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見習い勇者と落第魔王の大冒険  作者: 話太郎
出会いと旅立ち
17/69

今回のエピローグ

 あれからすぐに博士は救出された。

 監禁場所に居たコルソー大臣の息の掛かった兵士は6人。

 グスタフ兵長以下、精鋭の救出部隊30人と工兵や魔法使いで構成される支援部隊20人。

 戦闘にすらならずに降伏、博士は無事に戻った。

 王様は「いくら感謝しても足りん。なんなりと申せ。褒美は弾もうぞ」と言ったけど隊長は言う。

「必要ない。ケイン、報告書を作成して必要経費だけ請求しろ」

 ケインは「もったいない」と心底残念そうに嘆いたけど隊長の考えは変わらないようだった。


 宴の席で博士は言う。

「はははっ!これはスゴイ!天の使いにアルテアの調停官!それに小さな冒険者の二人。感謝だ!私を救ってくれてありがとう!鮮やかだったと聞いている。是非とも話を聞かせてくれ!新しい研究のヒントになるかもしれん!はははは!」

 両手で僕とローナをギューッと抱きしめ豪快に笑うジルキン博士。

 とても特徴的な博士だけど本当に助かって良かったと思った。


 結局、博士の発明は上手く行かない事をケインから知らされる僕とローナ。

「コストが見合わないんだとよ。純度の高い魔石に高い製錬施設、イフリートや精霊への謝礼…理論的には可能だが庶民が使えるように安くて大量生産するにはあと何十年も必要だとさ」

「じゃあ工房の移築は…」

「結局必要」

 その言葉にローナが言う。

「皮肉よね。余計な事しなくても大臣の計画通りに行ってたなんて」

「悪事なんてそんなもんさ」

 ケインは笑いながら返した。


 宴が終わり、僕らは部屋で休む。

 隊長とケイン、それに僕とローナに分かれた部屋だ。

 ケインが来て僕らを呼ぶ。

「隊長が呼んでるぞ」

 ローナと二人で隊長の所へ行った。ケインは一人でどこかへ出ていく。

 部屋の窓は開けられ夜風が心地よく流れる。

 そんな部屋で静かに佇み、窓の外を眺める隊長はそれだけで絵になるぐらい綺麗だった。


「隊長、何かお話があるのかな」

 そう聞く僕に隊長は向き直り言う。表情はいつもの冷たいままだ。

「まずは、今回はよくやった」

 その言葉に驚く。

 隊長は表情一つ変えずに僕らを迎え入れ、声を掛けたのでそんな言葉を掛けて貰えるとは思っていなかったから。

 ローナも同じようでただ話を聞いている。

「色々苦労もあったと思うが何とか乗り切ったな」

 そう語り掛けてくる。

「どうだ?初めての冒険は?」

「怖い事もあったけど、隊長とケインが居たから平気だったよ」

 ローナも「私も。でも少し意外だったわ」と返す。

 隊長は「冒険は思ってた物とは違ったか?」と聞く。

 その問いにローナが答える。

「うん…なんだか少しね」

「僕も…旅に出る前はもっと単純だと思ってた」

 静かに僕らの言葉に耳を傾ける隊長。

 僕は言う。

「最初は、悪い人や悪い魔族が居て、それをやっつければよくて…」

 ローナも「自分と同じ考えの人や種族の味方をしてれば解決すると思ってた」と言う。

 僕は続ける。

「でもそんな簡単な冒険なんてある筈は無くて…」

 そう言う僕に隊長は優しく、けれど厳しさも交えて言う。

「剣で切り伏せ、魔法で吹き飛ばすだけで成れるほど勇者や魔王は簡単じゃない」

 そう、僕らに諭すように続ける。

「これからも、問題や困難があるだろう。工夫し、足りない物を補い、乗り越える」

「うん」

「そうして成長していくんだ」

 ローナも「みんなでやれば、きっと出来るわ」と返す。

 僕は言う。

「まだまだ学ぶことはたくさんあるよね。隊長、よろしくお願いします」

「その意気だ」

 そう言ってくれた。そこで聞いてみる。


「ひとつ…いいかな、隊長はいつ、真相に気付いたのかな?」

 その問いに隊長は答えてくれる。

「最初の違和感はファイアフィルド王都に着く前のフィルドイーストの町だ」

 …

 それってかなり最初の方じゃないかな?なんて思うけど隊長は続ける。

「高名な研究員の誘拐事件があった筈なのに、町は気にせず、何かの準備をして人が増えそうだ、何かを町に作るのかと喜んでいた」

 僕らは違和感なんて感じなかったけど、隊長は違うものを観察して、感じていたんだ…

「それからは事実の積み上げだ。お前が王都で「煙い」と言いながら咳きこんだ事、それでも王都の工房は増え続ける事、博士が消えたのに身代金の要求も無い事、その博士は精霊の力を利用した魔道具を作っていた事、それらは大臣に把握されていた事…全て関連付けて考えれば真相は見えてくる。あとは裏付けと証拠固めだ」

