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新たな仲間

 町の酒場でご飯を食べる僕ら。

 アルテアから少し離れたこの町は規模こそ小さいものの、人の往来はそこそこある。

「美味しいね」

 そう言いながらご飯を口に運ぶ。

 でもケインは言う。

「アルテアから結構歩いたからな。と言っても、味付けはアルテアと変わらんだろ。まだアルテア地方の中だ」

 そんな言葉にローナは「そうなの?」と聞く。

 ケインは得意げに語り出す。

「ここいら一体でよく見る料理だろ。勇者が居るって話の次の王国に近くなればもっとあっちの特色が出る」

 そんなセリフにローナが相槌を返しケインとやりとりする。

「ふ~んそうなんだ」

「地域ごとの食材や調味料なんかあるからな」

「人間の料理に対する情熱はすごいわよね」

「お前んとこの料理が雑なんじゃないのか? あっちの住人って肉の丸焼きとか食ってんだろ?」

「さすがにそこまでじゃないわよ。ウチじゃ料理人が作る贅沢なお料理をたくさん食べたわ」

「そういやお姫様だったなお前」

「そうよ。いつか私のウチのご飯をご馳走してあげるわ、ね? ラルス」

「なんで俺じゃないんだよ…」

 そんな会話をする二人を見ながら僕は言う。

「僕はアルテアやファイアフィルド以外だとここら辺の物しか食べた事ないや」

 ケインは言う。

「目的地はまだまだ遠いってこった。食ったら気張って進むぞ」

「そうだね、頑張って先を目指さないとね」

 そんな言葉を言った。

 僕らは楽しく、そして隊長はいつも通り無言で食事をした。


 ランチを終え、再び冒険を再開しようと町を出るべく、歩みを始めた時だった。

 町の入り口でこちらへ向かってくる一つの馬車。

 かなりのスピードが出てる。

 入口に居た人が僕らに声を掛ける。

「どいてどいて」

 脇に退避する僕らの傍らを馬車が猛スピードで駆け抜ける。

 ドドドドド…

 土煙を上げながら進入する馬車。

 ケインが驚きながら言う。

「なんだなんだ? どうしたんだ」

 僕も「すごい急いでたね」と相槌を打つ。

 すると、入り口で僕らの動きを制止した町の人が言う。

「悪いね、急患みたいなんだ」

 そう言われてローナが聞いてみる。

「誰か怪我をしたの?」

「なんでも病気みたいな人が出たみたいでね。ちょっと重要な仕事をしてる人みたいなんだけど旅の途中で、具合もかなり悪いみたいだからここへ運ばれたみたいなんだ」

 ローナも「そうなんだ」と説明を聞いて頷く。

 僕は隊長に聞いてみる。

「隊長、ちょっと様子を見に行った方がいいかな」

「旅を急ぐ理由はない」

「じゃあ」

 隊長は無言で、小さく「いいだろう」と頷く。

 ケインも渋々だけど同意してくれるようで「しゃーない、行くか」と言った。

 こうして僕らは次の目的地への旅を一時見送り、体調を崩した人の様子を見に行く事にした。


 僕らは馬車が止まった所へ行く。

 その建物を見ながら僕は言う。

「ここは…」

 ケインもその場所を見て言う。

「診療所だな」

「あの馬車は怪我人を運んでたのかな?」

 そう言いながら僕らは建物の中へ入る。

「すみません、今運ばれてきた人についてお話を聞きたいんですけど」

 すると、中で看護をする人、若い女性は答えてくれる。

「関係者の方ですか?」

「こういうもんだ」

 言いながら紋章を提示する。すると女性は言う。

「ええと、す、すみません、旅の方ですか? その紋章は…」

 ケインは素性を説明しだす。

「まあしがない天界の使者とお付き合いのある調停官です」

 すると看護師は答える。

「今、治療を受けているのは高名な貴族の方で…」

 ローナは聞く。

「そんな人がなんだって突然」

「急病のようで」

 ケインは言う。

「中を確認してもいいか?」

「今は治療を始める所ですので」

 そこまで言うと中から人が出てきた。

 初老になろうかというその男性はしっかりした服装にその人が言われている貴族の人なのかと一瞬思ったけどどうやら違うようだ。貴族本人というよりは、お付の人のように見える。

