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見習い勇者と落第魔王の大冒険  作者: 話太郎
第四章 嘘吐き少年
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目撃

 病室代わりになった宿泊部屋では一通りの治療ができた。

 セリアは言う。

「これで良し、落ち着くまで様子見でいいわ」

 僕は聞く。

「助かるの?」

「まあ、大丈夫でしょ。軽い傷とは言えないけど、発見が早かったしね。命に別状はないと思うわ」

「良かった…」

 ホッとした。

 ついさっきまで平和な旅の朝食の最中だったから、展開の落差に僕は少し動揺していた。

 でも命に関わる事では無いと聞いて、安心できた。

 だけど、周りの人、要するに村の人はそうではないみたいだ。

 セリアは「私はもう少しだけ様子を見てるから」と言うので僕らは食堂へ戻る。

 すると、村の人たちが全員集まって居た。

 そこからはやや緊張感が漂う展開へとなっていく。

 村人たちは口々に言う。

「何があった」「こんな事が起こるなんて」「あいつは何者だ」

 疑心暗鬼と恐怖が広まる。

 そんな中、一人の男が言う。

「オオカミだ」

 男はあのイタズラ好きの男だった。

「オオカミが出たんだ!」

 その言葉に村人は怒る。

「またか! いいかげんにしろ!」

「俺は見たんだ! 今度はホントだ! オオカミに襲われたんだ!」

「こいつ…」

 揉み合いになりそうな展開に他の村人が言う。ここからは村人同士の会話だ。

「でも、考えてみると、一理あるかも」

「どういう事だ」

「そいつの言う事を信じるわけじゃないが、人を襲うような事を起こす人間が居るほど、この村の人数は多くない。数件の牧場主が集まるだけだ。悪事はすぐに広まるし、怪しい奴は居ない。とすると、魔族か、はぐれた野生動物か」

「オオカミもありうるって事か」

 だけど、予想外、ではなく、なかば予想していたことだけど、心配していた事態になる。

「あとは…よそ者の仕業じゃないか」「例えば今泊まってる…」

 全員が僕らの方を見る。

 そうだよね。

 そういう風になるよね。

 僕はすぐに弁明の言葉を考える。

 今の僕に的確な言葉が出せるだろうか?

 疑念を持った村人を冷静にさせる説明ができるだろうか?

 でもそんな心配を破ったのは女将さんだった。

「ちょっとあんたら! 滅多な事を言うもんじゃないよ! この人たちがそんな事をするように見えるかい? 私には分かるよ! この人たちは無関係さね」

 でも村人は問い返す。

「そうは言うけど…根拠でもあるのか?」

「それは…昨日一日付き合って分かるんだ。話をして、村を案内して。接客業の

 経験だよ」

「あんたの事は誰より信頼してるけど、それでもなぁ」

「まだ言うのかい? あんたたち少し…」

 そこまで言った所でケインが割って入る。

「あ~すまん、俺たちからも弁明いいか?」

「…」

 村人はケインに目を向ける。

 でもケインは臆さず説明を始める。紋章を掲げながら。

「俺たちは怪しいもんじゃない、こういうもんだ」

「なんだ、その紋章?」

「アルテアの調停官だ。こいつらは仲間だ。隣の王国の公職に就いてる。だから犯罪なんかしない」

「調停官か…でも何しに来てるんだ」

「ちょっとサン・テーレ王国に用事があってな。仲間の身分も保証する」

「…」

「もし俺たちが犯罪を犯してたら変だろ? あの男を襲って、そんで食堂に呑気に朝飯だ。そんな犯罪者居ないだろ」

「まあ、言われてみれば」

「良ければこの件を調べさせてくれ、ちゃちゃっと解決するぜ」

「みんな、どうする?」

 顔を見合わせる村人たち。

 少しだけガヤガヤとしだす。

 そこで女将さんが言う。

「ちょうどいいじゃないか、隣国とは言え偉い人なんだろ? 任せてしまおうじゃないかい」

 ケインは答える。

「まあ、そこまで偉いわけじゃないが、揉め事には慣れてる」

 村人たちは疑いの目を向けるが、やがて静かになる。

 そして一人が言う。

「そこまで言うなら」

「よし、じゃあさっそく行動開始だ。聞き込みと状況確認するから協力頼むぜ」

 こうして僕らはいつもの作業に入りだす。


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