「じゃあ隊長は…」

「当初より国が関わっていそうな感じはしていた。短絡的な犯罪では無く計画性のあるものだとな」

 隊長は最後にまとめる。

「事実を見て、感覚を信じ、経験から導き出す。そうやって、解決をするんだ」

 …

 …すごいや。

 僕はケインの言葉を思い出す。

 ”あの人は伊達に隊長と呼ばれてない。あらゆる面で畏怖と尊敬を込めて隊長、とそう言われるんだ。お前らは知らないだろうが、あの人の凄さの本質を事件解決後にきっと分かるはずだ。そして自分が成長するために何を学ぶべきなのかもな”

 僕はその言葉の意味が今分かった。

 そして尊敬し、同時に畏怖する。

 ”弟子にしてください”

 僕はアルテアの教会で隊長にそう言った。…言ってしまった。

 僕は、とんでもない人を目標にしてしまったのかもしれない。

 その隊長が僕らに言う。


「お前たちに、言っておきたい事がある」

 僕とローナは静かに聞く。

「今回、博士も大臣も、求めたのは豊かさだ。だが片方は欲に目が眩み、望まぬ結果になった」

 静かに話を聞く僕ら。

「こういう事は力や強さを求める時にも起こる」

 …。

「力を得る時、新しい物を生み出す時、人は信念が揺らぎ過ちを犯す時がある。魔族ですら。初心を忘れれば、待っているのは堕落と破滅だ。お前たちにはこれからも苦難が待ち受けてるだろう。それでも付いてこられるか?」

 僕は言う。

「頑張るよ。それが父さんに追いつく目標だから」

「私も。立派な魔王になる事、それは多くの物事を学んだ先にあると思うから」

 それを聞き、隊長は言う。

 とても真面目な顔をして。

 僕らを見据えるように。

「誓え。決して力の使い方を誤るな」

 僕とローナの心は決まっていた。二人で隊長の目を見て、宣言するように言う。

「誓うよ。正しい事の為に力を使う事を」

「誓うわ。力そのものへ憧れたりはしない事を」

 そう言うと隊長はほんのわずかだけ間を取る。

 隊長の視線は逸らされ床の方へ。

 なんだろう?僕らの宣言があまりに青臭かったからなのかな?

 何か思っているのだろうか?

 そんな風に思い始めた時、隊長が短く息を吐いたあとに見せた表情。

 満面ではないけれど、柔らかく、慈愛に満ちた笑顔。

 今回の旅の中では決して見れなかった表情。

 絶世の天使。

 その天使が言う。

「強くなれ。自分の夢の為に」

「「はい!!」」

 僕らは力強く返事をする。

 そんな僕らに隊長は満足げだ。

 これから僕らにはどんな旅が待っているのだろう?

 希望や楽しさだろうか?

 苦労と問題の山だろうか?

 でも今は、そんな事はいい。

 とにかく、前向きに行こう。

 この天使様と、仲間のケイン。それに小さな友達兼ライバルの女の子。

 みんなと一緒なら乗り切れるだろう。

 そんな予感と共に…

 力への心構えと強さへの決意。

 それを確認した僕は、はじめて冒険の第一歩を踏み出せた気がした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

いかがだったでしょうか?

長めの導入部から始まり、途中若干、中だるみのように感じたかもしれません。

最後に伏線を回収して一気に真相が分かる、という一風変わったファンタジーという物語の構成上、普通のファンタジーのようにクエストや討伐はなく、中盤は事実の積み重ねで爽快感に欠けたかもしれない点は今後の改善点ではありますがやむを得ない点でもあると思います。

なので、途中で飽きて「読むの辞めようかな…」と思わず(思いつつも)結末まで付いてきてくださった読者の方には本当に感謝しています。

数年前からいくつかのお話を少しづつ並行して書いており、続きは少し書き貯めをして戻ってくるつもりですが、こんな物語で良ければまた読んでくれると大変嬉しいです。

感想なども書き込んでいただけたらそれはもう感謝です。

一生懸命書きますので、ではまた、次のお話で。


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