 ケインは紋章を提示して言う。

「すまない、アルテアの調停官だ。少しいいか? 中で貴族の人間が治療を受けていると聞いた。何かあったのか? 良ければ力になりたい」

 するとお付の人は答える。

「わ、私はウォートンと申します、ここで見ていただく事になったフォルトナー大使のお付きの者です」

「フォルトナー大使?」

「ここではなんですので…」

 医院の中庭へ移動して話をする。

 お付きの人は語り始める。

「実は、この辺りで魔族同士の衝突があるのです」

 僕は驚いて聞いてみる。

「え、魔族?」

 ローナも確認するようにお付の人へ質問する。

「どの種族かしら? この辺でそんなに強力な魔族って居たかしら」

「カエル王国とスネーク連合です」

 隊長は「魔族同士のトラブルに介入か」と言う。

 深刻な問題なのかな、と僕は心配になる。でもお付の人は説明をしてくれる。

「この辺りでは話は通っているので、トラブルと言ってもその辺りは平気です。双方の魔族にも面通しはしており周知されています」

 ケインは聞いてみる。

「町の人も知ってるって訳か」

「人間たちは関知しない方向だったんですが、大々的な衝突をされ被害がこちらに飛んでこないとも限りません。なので仲裁をする手筈になりました」

 ケインは続けて質問する。

「なぜ魔族のトラブルに人間が」

「実は大使には亜人の血が流れているのです。そして魔族にとって中立だからです。更にこの辺りの町は魔族と積極的に対立も無く、どちらかに肩入れしないからです。それに大使は親族も含めて交友関係で亜人と少なからず交流を持ってるので適任だと言う事で」

「そういう理由なら納得だな」

 僕も「人間でも魔族の力に成れるなら協力した方がいいよね」と言った。

 ケインは続ける。

「しかし、実際容体はどうなんだ?」

「それは、まだなんとも」

「ここのお医者さんたち次第か…隊長、どうします?」

 その質問に隊長は答える。

「それについては解決策がある」

 意外な返答にケインは質問を続ける。

「解決策? どういう事ですか」

「適任者を手配してある」

「適任者? なぜ事前にそんな手配が出来たんです?」

「旅の中で魔法が使える奴が必要だ。だから仲間を呼ぶ事にした。その人物なら大使の体調も見れるだろう」

「魔法が使えるって、まさか…」

 ケインがそう言う。

 いささか驚いているようで僕はなんの事だか分からなかった。

 でもすぐにどういう事なのか判明する。

 看護師の人が外から来て、「すみません、調停官と紋章の持ち主の方に会いたいと言う方が来てます」と言った。



 そうして女性が来た。

 セミロングに毛先は少しカールかウェーブの髪型。身長は高い。隊長と同じぐらいだろうか。ややおっとりとした印象を受ける柔らかい表情の目元。笑顔で居るので感じは良いが、黙っていると幼いと言うよりは妖艶な感じのする人だ。服装はローブのような服装とマント。

