表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/34

エピローグ、[舞台の幕は下り]

 ・・・・・っあっ!・・・

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・メッチャ痛ぇ!


(っクソっ!あの馬鹿、思いっ切り噛みやがって!知ってたけどメチャクチャ痛ぇじゃねぇか!)


 はぁはぁはぁ~~~~

 穴の開いた右腕が燃えるように痛い。

 テリーに噛まれた腕が焼けた釘を押し付けられたように痛い。


(まぁいい、計画通りだ。アイツはアイツで自分の役目を果したんだ)


「ねぇ、大丈夫?」

「あ、うん。ちょっと痛いけど」


 クソクマが!テメェがいるから呻く事も出来ねぇじゃねぇか!


「でも、本当に大丈夫なの?

 ボクの記憶じゃキミと王子の婚約はこんな感じじゃ無かったんだけど、どうしてこんな事になったのか解らないよ」


 クマの記憶では、屋敷を案内するルージュが強引に王子と腕を組もうとして、王子が少し抵抗して彼女は転ぶ。

 顔から地面に倒れた彼女は鼻を打ち、鼻血と鼻先の傷を王子が見て自分の責任だと治療の終わった彼女に婚約を申し込む、そんな流れだったはずだった。


(バグ?こんな序盤で子犬がこの屋敷に現われたから?でも・・・)

 結果から見れば彼女は王子と婚約した、ケガもしている。

 ストーリー的には自分の作ったゲームと同じだった。


「・・王子の事は運命だったの、だからこのケガも運命なの。

 誰も怨んで無いし誰も悪くないの、ただ・・凄く痛いだけ」

 殺すぞクソクマ、何が運命だ!テメェが筋書きを書いたならお前は本物の無能か馬鹿だ!

 この傷の痛みも熱のあつさもぜってぇ忘れねぇからな!クソが!


(は~は~は~・・まぁいい、腕に穴を開けたお陰でヤツはオレに心酔したはずだ)

 婚約の誓い・婚約証書は所詮形であり物だ、心を縛る事は出来ない。


 だから王子を救って傷を負う、悲劇のヒロインらしく父親に逆らい子犬を庇う。

 全部計画通りだ。


・・・・・・・

 1週間かけて私はある物を探した。

 蜂の巣だ、そしてその中から一回り大きな蜂・女王蜂を捕え瓶に入れて持ち帰った。

 

 女王蜂は他の蜂を呼ぶフェロモンってヤツを出す、そしてそれは瓶に入れて蓋をして置けば死体の体にも残る。


 馬車のとまる場所も知っている。

 その場所に馬車が来る前に女王蜂の死体を埋め、日が昇り動物・昆虫か活発化する時間がやって来れば、蜂はフェロモンに反応してやって来る。


 テリーも同じだ、セバスに命令して丸1日飯抜きにした。

 その上で、ヤツの隠し畑から用意した、犬を酩酊させる薬草を少し喰わせておいた。


(蜂に驚き馬が跳ねる。酩酊しているテリーは訳も解らず目を覚ますだろ?)


 混乱した獣が最初に目指す場所は、私の持っている親犬の毛が入った小袋、そして餌を与え遊んで自分と同じ匂いのする相手・・・私に向かって走ってくる。


 私は混乱して飛び付いてくるテリーの口に腕を差し込み、敢えて噛ませたんだ。


 結果は見ての通りだ。

 ガキの前で流血して見せれば、混乱したガキ王子は(こんな偶然が連続するなんて、ある訳が無い)とは考える事は出来ない。


[ヤツを私が助け、私がケガする]

 健気で勇気を持った私に惚れるだろ?惚れちゃうよな?

 シチュエーションは完璧だろ?


 その上で、1度婚約を言い出そうとした王子を1度無視して子犬を助ける私、ちょう格好いいだろ?母性溢れてるだろ?健気だよな?


 オヤジの前で婚約をさせる、そうすればもう誰も文句は言えねぇ、たとえ国王であっても公爵相手に『子供の冗談でした』じゃ済まねぇよな?


 結果ヤツは正式書類を持ってやって来た、しかも正式な手順をおっての正式な物だ。

 そんでもって『子供の頃の約束』などと言わさないように、友達として縛りを着けてやった。


 負い目・恋心は目を曇らせる。

 王子の目には私は優しくて綺麗で勇気を持った女に写っている事だろう、つまりは私に惚れさせて置く事が出来るわけだ。


 私が何かする度に嫉妬したり緊張したり、私の顔を見る度に興奮してドキドキするんだぜ?笑えるよな?


(あんまり計画通り過ぎて、笑いを堪えるのが大変だったぜ)


 あのガキが必死に格好つけて、オヤジに婚約宣言した時は本気で笑いそうになってな、顔の筋肉を押えるのに必死だったよ。


(ハハハハッ、騙すヤツと騙されるやつ。結局の所、きっちり用意した賢いヤツが勝つんだよ!)

 苦労と痛みのかいはあった、私は賭けに勝ったんだ。


 1度私を助ける経験をした王子は、その時の優越感と高揚感を憶えたはずだ。

 そんな経験がヤツを[私を助ける道具]に変えるはず。。。

 

(アイツが出てくるまでは、な)

 ここまでやっても神の作ったシナリオには逆らえない、それも解っている。

[運命力]ってやつが王子を変え、私から離れていく事を私は知っている。


 所詮私の小細工なんか、神ってヤツの前では小さな抵抗に過ぎない事も知っている。


(でもなぁ神よ!小さな抵抗も、何度も繰り返せば進む道も変わるよな?

 精々油断してろクソッタレの神!


 私はお前の作った道に小さな石を置き続けてやる。

 お前の作った三流のエンディングなんか変えてやる、運命とか言う馬車の車輪なんかぶっ壊してやるんだ!!!!)

視点を変えて、騙される者と騙す者を書く。

ルージュの様子がおかしいと感じた方はこの話を予想出来たとは思いますが、

読者の方々を見事騙せていたら、作者冥利に尽きますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