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けん制

 僕とケインは大使が休んでいる診療所で隊長とローナと落ち合う。

 ケインが言う。

「戻りました。大使は?」

 隊長は「まだ休んでいる」と答える。

 そしてローナが言う。

「大使の手の肌荒れは関係なかったわよ」

 ケインは驚きながら「そうなのか?」と聞くのでローナは僕らに説明してくれる。

「毒物の出すカエルに偶然触れただけ」

 僕も聞いてみる。

「体に影響は無いんだ」

 隊長は言う。

「毒性も弱く大使の体調不良の原因ではない。セリアが引き続き体調不良の原因を探している」

 ローナは「毒じゃなかったのは良い事だけど調査は進まないのよね」と少し気を落としていた。

 隊長は僕とケインに聞く。

「そっちは何か出たか?」

 ケインは調べた事の報告をする。

「大使の人間関係には問題なさそうです。ただ、少し気になる点が」

 隊長は無言で先を促す。

 ケインは資料を広げ言う。

「様々な種族に顔が効くので大使に選ばれたようですが親族に魔族と関わりがあるのが居ます。大使の妹がこことは違う地域の蛇族を商売相手にしています。そこから魔族と関わりがあるという噂が出ました」

 ローナは聞く。

「他にも魔族と関わりがあるのかしら」

「それはまだ分からないが、親族が魔族と付き合いがあっても、大使自身の公平性には影響ないと証言があります」

 隊長は言う。

「だが噂を聞いた奴がどう思うかは分からない。その話はどこまで広がっている?」

「少なくともカエルと蛇の住処の中間にある魔族の村では少なからず知られているようでした」

 ローナは言う。

「スネーク連合の人たちとカエル王国の人たちはこの事を知ってたのかしら」

 その疑問にケインは答える。

「確認した方が良さそうだな」

 隊長は指示を出す。

「ケイン、ラルスとカエル王国でもう一度話を聞け」

 ケインは「了解です、隊長は?」と問うと「ローナとラミアたちを問い詰める」と返した。

 こうして僕たちは再聴取へと向かうのだった。


 カエル王国への道筋。

 森を抜けながら言う。

「ローナたちは大丈夫かな」

 ケインは笑顔で答える。

「隊長の腕ならどうとでもなる。ローナも魔界のお姫様だ。おいそれと手を出されたりはしないだろ」

「…そうか、そうだね」

「こっちもカエルローズ王女の方はともかく、カエルロッド王子の方は話が通じる相手だ」

「うん、言われてみればそうだね」

「つまりベストな配置だ」

「そう考えると安心できるね」

「そろそろ大詰めだぞ。気合入れて聞き取りするぞ」

 ケインの言葉に僕は気を引き締めてこれからの仕事に向かう事にする。

 握る手の平の拳は少しだけ力んでしまうような気持だったけど、事件解決に向けて歩みを進めた。

 カエル王国で謁見する僕ら。

 ケインは王子へ伝える。

「ちょっといいか? 聞きたい事がある」

「はい、なんでしょう?」

「その前に、俺たちだけにしてほしい」

 そんな言葉にカエルローズ王女はやや憤慨する。

「私に内緒でする話なのかしら!」

 ケインは丁寧な態度に変わって伝える。

「すみません王女、少し込み入った話なので」

「ふん! 王女である私に内緒にしなければいけないなんて、どういう了見なのかしら」

「まだ調査中ですので、王女を(わずら)わせるのも申し訳ない話題なのですよ」

「どうにも怪しいわ、そんな事を言って、貴方たちだけになったらロッドに危害を加えるつもりじゃないでしょうね? 貴方たち人間は油断できない種族よ。大体昔から…」

 そこまで言うとカエルロッド王子は(たしな)める。

「ローズ、この方たちは信用できる人たちだよ」

「どうしてそんな事が!?」

「危害を加えるつもりなら夜にこの城にでも忍び込むだろう。こんな昼間に堂々と乗り込んで危害を加えても、逃げる事は出来ないよ。戦えるカエルたちもたくさん居るんだから」