 そして大きい胸。

 この人が隊長の言っていた仲間、魔法使いだろうという想像は簡単だった。

 その人は言う。

「ヴァネッサ! 久しぶり!」

 言いながらパァッと笑顔になり駆け寄りハグする。

 隊長は黙ったままだ。

 更にすかさずケインを見つけ言う。

「ケインも! 居たのね!」

 今度はそっちに駆け寄り腕を取ると握手しながらブンブンと手を振る。

 かなり感情を素直に表現するような人だった。

 その人はケインもハグしようとしてるがケインは拒否を表明するように抵抗してる。

 そして言う。

「久しぶりだな、分かった、分かったから抱き着こうとするな。くそ、意外と力が強え」

 その女性は隊長に負けず劣らずかなりの美人と表現してもいいような大分大人びた雰囲気なのにころころとよく笑う。

「いいじゃない~。さみしかった。また会えて嬉しいわ」

「俺も嬉しい」

「じゃあハグ」

「だからやめろ…」

 そんなやりとりをしてる。

 ひとしきり再会を喜んだあと、その女性は僕らに気付いた。

 …。

 女性は零すように言う。

「あら?」

 僕らをまじましと見つめ更に続ける。

「あらあらあら?」

 笑顔は更に満面の笑顔に。

「まあ~可愛い!」

 隊長は言う。

「仲間だ」

「そうなの!?」

 言いながら間髪入れず両手で僕とローナをギューッと抱きしめて言う。

「よろしく! 可愛い冒険者くんとお嬢さん! お姉さん嬉しい!」

 かなりの強引なハグに僕とローナは戸惑いながら言う。

「は、はじめまして」

「ちょ…苦しい! なんなの? なんだって言うの?」

 やや小さい抗議をするが相手はおかまいなしだ。

「私はセリア! よろしく!」

「僕はラルスです…」

「ロ、ローナよ」

「可愛い名前ね! 君たちはもう仲間! いや、私の子供でもいいわ! お姉さん頑張るから仲良くしてね!」

「は、はい…」

「苦しい…分かったから離して…」

 僕らが青色吐息になりそうだったのでケインが割って入ってくれる。

「おい、分かったからもういいだろ」

「え~…もっとお話ししたいのに」

「お話はあとだ」

「ハグとちゅ~とナデナデとよしよしもしたいのに」

 隊長は言う。

「あとでゆっくりさせてやる」

 僕とローナは隊長に「そこは止めてくれないかな…」「ヴァリーの薄情者」と抗議するけどもちろん流されてしまう。

 ケインは状況の説明をする。

「今奥に居るフォルトナー大使の容態を見てる。大使は魔族同士の衝突の仲裁役だ」

 …。

 ひとしきり説明をする。

 するとセリアという女性は言う。

「分かったわ。じゃあその人を診ればいいのね」

 隊長は「頼む」とだけ短く答えるので僕は聞いてみる。

「ええと、セリアさん…だっけ。治療も出来るの?」

「もちろん!」

 返答に続いてケインが言う。

「こいつは白魔法から黒魔法、果ては錬金術や召喚魔法まで使える魔法使いだ」

 セリアという人は言う。

「魔法使いじゃないわよ。賢者。賢者セリア。それか大魔法使い」

「分かった分かった」

「貴方たちが怪我しても安心してね。ヴァネッサの言う事を聞いていれば大丈夫だと思うけど」

 彼女の言い分に僕は「うん」と短く答えた。

 隊長はセリアという人に言う。

「大使を見てやってくれ。あまり余裕のある状態とは思えん」

「そうだったわね、じゃあさっそく」

 そう言いながら彼女は診察室へ。そして言う。

「とにかく少し診てみるわ」

 言いながら看護師のところへ。

「ごめんなさい、私は旅の賢者、回復魔法も使えます、ぜひ、先ほどの大使のお体を」

 …。

「診察の許可が出たわ。じゃあ、診てくるわね」

 …。

 それから少しして。

 診察室から出てきたセリアは言う。

「とりあえず落ち着いたわ。でも結構危なかったかな。まだ話せる状態じゃないわ」 

 ケインは「そうか、でも命は助かったんだよな。さすが賢者様」と彼女を褒める。

 だけどセリアはやや難しい顔をして言う。

「でもね、ちょっと気になる点が」

「何か出たのか」

「指先に爛れ(ただれ)があるの」

 ケインは「爛れ?」と問いただす。

「どうやら何かの毒物に触れたんだと思う」

 僕は聞いてみる。

「毒?」

「そう。恐らく即効性の物かしらね」

 ローナも聞いてみる。

「それが大使の体調不良の原因なの?」

「まだ分からないけど可能性はあるかも」

 ケインは言う。

「毒を盛られたんなら病気じゃなく事件だな」

 隊長はまとめるように言う。

「まだ確証はない。慎重に調査を進めるぞ。セリア、お前は大使に付いていろ。毒物の特定を急げ」

 そう指示して僕らには別の指示を。

「カエルとヘビの双方の居場所を調べるぞ。事情を聞かない事には始まらん」

 そう言うとお付きのウォートンさんが言う。

「大使の体調不良による代理と調査の依頼書をしたためます。それを見せれば大使の代理人としてカエルとスネーク連合に話を聞ける筈です」

 こうして僕らは準備を整え魔族同士の争いの調査へと赴くのだった。


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