同盟者、そして2人は仮面をかぶる。
「私はお前の復讐に力を貸す、だからお前は私に力を貸せ」
困惑する男に私は表情を変えず言い放った。
私にはお前の憤怒が必要だ、そしてお前には私の憎悪が必要、そうだろ?
「・・・お前は何者だ、お前の目的はなんだ」
バケモノが乗り移った子供、それとも本物の貴族は怪物なのか。
その怪物は何を考えているんだ、おれには解らなかった。
「私の目的か?そんなもの決まってる、このクソッタレな王国の崩壊だ王族どもの皆殺しだ。
王家を支えてやがるヤツ等も全員処刑台に昇らせてやる、敵は全部皆殺しだ」
まずはそこからだ、クソ共を全員焼き殺し、私は私の世界を作る。
邪魔するヤツ等は帝国だろうと教会だろうと、諸国同盟だろうと商会組合だろうと皆殺しだ。
「・・・悪魔、なのかお前は」
「馬鹿を言うなよ、こんなに可愛い悪魔がいるかよ。
フフッ、セバス、一度だけは許してやる。
私はルージュだ、今度間違えたらセバスでもゆるさんぞ」
子供の妄想なのかも知れない、何も知らない悪い大人に騙されている可能性もある。
だがそれが子供の戯言であろうと、目の前の少女は私の復讐を知っている、であれば。
「裏切り者は、たとえお嬢様であろうと殺しますよ」
「当たり前だ、裏切り者は何者だろうと殺せ・・・違うな、私は裏切り者でさえ利用する主義だ。
有能であればの話だがな」
私には駒が必要だ、下らない裏切り程度で切るほど狭量では、世界を燃やし尽くすなんて出来やしないだろ?
(バケモノかコイツは?・・だが口だけなら何とでも言える、オレはオレでこのバケモノを利用すればいいだけの事だ)
それに、オレが近くにいて見張っていれば、気狂いか怪物かは直ぐに解る。
オレはコイツが余計な事を口に出した時、直ぐにこの少女を殺して姿を消すだけ。
影のコイツの傍にいる事で、王族殺しも成功しやすくなる。
(そう、今はコイツを利用する。それでいいはずだ)
「解りましたお嬢様、ですが私の管理している畑で毒草を栽培するのは止めて戴きますよ」
「解ってるって、セバスの隠している影畑の方でお願いしますわ」
屋敷で使う野菜畑・薬草畑とは別にある、セバス個人が管理している畑、その端に放棄してあるようにみせてある隠した毒薬の畑。
!?「・・・それもご存じでしたか、なるほど。
つまりあのネズミ殺しは私を問い詰める為の囮だったと」
「私に隠し事なんか10年・・100年早いぞセバス、無能な部下なら即切るからな私は」
駒はいるが無能はいらん、ゴミは味方でも切り捨てる。
無能に足を引っ張られる事ほど、不愉快な事は無いからな。
(コイツとの付合いは6巡・・7巡目か、今度こそ最後まで付き合ってもらうぞ。
・・・・私がアイツに勝つ事ができたなら)今度こそ違う景色を見せてやる。
この王国が燃え上がる、そんな素晴らしい景色をな。
私はようやく私の剣を手に入れた、まずは1歩、つぎは・・・
「お嬢様、それで私に何をしろとお申しですか」
「そうだな、まずは飯だ」
「はぁ?」
「この家で出されている飯の量では少なすぎるんだ、だから毎日一食分を頼む。
それと鍛錬用の服と靴、あとそこに転がってる鉈を借りるぞ、それと・・」
「ちょっ、ちょっとお嬢様、ルージュお嬢様、一体どれだけ有るんですか?