 そこまで言うとケインが告げる。

「そういう事です、王女。何卒、調査にご協力を」

 僕も言う。

「事件を解決したいだけです。悪い事はしません。怪我をしたり、させたりするような事が起きないようにするのが目的なんです。分かってもらえると、助かります」

「…」

 王女は黙ってしまう。

 すると王子は言う。

「ローズ、大丈夫だから」

 そして続けて僕らに言う。

「私の部屋で話しましょう」

 こうして僕らは王子の自室へと案内された。


 豪華な置物に立派な寝台。

 大きな窓からは森が見える。

 明るい部屋は整理され、拡張の高さは王子の自室として申し分のない部屋だった。

 そんな室内に通された僕らはさっそく本題に入る。


 ケインは単刀直入に切り込んだ。

「大使の妹がこの辺りとは離れた所ではあるけどラミアと商売してたのを知ってますか?」

 すると王子は驚く。

「え?」

 ケインは頭でも掻きそうな雰囲気で話を進める。

「その様子だと知らないんですね?」

「初耳です」

「王子が知らないと言う事は城の中でも知ってる奴は居ないですね」

「そうですね、知ってたら私に伝えるはずです。蛇たちとの協議を左右する大使の情報ですしね…」

「知ってたら色々調査にも関係するかと思ったんですけどね」

「…」

「ショックなのは分かります。でも大使がスネーク連合の味方とかいう話でないんです」

「どういう事ですか?」

 今度は僕が答える。

「大使の公平性は他の魔族たちも認めています。親族が蛇と商売しているという理由であちらに肩入れする事はないんです」

「そうなんですか」

 今度はケインが聞いてやりとりする。

「大使に変な疑いを掛けてないかの確認なんです」

「ようするに、大使の親族が蛇と懇意だと聞いて、無用な敵意を抱いていないか、という話ですか」

「そうです」

「それならば心配は要らないと思います。さっきも申し上げた通り、私が知らない情報が出回っているとは考えづらいですから」

「であれば安心です」

「一応、そういう噂が出回ったら私の方から言います」

 僕は王子に進言する。

「カエル族だけを疑ってる訳じゃないんです。僕の仲間が蛇族にも早まった選択をしないように説明しに行ってます」

「ははは、そこは信頼してるよ。君たちも大使同様、損得でどちらかに肩入れする人間には見えないからね」

 そんな言葉を掛けて貰った僕は嬉しくて少しだけ声を大きくする。

「期待に応えられるように頑張ります」

 笑顔で返してくれる王子にケインは言う。

「もう少し調査が進めばまた報告ができるでしょう。それまでスネーク連合と衝突が起きないよう取り仕切る事をお願いします」

「分かった。先走る者が出ないよう、指示を出しておくよ」

 こうして僕らは王子との内密の会談を終えた。



 私、ローナとヴァリーは再び蛇たちの巣穴に赴いた。

 大使の親族について、ラルスたちがカエルたちに聞いているように、私たちは確認作業をする。

 ラミアは私に問いかけた。

「また来たのね。何か質問かしら?」

「大使の親族に蛇族たちとの付き合いがある人が居るの。その事は知ってる?」

「いいえ、聞いた事無いわ」

「本当?」

「本当よ。でも嬉しい話じゃない。大使がそんな人ならこっちの味方になってくれそうだし」

「そうじゃないわ。大使は公平な人なの。その事をきちんと踏まえて問題に対処してほしいの」

「そんな話をわざわざしに来たの?」

「待って。この話には続きがあるの」 

 私とヴァリーは今まで調べた事を説明する。

 ヴァリーがラミアに言う。

「この事はカエル族にも伝えてある。そして大使を蛇側の人間だと誤解して攻め入る事はまだ自重しておけ、とな」

 ラミアは理解したように言う。

「ふ~ん。まだ戦いに発展させるような事は我慢しろ、って事か」

「お願い」

 そう言うとメデューサの頭目と思しき女性が愚痴を言う。

「蛇と付き合いがあるなら肩を持ってくれてもいいじゃない…やっぱり人間なんて…」

 けれどラミアの長のような女性が言う。

「よしなよ」

「…」

 諭されたメデューサはやや不満げだったけど私達に言う。

「事情は分かったけれど、あまり長い時間は掛けられないわよ」

「結果は出すわ、だから待ってて」

「やれやれ、小さなお姫様のお願いか、良い報告、寄越してね」

 こうして私とヴァリーはスネーク連合との話を終えた。


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