインはやれやれといった感じで「大胆な作戦ですね」と言いながらあとに着いていく。
倉庫内は木箱、机、雑多な物が並んでいる。
そこから出てくる男が五人。
「なんだ!?」「どうなってやがる!」
男たちはヴァネッサたちを見つけると叫ぶ。
「なにもんだてめら!」
ケインは言う。
「あ~あ~ガラの悪い連中だ」
ケインに対して更に奥から二人の男が出てくる。
一人は「何しにきやがった」と威嚇し、もう一人は鋭い目線を向けながら恫喝する。
「お前ら、どこのもんだ? 随分ひどい事をするじゃねえか。困るな。ただじゃ済まねえぞ」
一人目はやや色黒で毛深く、もう一人は頭目とおぼしき男性。
ヴァネッサはやりとりする。
「毛深い男、お前が牧場でキークから荷馬車を受け渡しをされて、同時に襲った奴か」
荷馬車を見つけ、ヴァネッサは荷馬車の荷物の袋を切った。
中からは麦が飛び出す。
野盗たちは「おい!」と叫ぶがヴァネッサは麦の中に手を突っ込み、中から更に別の袋を取り出した。
そしてそれを剣で少し切り口を作る。
中からは草が出てきた。
ヴァネッサは言う。
「麦以外にも取り扱いをしているようだな」
ケインも言う。
「まずい物を売ってるよな。国で禁止されてるブツ
だ」
頭目と思われる男は言う。
「誰だか知らねえが見られちゃしょうがねえ」
野盗たちは武器を構えてじりじりと近づいてくる。
そして「野郎ども、やっちまえ!」の怒声。
開戦を合図と共に応戦する。
ケインは銃を発砲し、相手は散開する。
置いてある木箱の陰に隠れたりしながら近寄ってくる。
ヴァネッサに近い一人は切り掛かるが腕が違いすぎるため、一撃をいなされ、ヴァネッサは柄を首元に叩き込み相手は昏倒する。
ケインの発砲で足止めをしつつ、ヴァネッサは言う。
「セリア、遠慮はいらん」
「了解! 今日は少し調子が悪いけど頑張るわ~!」
その言葉にケインが反応する。
「え? お前調子悪いの? 待て、やばいぞ」
だがお構いなしでセリアは言う。
「いくわよ!」
魔力を高め、呪文を解き放つ。
ケインは「俺は逃げるぞ」と言うがヴァネッサは「駄目だ」と制止する。
そしてセリアの魔法が完成する。
「アイスアロー!」
叫びと共に、倉庫の上空に無数の氷が現れる。
倉庫内からは見えないので、野盗はポカンとしてる。そして言う。
「なんだ? こけおどしか?」「何がアイスアローだ、ビビらせやがって」
反撃に出ようとする野盗だがケインは言う。
「来るぞ…」
次の瞬間、大きな氷の雨が降り注ぐ。
ドカンドカンと轟音を立てて倉庫の屋根には大穴が空く。
そして降り注ぐ氷。
野盗は叫ぶ。
「な、なんだこりゃ!」「どこがアローだ!」
それもその筈、降ってきたのは氷の矢、ではなく氷の弓。
かなり大きめでごん太の氷の弓は重さも10キログラムほどありそうだ。それが無数に降り注ぐ。
ドカンドカンバリンパリン!
着弾した氷の弓は床に大穴を開けつつ砕け散り、破片がかなりの速度で飛来する。
「ぎゃあああ」
野盗の一人は蜂の巣になり倒れる。
セリアは言う。
「う~ん、やっぱり調子悪いわ、ちゃんと矢をイメージしたんだけど~」
隠れる野盗は叫ぶ。
「くそ、でたらめだ!」
そう言いながら木箱の裏に隠れるが、氷の弓が木箱に直撃する。
ドカーンと音を立てて、木箱は紙切れのように粉砕され木片になる。
「あぎいい!」
木箱など盾にすらならず、隠れていた野盗の一人は足が曲がってはいけない方向に曲がっていた。
更に一人の野盗は「なんだこいつら!?」と叫んだところに氷が直撃。
「あう」
情けない声を出してその場に昏倒した。
残された二人、ヴァネッサと会話して対峙していた毛深い男と頭目は言う。
「カシラ、逃げよう!」
「くそっ、ありえねえ」
そう言いながら現場から逃走した。
「待て!」
ケインがそう叫ぶも、飛来する氷の弓を避けるのに精一杯だった。
僕とローナ、キークは兵士さんたちを呼んだ。
町中を走りながら僕は言う。
「こっちです!」
兵士長さんは答える。
「調停官の情報通りか」
紋章を見せた僕らはケインがある程度、話を通してくれていたのですぐに信じてもらえた。
先導する僕とローナが角を曲がると、毛深い男とそれにもう一人の男がこちらに走ってきた。
男たちは言う。
「どけ! ガキだろうと容赦しねえぞ」
僕とローナは立ち止まる。
ボスのような男が「攫って人質にするのもいいかもな」と言う。
ローナは「なんなのあんたたち!」と言うと男二人は武器の剣を構えた。
しかし…
角からぞろぞろとキークと兵士たちが来る。
野盗の二人は言う。
「な、なんだ!? なんで兵士が!」
「二人、いや四人か? やっちまうか」
だけど更にぞろぞろと…
兵士が八人、十人、十五人と。
最終的に二十人近くに膨れ上がった兵士たち。兵士長さんは言う。
「手配されてる野盗だな」
僕は兵士長さんに言う。
「この人たちが野盗なの?」
その問いにキークが答える。
「そうだ。やってくれたなよな、借りを返させてもらう」
野盗は劣勢に「ぐっ…」と唸る。
兵士さんたちは冷静な表情で言う。
「子供相手に容赦しない野盗か」「じゃあ情けも無用だな」
そんなやりとりをしてると、野盗の後方から声が。
隊長とケインとセリアだ。
ケインが言う。
「武器を捨てろ! じゃねーと今すぐもう一度アイスアローだ!」
セリアの「今度はイメージ頑張るわ~」の声。
すると野盗はとうとう観念したようで、武器を地面に投げ捨てた。
兵士たちに囲まれ、お縄につく野盗。
こうして事件は幕を閉じたのだった。