私にもやるべき仕事があるんですよ、この仕事をさぼってこの屋敷から追い出されたら・・・」
屋敷の仕事をおろそかにして、この屋敷から追い出されたらこの5年以上潜伏した時間が無駄になる。お嬢様に振回されて計画が破綻するような事になれば、オレは。。
「そう心配するな、頼みは今の所あと一つだ。
もう少しすれば私はある動物を連れて来る、ソイツの面倒を見て欲しい。
なに、私の役にもお前の役にも立つ忠実なヤツだ」
(今の所は・・な)
まだ若さ残るセバスの顔を微笑ましく感じ、少し笑いそうになる顔を引き締める。
私の憶えているこの男の顔はもっと氷りのように冷たく、そして張り詰めた表情で瞳に憤怒の炎を燃やす、復讐者の顔だった。
そして私は、この男、セバスにそんな男になる事を望んでいる。
(お前のいる地獄はまだ入り口だ、楽しみにしていろ。
復讐の炎は燃え上がり、燃え広がってこそ美しい。
お前の中に眠らせている程度の、小さい種火では私は満足しないからな)
「じゃあ私は部屋に戻る。
それともう一度、今度は毒草以外の野草を移植するから今度は抜くなよ?」
後に必要なる物だ、涸らすなよ?
「・・・お嬢様がそう仰るなら」
ヒトの表情と怪物の顔、二つの異なる気配が混じる小さな少女は一瞬、大人びた瞳を見せ、直ぐに作られた笑顔の仮面をかぶる。
理屈は解らないが、ルージュの中にいるモノは、自分の知らない何かだと理解した。
そしてセバスもまた、いつもどおりの暗く辛気臭い顔に戻る。
復讐者が2人、花のように明るく美しく小さいバケモノと、顔の火傷の痕を隠すように前髪で目元を隠す初老の男。
ルージュが庭師の小屋の扉を開けた。
差し込んだ朝日は空の雲を金色に輝かせ、彼女の「頼んだわよ」という笑顔は光りに混じる。
娘とは違う、似ても似つかないルージュの後姿の中に娘の面影が写る。
レオーネ、私の大事なたった一人の娘。
私はお前が死んだ・・殺された歳と同じ歳の子供を利用してまで、お前達の仇を伐とうとしている。そんな馬鹿な父さんを許してくれるだろうか。
・・・・・・・・・・
腕立て腹筋スクワット、朝の鍛錬で汗を流し、メイド達に汗を拭かせ服を着替えさせた後は食事。
眠そうな母との静かな食事、父はいつもどおり遅れてくるだろう。
その後、私は部屋に籠る事になっている。
(・・・相変わらず覗いてやがる)
鍵の付いた机の引き出しを開けられ、鍵付き日記が開かれた跡がある。
(朝飯の度にガキの日記なんて覗いて、何が楽しいのかねぇ・・・)
最初の頃は馬鹿正直に、自分に起った事を書いていた。
そして母親に報告されていた事も気付かず、地下に閉じ込められる結果になった。
だから今の日記には『今日の夕食にはトマトが出たの、私、トマトを煮込んだのって好きじゃないのに。でも鳥さんは美味しかったわ』
とか、下らない事しか書いていない。
鍵があるからって、そこに大事な物をしまっているとは限らないんだよ馬鹿が。
「ルージュ、今日もメイドさんがキミの日記を読んでたよ?
そろそろ止めさせた方が良いんじゃないかい?何だったらボクが」
「いいの、誰だって自分の娘の事が心配なのは解ってるから」
嘘の情報を掴ませ利用する、その程度の事も解らないのかクソ熊が!
「それより私、みんなの事が聞きたいわ。今日もいっぱい聞かせて頂戴」
くそ熊が屋敷の幽霊共から聞いた情報、殆どは知っている・憶えてる事だ。
それでも私が忘れている事もある、下らなくて聞き逃していた事もある。
私は穴埋め問題を埋めるように、テリーの話を聞いて次ぎの行動に移る。
次ぎはメイド、お喋りメイドを捕まえ籠の鳥。
見えない籠に閉じ込めて、私の為に囀る小鳥にしてやろう。