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見習い勇者と落第魔王の大冒険  作者: 話太郎
第四章 嘘吐き少年
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嘘吐き少年

 小さい村はいくつかの家が集まる区画があり、そこの家は普通の大きさだった。

 その中の一軒の食堂に入る。

 席に着くと女将さんらしき人が注文を取りに来る。

「何にするかい?」

 僕らはメニューを見る。

「ケイン、何が良いかな?」

「酒、と行きたいところだがまだ昼だからな」

「とりあえず飲み物だよね」

 そう言うと女将さんが言ってくる。

「それならミルクだね」

 ケインは頭を掻きながら「牛乳かあ」と零すも女将さんは笑顔だ。

「平凡さに落胆してそうだけどお勧めだよ。ここのミルクはね」

 ローナは聞く。

「何か特別なのかしら」

「そりゃもう。牧場で搾りたての極上のミルクさ。飲まなきゃ損だよ」

 セリアは言う。

「牛乳は栄養価も高くて骨も丈夫になるわね」

「お、そっちのお姉さんは分かってるね。ささ、決めちまいな。特産ミルク、ご賞味あれ」

「そこまで言うなら」とケイン。

 こうして僕らは注文を決める。


 しばらくすると女将さんは牛乳の注がれたコップを五個と、もう一つ、コップより大きい入れ物を二つ持ってくる。

「さあ、飲んどくれ」

 言われて僕らは「いただきます」と返事し、いざ、牛乳へ。

 …

 僕は感想を言う前に感嘆の声を漏らす。

「あ、」

 ローナも「これは」と。

「どうだい?」

「美味しい!」

 ケインも満足げに言う。

「口当たりが柔らかいな」

 女将さんも「搾りたてだからね。こういう所でしか味わえないよ」と自慢げだ。

 ローナも「こういうのが飲めるのは牧場の人が羨ましいわ」と笑顔だ。

「朝に絞ったのだからね。ミルクの風味がたくさんだ」

「美味しいね」

「お褒めに預かり光栄だよ、それと、お客さんにサービスだ」

 そう言ってもう二つの大きな入れ物を置く。

 その中には、やはりミルクが。

 僕は聞く。

「えっと、これは」

「一つは同じ牛乳だよ。おかわりをサービスだ。そしてもう一つのこれもサービス、牛乳だけど、ちょっと違うものだよ。クセが強いけどね。普通の方を飲み終えたら少しづつ試してみな」

 僕はさっそく、コップを飲み干して違う物、という方を試してみる。

「…」

 ローナも「私も!」とコップに少量注ぐけど、やや顔が渋い。

「これは、独特ね…」

 ケインも「子供には早そうだな」と言うのでセリアが笑顔で感想を述べる。

「濃厚ね、ミルクの香りが広がるわ」

 隊長が答えを推察して言う。

「ヒツジか」

「ご名答。ヒツジから採れたものだよ」

 ローナは言う。

「ヒツジの牛乳?」

 ケインは呆れる。

「牛乳じゃない」

「あ、そうよね、なんて言えばいいのかしら」

 女将さんは答える。

「羊乳だよ」

 セリアは「味の濃さが特徴よね」と感想を言うと女将さんは説明してくれる。

「成分って言うか栄養が牛のより濃いのさ。その分体にもいいけど、少しアトを引くというかね」

 セリアは笑顔で返す。

「でも美味しいわ」

 ケインも「料理に使うとマイルドな味になりそうだな」と意見を言う。

 女将さんも嬉しそうに返す。

「ここら辺ではヒツジも育ててるしヒツジ飼いも居る。色々な動物を育ててるのさ。そしてその動物から作られる品物を目玉商品にしてるんさね。気に入ってくれると嬉しいよ。羊乳はチーズにしたりもするんだけどかなり独特だよ」

 僕は言う。

「お土産品に良さそうだね」

 ローナも言う。「普通のチーズとの食べ比べもいいわね」

 女将さんも「気が向いたら買っておくれよ」と満足げだ。

 このあと、軽食もお願いして僕らのお腹は満たされたのだった。


「ごちそうさまでした」

 挨拶をして店を出ようとする。

 女将さんは笑顔で手を振る。

 すると、やおら店の扉が開き、少し焦った風な男性が入ってきた。

「女将さん!」

 僕らは足を止める。

 女将さんの「どうしたんだい?」という問いかけに男性は答える。

「まただ、出たらしい」

 出た? なんだろう?

