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見習い勇者と落第魔王の大冒険  作者: 話太郎
第四章 嘘吐き少年
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牧場

 夕飯までは牧場見学をする僕ら。

 青い芝生。

 高い空。

 高原のような済んだ空気、とまではいかないけど、すがすがしい風景。

 そんな中での見学。

 牛さん豚さん羊さん。

 そして厩舎の少しすえたニオイ。

 なんだか故郷の村を思い出す。

 郷愁を感じながらも穏やかな景色。

 そんな村の空気をいっぱい堪能して、僕らは過ごした。

 時間はすぐに夕方になり、僕らは晩御飯にお呼ばれする事になった。

 並べられた食事を見て僕は言う。

「夕食も豪勢だね」

 女将さんは笑顔だ。

「また褒めてもらえて嬉しいよ。お世辞でもね」

 その言葉にローナは返す。

「お世辞じゃないですよ。すごく美味しそうだわ」

「ふふ、それは腕を振るった甲斐があったね」

 ケインは「さっそく頂こうぜ」と急かす。

「いただきます」を言って夕飯を頂く。

「美味しいね」

「ホント。ゆっくり食事できるのはいいわよね。野宿もありうるかと思ってたし」

 セリアも「お外は寝るとき固いのがね~」などと言ってる。

 僕らが食べてる間も女将さんは追加の品を持ってきてくれた。

「はいよ、ホワイトシチューだ」

 セリアは礼を言いながらやりとりする。

「ありがとうごうざいます。ホントに」

「いいのよ。あ、それと、ちょっと連絡があるんだけどいいかい?」

「はい、なんでしょう」

「一人追加で泊める事になったんだ。アンタらの建物の一番手前の部屋に居るよ」

 ケインは「そうなのか」と相槌を返す。

 すると食堂に一人の男が入ってきた。

 中肉中背、やや伸びた髪。少しくたびれた服装。

 そして特徴的なのは…目。

 色とかは普通だ。でもなんだか、怖いと言うか、なんだか取っつきにくいような印象を受ける。その男性は食堂を一瞥すると僕らに目を止める。でも何か言うでもなく、そのまま扉の近くの席に着いた。

 女将さんはその人の所へ行く。

「今食事を持ってくるからね」

「すまん。軽いもので構わない」

「はいよ」

 奥へ引っ込む前に女将さんは僕らに言う。

「あの人が追加で泊まるお客さんだよ」

 僕は聞く。

「旅の人かな」

「う~ん、どうかねえ。荷馬車に乗ってきたようでさ。国境を越えてきたらしいんだけど」

 女将さんの情報にローナが返す。

「荷馬車? 行商人かしら。国境を越えてきたなら、私たちと同じ方から来たのよね」

 その言葉にケインが意見を言う。

「でも商売人にしては気のみ気ままみたいな恰好のような気がするぜ」

 女将さんは説明を続ける。

「あっちの人は明日早いみたいだから、宿泊部屋では静かにしてあげとくれ。なんでも朝からここで友達に会うみたいなんだ」

 ケインは尋ねる。

「朝から会うのに友達は泊まってないのか」

「色々事情はあるんだろうね」

 そう言いながら女将さんは奥へ消えていく。

 ケインは言う。

「ま、あまり詮索はしないでおくか」

 セリアも興味は牧場でのゆっくりした一晩の方が興味あるような事を言う。

「せっかくの牧場宿泊を堪能しましょう」

 そんな風に言ったのでみんな笑顔で賛成した。隊長以外は。

 隊長は普段通り冷静な表情で静かに食事をしていたけど、時折あの男の人の事を見ているように見えたのは僕の気のせいだろうか?

 そんな事を思いながら食事をした。

 その後、荷馬車の男性は軽く食事を済ませ、僕らより先に宿舎に戻って行った。


 夕飯を済ませ、宿舎に戻る僕ら。

 ケインは言う。

「さて、シャワーを浴びるか」

 ローナも隊長とセリアに聞いている。

「ヴァリー、セリア、先に浴びる?」

「私はあとでいいわ」

「最後で構わん」

 そんなやりとりをする。

 男女が分かれたシャワー室にケインとローナが入って行って、僕は部屋で荷物の整理をする事にした。

 陽は沈んだ部屋の中で明日の用意をしていると、昼間の声が聞こえてきた。

「オオカミ、オオカミが出たぞ~」

 あの人、こんな時間までやってるんだ…

 そんな風に少し呆れるとバタン! と音がした。

 なんだろう?

 宿舎の中から聞こえたような気がするけど…

 僕は荷物の整理をする手を止め、少しだけ様子を見るように動きを止める。

 すると外から女将さんの声が。

「アンタ! いいかげんにしときな!」

 あの音は女将さんが扉を開けた音だったのだろうか?

「お待ち! みんな寝る準備をする時間だよ! イタズラも大概にするんだよ!」

 なんだかそんな声が聞こえてきた。

 様子を察するに、ホントにいつもの事なんだと思う。

 僕は最初、外を確認した方がいいかな、なんて思ってたけどなんか別に必要ないな、そう思いはじめた。

 そして荷物の整理を続ける。

 少ししてからだろうか。

 それともちょっと時間が経ってからだろうか。

 そんな曖昧な時間経過のあと、外から声が聞こえる。

「うわ!」

 …。

 僕は少しだけ聞き耳を立てる。

 でも声はそれっきり聞こえなくなった。

 声はあのイタズラ好きの男の人の声だと思う。

 ついに女将さんに捕まって、雷でも落とされたのだろうか? そんな事を思う。

 でもそれきり声は聞こえなくなった。

 女将さんに捕まってる光景が目に浮かぶ。

 かなり怒られてそうだよね、そんな風に思ってると、ケインが部屋に入ってきた。

「ふう、シャワーだけだがいい湯だった。荷物の整理は終わったか?」

「うん、大体」

「お前も浴びてこい、気持ちいいぞ」

「じゃあ、行ってくるね」

 ケインとやりとりをしてると外で起こってる事は気にならなくなった。なのでタオルを持ってシャワー室へ行く。

 男性用のシャワーで汗を流す。

 今日一日は楽しかった。

 牧場での体験。

 僕の村でも動物は居るけど、やはり規模が違う。

 本物の酪農を見学できた体験は新鮮だった。

 楽しい思い出と共に気持ちよくシャワーを浴び、柔らかい布団で寝る。

 充実した旅の記憶と共に穏やかな睡眠に入れた僕だった。


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