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見習い勇者と落第魔王の大冒険  作者: 話太郎
第四章 嘘吐き少年
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聞き取り

 隊長が出した指示はこうだ。

「セリア、怪我人の様子を見ておけ。ローナは一緒に来い。住人から聞き込みを行う。ケインとラルスであのホラ吹き男から話を聞け」

 という事で僕とケインは昨日の「オオカミが出たぞ」の男の人を別室に呼び出す。

 ケインは言う。

「で、お前の見たオオカミの話だが」

「やっと信じてくれる気になったのか」

「それはまだだ。状況を聞こうじゃないか。昨日の時点ではイタズラだったんだろ。それが何で突然本気になったんだ」

「あれは昨日の事だよ。夜、イタズラの続きをしてたら何かが建物から出てきたような物音がしてそっちを見たんだ。そこには大きなオオカミが居て」

「まずどこの建物だよ」

「宿泊所の建物だよ。女将さんが持ってる」

「それって俺たちが泊まってる建物じゃないか。昨日の話だろ? また作り話か?」

「違うよ! ホントだ!」

 その言葉に僕が付け加える。

「ケイン、この人の言う事がホントか分からないけど、僕も少し気になる事が」

「あん?」

「ケインがシャワーを浴びてる最中の事だったんだ。この人がまた「オオカミが出たぞ」ってイタズラしてたんだけど、少し物音がしたように聞こえたんだ」

「どんな音だ?」

「そうだね、なんとなくだけど、物同士が軽くぶつかるような、なんとなくだけどドアを開けるか閉めるか、そんな風な音だよ」

「ドアの音?」

「それからしばらくして、この男の人の「うわ」とか驚くような声が聞こえてきたんだ。それから女将さんの声がしたから、僕はこの人が女将さんに捕まってイタズラの事を怒られたかと思ったんだけど」

 そこまで言いながらイタズラ好きの男の人に問いかける。

「貴方はあの時、何かを見たんじゃないかな」

「そ、そうだ、ちょうどその時だよ。イタズラしてて、そしたら不意に建物から出てきたのかでかいオオカミを見て、それからすぐに女将さんに見つかって怒られたんだ。あの時だよ」

 ケインは聞く。

「じゃ、なんでその時言わなかったんだよ」

「言ったよ! でも信じてくれなくて! それに説明しただろ! 怖くて家で震えてたんだ」

「一匹だったんだろ? そんなに怖がる事か?」

「デカかったんだ!」

「デカイ? さっきもそんな事言ってたな」

「そうだ! 人の背丈ぐらいあった」

「また大層なホラだな」

「しかも立ってやがった!」

「それじゃまるで人狼じゃないか」

「そうだ! ただのオオカミじゃない! 魔族だ!」

「今度は魔族まで持ち出しやがった…もうやってらんねーぞ」

 ケインが呆れ始めたので僕が代わりに聞く。

「ねえ、そのオオカミさん、がホントに居たとして、そのオオカミは何をしてたのかな」

 するとイタズラ好きな男は答える。

「分かんねんよ、何か荷馬車の辺りに居たけど」

「荷馬車? 建物から出てきたのを見たんじゃないの?」

「別に建物の扉から出てきたのを見たわけじゃない、そんな風に思えただけだ」

 ケインが怒る。

「おい、また言ってる事が変わってきてるぞ。話を作ってるだろ」

「そうじゃない! 冷静に思い返してるんだ、そうだ、アイツは荷馬車の辺りに居た」

 僕が詳しく聞いてみる。

「イタズラをしてたらオオカミが建物から出てきたんじゃなく、荷馬車の辺りに居たんだね?」

「そうだ、俺がオオカミが出たぞ、って言って回ってたら宿泊できる建物の辺りから亀背がして、そこの横の荷馬車を止めてある所にアイツが居たんだ」

 ケインも怒り口調だけど話を聞く姿勢には戻った。そして言う。

「オオカミはこの辺りを物色してたのか」

 僕はケインに聞く。

「人間を襲うんじゃなくて、荷馬車の荷物を狙ってたのかな? 例えば食料になる物を積んでて、それを目当てのオオカミが近づいてきた、とか」

「でもデカくて立ってたんだろ?」

「荷馬車の中身をのぞき込む時、ちょうど前足を荷馬車に乗せると、立ってる風に見えるかも」

「コイツの見間違えが、有りもしないオオカミ像を作った…か」

 イタズラ好きの人は言う。

「でも、オオカミの事は信じてくれたんだろ」

 ケインは言う。

「分かった分かった、一応検討はしてやる、調査は続行するから、お前は家で寝てろ、これだけ人が動いてるんだ、オオカミがホントに居たとしても襲いに来るとは思えんから安心しろ」

 こうして僕とケインの聞き取りは終わった。


 私、ローナとヴァリーは村人への聞き取りを行う。

 私は声を上げる。

「怪しい人を見た人は居ませんか?」

 少しざわついたあと、一人の村人が言う。

「そう言えば、ここに来る前、なんか見かけない男が居たな」

「見かけない男?」

「ああ、なんだか大柄で、冒険者かと思ったけどな、こんな朝に街道を行くから、よっぽど急いでたかと思ったけど」

「ヴァリー、そう言えば怪我した人はなんか待ち合わせしてたのよね」

「そうだ。この村で朝から人に会うと女将は言ってたな」

 私は証言者に詳しく聞く。

「それで、その冒険者みたいな人はどんな男でした?」

「遠目で見ただけだからな、なんだか浅黒いと言うか、毛深いように見えたな。人間にしちゃ毛むくじゃらと言うか」

「なんだか怪しいわね」

 村人たちは騒がしくなり始める。

「そいつが人を襲ったんじゃないか?」「冒険者じゃなくて野盗じゃないか?」

 口々に言い合う。

 私はざわつき始める村人になんだか少しだけ腰が引けてしまう。

 そんな中、ヴァリーは冷静さを取り戻させるように言う。

「村人に居なくなった人間などは居ないか?」

「ここに来てないのは居るけど作業中だよ」

「他に被害者が居ないなら、今必要なのは新たな被害者を出さないようにするだけだ。こちらは調査を行う。村人は単独での行動や作業をなるべく控えてくれ。村人同士で連絡を取り合い、危険や不審者の早期の情報を共有するようにしてほしい」

 村人は「分かった、伝達しておく」と返事をする。

 ヴァリーの的確な指示で不要な心配から解放されると同時に対策も立てた。さすがはヴァリーね。

 慌てそうになる村人を一瞬でまとめあげる手腕に私は見習わなきゃいけないと思いつつ、調査を続ける事にする。


 次に私とヴァリーは宿泊所の周りを確認する。

「あの怪我人はここから出て、襲われた街道まで出たのよね、待ち合わせの為に出たのかしら」

「痕跡があれば何か分かる筈だ」

「でも何か落ちてるようには」

 付近を確認するも、怪しい点はない。

「ヴァリー、何も無いわ、襲われた現場の方へ行く?」

 でもヴァリーは言う。

「確かに何もない」

「ええ、そうよね」

「荷馬車も無い」

 …

 あっ。

 私はヴァリーの言う事に唐突に気付いた。

 そうだ、荷馬車がない。この辺りに止めてたとか聞いたんだっけ。

 ヴァリーは言う。

「もう一度村人に確認するぞ」

 こうして私とヴァリーは聞き込みをするも、誰も荷馬車については見ておらず、荷馬車が消えた事が徐々に判明した。


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