 僕はそう思うも、女将さんはため息をついた。そして言う。

「やれやれ」

 男性は「みんなに知らせるか?」と言うけど、女将さんは首を振った。

「いいよ、何もしなくて」

「でも…」

「何もありゃしないよ」

「…」

「さ、行った行った」

「分かったよ、でも念のため見回りはしとくよ」

 そう言いながら男性は出ていこうとする。

 すると、ちょうど開けた扉から外が見えて声がする。

「オオカミ、オオカミが出たぞ~」

 僕らは身構える。

 僕は女将さんに聞く。

「あの、オオカミが出たって」

「いいんだよ」

 女将さんは態度を変えない。

 ケインが聞く。

「自警団でも居るのか?」

「そうじゃないんだよ、あれはね、イタズラなんだ」

 ケインの「イタズラ?」という質問に女将さんは答える。

「そうさ、外で言いふらす奴が居るんだよ」

 しかし僕は言う。

「でも、念のため外を見てみます」

 僕がそう言うと、みんな付いてくる。

 扉の外へ出ると、街道の向かうから声がする。

「オオカミが、オオカミが出たぞ~」

 大きな声が聞こえるも、声の主はなんだか、様子が妙だ。

 大変な事態なのに、全力疾走ではない。

 そして、周囲の反応を確認するような素振り。

 僕らの方へ近づき、また叫ぶ。

「大変だぞ。オオカミが出たぞ~」

 …

 様子を見る僕らを確認すると、何も言わず通りすぎる。

 そしてまた叫ぶ。

「オオカミ、オオカミが出たぞ~」

 彼が遠ざかってから僕は言う。

「なんだか、ちょっと変だね」

 ローナも「なにあれ…」と呟く。

 ケインが言う。

「愉快犯って奴か」

 女将さんも食堂から出てきて情けなさそうに言う。

「冗談のつもりで始めた一回目でみんながあたふたしてね。それに味を占めたのさ」

 ケインは「いいのか?」と問うけど残念そうに答える。

「もちろん怒ったさ。でも聞かないんだよ」

 ローナは「しょうがない奴ね」と憤慨するけど女将さんは諦め顔だ。

「昔から困った奴でね。でもまあそういう訳だから、何も起こってないよ。騒がせて悪いね」

 僕も言う。

「まあ、何事も無いなら、それでいいよね」

 扉から中へ戻る。

 席に戻りつつケインは「単なるホラ吹きなら心配無用だな」と言うけど隊長が口を開く。

「ひとつ質問だが、この辺りに狼は実際に居るのか?」

 女将さんは隊長とやりとりする。

「昔は見かけたみたいだけど、最近はとんとね」

「人里には降りて来なくなったのか」

「森へ入ればあるいは居るかもしれないけどね。村の北の森には狼の伝説なんかもあったみたいだけど」

「伝説?」

「古くからの狼の村があるとかいうね。まあ言い伝えの類さ。実際に確認したわけでもないよ」

 ケインは言う。

「羊が居るから、戒めで伝えられたんじゃないか」

「ははは、そうかもしれないね」

「…」

 隊長は無言だ。

 いつも通り、何か考えてるのかな。

 セリアは笑顔になる。

「羊が居るんじゃ狼が近くに居たら気が気じゃないけど、遠くで生息してるならとりあえずは安心よね」

 女将さんは答える。

「そうだね、いい所だよ。だからどうだい? ここで一泊してくのは」

 意外な提案に僕らは少し驚く。

 ケインが聞いてやりとりする。

「宿泊もやってるのか? 俺たちはサン・テーレを目指してるんだが」

「ここからだと急げば今日中に着けなくはないけど、かなり早足で行かないとね。しかも着くのは夜遅くだ。そこから向こうで宿探しだろ?」

「行程的にキツイな」

「夜の行軍だと野盗とかも怖いしね」

「ここらで出るのか?」

「最近は大人しいみたいだけどね。なんだか商売を替えたような話は聞くけど、少し前は夜の旅はしないに越した事はないよ」

「そうなのか。んで、部屋はこの建物の二階か?」

「隣に建物があるんだけど貸したりしてるんだ。牧場の住み込みの手伝いとか流しの羊飼いとかにね。今は誰も居ないから旅人に泊まってもらったりしてるのさ」

「流しの羊飼い、そんなのも居るのか」

「牛や豚は定住するし、羊も飼ってるけど、遊牧の羊飼いが立ち寄ったりもするんだ」

「情報も得られるって訳か」

「そう。付近の魔物の情報も聞ける」

 セリアも発言する。

「地域の情報網って訳ね」

「これもこの辺りの地域の知恵さね。だから、狼がホントに出たかどうかもすぐ分かるのさ」

 僕は言う。

「悪い噂も流せないね」

「良い事だろ?」

 ローナは面白そうに言う。

「イタズラも出来ないわね」

「だからみんな良い子に育つんだよ、と言いたいところだけど、騒ぎのあとじゃね」

 ケインは女将さんのセリフに答える。

「ははは、平和なトコでも悪ガキは育つさ。俺も昔はやんちゃだった」

 するとローナは相槌を打つ。

「ケインが言うと説得力あるわよね」

「んだとおてんばお姫様め。フォローする所だぞ」

「はいはい、ケインも尊敬してるわよ」

 ははは…

 みんなで笑った。

 僕らは女将さんのお勧め通り、一泊を申し出る。

「そうかい、ありがとね。ゆっくりしていきな。部屋を案内するから付いてきとくれ」

 食堂を出て隣の建物へ。

 木造の建物は中にいくつもドアがあり、住み込みの人が借りるのもあってか、二人部屋がいくつか並ぶ。

 女将さんは言う。

「五人だから三部屋使いな。奥の方が静かだよ」

 ケインは言う。

「助かるよ」

「お手洗いとシャワーは突き当りを右だ」

「そんじゃ荷物を置くか」

「晩ご飯はまた呼びに来るよ。それまで牧場の見学でもして行きな」

 ローナは喜ぶ。

「ありがとう、おばさん!」

「牧場はウチの人がやってるから言っとくよ」

 こうして僕らは一晩の宿を確保したのだった。


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