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お化けと、そして分岐する世界。

 静かな廊下、虫の音が聞こえ夜風が廊下に入り混む。

 そんな廊下を見回りの足音を避けながら、ずんぐりとした小さい影がぬそぬそと歩いていた。

 

 この屋敷の家族は、言葉を話さない静かな夕食を終えている。

 ルージュは自室に、緊張と両親のプレッシャーで固まっていたライルも与えられた自室に戻っているだろう。

 そんな屋敷の中を一人?一体のクマのぬいぐるみが隠れるように歩いていた。


「う~~ん、やっぱりどこかおかしくなってる気がする、何でだろ」

「rhさyhj?」


「うん、この頃っていうか、この時期の事はあんまり知らないんだけどね」


(設定だけはまだ憶えているけど、このまま学園に入学してもライルくんがあんなキャラクターになるとは思えないんだよね)


 ライルというキャラクターはお姉ちゃん大好きなシスコンで、家族以外に始めて好きになったのが主人公だった。

 自分の気持ちが本当の好きなのか、恋なのか解らず主人公に近づき本当に好きにって行く、そんなストーリーだったはず。


 家族とは違う異性としての愛情、そんな気持ちに困惑しながらも最後には本当の恋に気付き主人公とライルは恋人になる、そんな感じの物語だった。


(弟を主人公に盗られたと思ったルージュが二人の邪魔をする、そんな役割だったんだよねぇ・・・)


 なので少年が自分の知っているライルかどうか、それを調べる為に広い廊下を歩いていたのだった。


 友達になったメイドさん、その隣にたっていた幽霊が暗い影が壁をすり抜け、部屋の内側から鍵を開けてくれた。

 この屋敷にやって来てからのクマの努力と交渉の結果、この屋敷のあちこちに居る殆どの幽霊・邪霊・怨霊・邪鬼・騒霊・妖怪っぽい物とは顔見知りになっていた、だから扉を開けるなんてクマには簡単な事だ。


(う~~ん、この屋敷ってなんでこんなに幽霊が多いんだろう?

それに拷問部屋とか・・・英国のお城にも幽霊が出るとか聞くし、中世の貴族の屋敷ってみんなこんな感じなのかなぁ・・まぁボクも幽霊みたいなもんだから・・・)

 

 中世ヨーロッパの貴族の社会は毒殺暗殺謀殺の社会だ、城や屋敷には地下室が有りそこでは外敵だけで無く、愛人や身内すら拷問の対象。

 だから幽霊の一人や二人がいてもおかしくは無い事を、初めて知ったクマだった。


「うんしょ・うんしょ・・・」


 蝋燭の明かりもない簡素で狭い部屋にベットが一つ、幽霊達が教えてくれた場所なら間違いは無いはず。

 それでも自分が設定し、思い描いていたライルの設定とは違う気がする。


(・・・・黄茶色の髪、細い眉毛は母親似?・・目の色は?緑っぽかったような) 

 じぃぃぃ~~~~~~~  


 顔を覗き込むクマのヌイグルミから背を向けるように寝返りをうつライル、その顔を追うようにベットを歩き、後頭部の方から覗くクマのヌイグルミ。


(・・・なんか震えてる?なんだろ?恐い夢でも見てるのかな?・・

?!なんか体が?)

 動き難い、なんだか体を掴まれているような感じだ。


?ん?(なにか言ってる、なんだろ?)クマがその口元に耳を近づけた、その時だった。


 ライルの目がカッと開き、クマのヌイグルミを凝視して・・・


「うわぁぁぁぁ!!!!!!!」

「うわぁぁぁ!!!耳が!耳がぁぁぁ!!」


「お化け!お化けが!うわぁぁ!!!!」

 ライルが叫んだ瞬間、クマが壁まで吹き飛ばされた。


「うぅぅ・・酷いよ、ボクの頭がぺちゃんこになっちゃたじゃないか。

 頭に綿が詰まって無かったら危うく死んたかもだよ」


「!?・・うわぁぁぁ!!!クマのお化けだぁぁぁ!!」


「おっ落ち着きなよライル、ボクは、、、クマのヌイグルミに入った・・」幽霊って言うべきだろうか、う~~ん。


 顔面蒼白、目の焦点が一点を凝視して震えてる。

 くまのぬいぐるみじゃなくて、馬のぬいぐるみの方がよかったかな?


「大声が部屋の外まで聞こえて来たわよライル、どうしたの?」


「おっ、おね、お嬢様!お化けが!クマのお化けが!

 壁にも黒い影みたいなのが!あっちにも髪の長いメイド服のお化けが!」


・・・・・


「ライル?、あのクマのヌイグルミはただのメイドのいたずらよ?

 ときどきメイド達が私のヌイグルミを隠してしまうの、それを私が探す遊びなの。

 一つ行方不明だからどこに行ったのかと少し探してたのよ。

 そのうちに見付かるかと思ってたけれど、ライルの部屋にあったのね」

 

(・・誤魔化せない、、か?)


『クマちゃんはジッとしてなさい』

 唇を動かしそう言うと、ルージュは怯えるライルの頭を抱き締めた。


「でっでもお化けが、部屋の鍵を開けて、それに、影が・・」


「初めてのお屋敷で、初めての部屋だから怖い夢を見たのね。

 それとも・・お父様達に酷い事を言われたの?

 大丈夫、恐いお化けなんかお姉ちゃんがやっつけてあげる、だからもう大丈夫よ」

 

 こうなる事を知っていたルージュは、部屋を抜け出すクマを尾行し悲鳴が上がるまで待っていた。

[ライルを守る優しい姉]そう印象付ける為に。


「・・・大丈夫大丈夫、もう大丈夫だから」


 胸に当たる頭を撫で、ゆっくりとベッドに座ると抱き合うように抱き締め、その背中を撫でて耳に顔を近づけ「大丈夫・大丈夫」と、なんども繰り返す。


・・・・・・「落ち着いた?」

「・・・うん、、、ルージュお嬢様」


 !?・・・・?????

(何だ?今なにか・・)


 感覚がぶれる、記憶が歪み目に写る物が二つに重なっている?


(・・ああそうか、コイツ)ダブル[二重能力者]だったか。

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