表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/34

ライルは私の弟?

「あぅ・・あの」

「?ん?」どうせ逃げられ無いのに手を掴んだら抵抗する弟、全く・・無駄ですわよ!


「あのっ・・貴女は・・」

「・・?!そうでしたわ!

 弟が出来て私、少し興奮していました、、ではあたらめまして。

 始めまして、ルージュ=エラム、今日から私が貴方のお姉さんよ」

 右手は手は離さず、左手でスカートの端をつまんでのご挨拶。


「お姉ぇさん?・・あっ!あの始めましてボク!」


「お嬢様、彼はまず御当主様の所に、ご挨拶をなさりますので」

 父の執事グラフが彼の少ない荷物を左手にして、割り込むように頭を下げてくる。


(?・・なんだ)

 私が握った弟の手が強張り、緊張の汗が手のひらに感じる。

(怯えてやがる、、、本当に何があったんだ?グラフのやつ、どんな[説得]をしたんだよ・・・

しゃ~ねぇなぁ・・・)


「ではグラフ、私も一緒に行きますっt、そんなやつを一人で親父に合わせられるかよ、全く。

 脅迫か暴力か、どうせスマートじゃ無ぇ方法を使ったんだろ。

 コイツを親から引き離す為とは言え、無茶苦茶しやがって)


 大人は金で説得出来る、けど子供は感情で動くからなぁ・・・


「しかし、お嬢様」

「良いのよ、お屋敷のご案内も年長者の役目でしょ?

 だから弟に色々と教えてあげて差し上げたいの」

 

 お父様が大事にしている花瓶や壺を・・絨毯を壊されたくないでしょ?


(つか・・なんか嫌な予感がするんだよな)

 怯えた子犬をオヤジなんぞに差し出せるかよ、コイツ小便チビって絨毯とか汚すかも知れねぇだろが。


「・・・お嬢様。確かにお嬢様のおっしゃられる通りでございますな」

 頭を下げたグラフが背中を向ける。


「では行きましょうか、ライル」

「あの・・お嬢様はなぜボクの名前を」


?!・・そう言えばいまの私は!

(チッ!聞かれたか?・・・・グラフの背中に反応は無し・・か)

 

『お父様にお聞きしましたの』

 ライルを抱き寄せ、彼だけに聞こえるように耳元で呟いた。


「あっ、ぅん」

 急に抱き付いたせいでライルが固まってる。


(?・・コイツまだ緊張してるのかよ?そんなんでオヤジに面会したら失禁して気絶とか、、、マジでやめろよ、あの公爵殿下はその手の不潔な人間には容赦が無ぇんだからな・・はぁ)


 それよりも。

『貴方の口から聞かせていただけませんか?

 新しい弟さん』


「はっ、はい!ぼ、ボクはライルって言います!お、お姉ちゃん」

 

 うぉ!コイツ!

 耳がキンキンする、この至近距離で大声をだすんじゃねぇ!


「・・ライルくん、キミがこの家の子供になるかどうかは、このお屋敷の主、ボルス様しだいですよ。

 お嬢様に失礼の無いように」


(チッ、やっぱり聞いていやがったか、くそ。

 会話の誘導で様子見をしてみたが、やっぱりか。今後は要注意だな)


「何を仰ってるのよグラフ、ライルはこんなに可愛いのですから、お父様だって絶対に好きになってしまいますわ。

 私の弟をそんなに虐めないで下さい」ね♡


 いまはコイツの味方になるべきだ、人生では初対面こそ敵味方を別ける分岐点だからな。

 最初の初対面で味方を演じておけば、後々洗脳しやすくなるんだ。


(特に相手が弱っているなら尚更ですわ)


 ルージュの計算通り、ライルはグラフの背中から身を隠すようにルージュの後ろに隠れ、手を握る力も強くなっている。

 

(ライルにとって頼れる者は私だけ、そういう状況は相手を信用させ・心酔させ・依存させるのには最高の状態なんだ。それを逃す私じゃねぇぞ)


 強く握り返し、笑顔でライルを安心させる。

 それだけで手の力が抜けて弟の口元が少し緩む、計算通りだった。

「さあ行きましょうライル、お父様が待っておられますわよ」

 そう言って手を引く私に、ライルはゆっくりと馬車を降りた。

 ここが、この庭が彼にとって、平和な日常との分岐点になるとも知らずに。


・・・・・・・・

「この青銅の壺は東の国から運ばれた物ですって、落ちても割れませんがすごく重くて堅いの。

 だから頭に当たったら大変です、なのでライルが大きくなるまでは近づいてはいけませんわ」

 とか。


「この絵皿は砂漠を渡って来たとお母様にお聞きしました、どうです?

 絵書かれているのは麒麟?とかいう動物らしいですわ」


 角の生えた馬のような鱗のある鹿のような黄色の獣、金貨10枚はする金漆の絵皿を手に持ってライルに見せた。


(すごく恐がってるなぁ・・・)


 所詮はただの絵・絵皿だぞ。

 成金趣味というか金の使い方を間違えてるというか、こんな物で人間が1人奴隷になる事もあるんだから、全く馬鹿な話だな。


 ライルはそんな無駄に高価な物を見る度に驚いて、おっかなびっくり顔を近づけてジッと目に写してる。


(自分が触ると、汚れるとか怒られるとか思ってる顔だな、馬鹿なヤツだ。

『こんなもん売りに来た商人が、高価だと言ってるだけのガラクタだぞ?』

 って言っても解んねぇだろうけどさ)


 持つ者と持たざる者、どちらが優位であるか。

 金も食料も水も土地も時間さえも、持つ者が価値を決める。

 持たざる者は、持っている者が決めた価値だけ払わないと手に入れる事が出来ない、全く不公平な話だよ。

 

(アホな家畜相手なら、労働力と時間だけは安価で搾取出来るんだが・・・)


 とか思っていたら目の前に、彫刻され白く豪勢で重そうな扉が立ち塞がっていた。

 ボルス公爵執務室、オヤジの自室だ。


 コンコン、「失礼致します、子供を連れて参りました」

 扉を前に頭を下げるグラフ、しばらくして「入れ」と短い返事が返って来た事を確認して執事が扉を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