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日本帝国海軍豪州誘引作戦

日本軍が珊瑚海海戦で勝利することによる歴史改変を題材とした架空戦記です。

 日本帝国海軍が太平洋戦争で行った「豪州誘引作戦」について話します。


 太平洋戦争の第一段作戦は南方資源地帯を日本軍が占領したことで終了しました。


 その次の第二段作戦については、海軍軍令部と連合艦隊司令部では意見の違いが起きました。


 軍令部は、アメリカ合衆国とオーストラリアの連絡を遮断する豪州遮断作戦を提案し、その手始めとしてパプアニューギニアの要港ポートモレスビーを攻略するMO作戦を計画しました。


 それに対して、連合艦隊司令部は、ハワイ攻略を目標として、その足場としてミッドウェー島を攻略するMI作戦を計画しました。


 双方の意見は対立し、なかなか結論は出ず。結局、折衷案としてMO作戦を実施した後、MI作戦も実施するということになりました。


 そして、MO作戦の準備中、ある事実が判明しました。


 アメリカ軍に海軍暗号が解読されている可能性が高いことが分かったのです。


 海軍内部では、本当に暗号が解読されているのか、激しい議論となりましたが、結論は実戦で確かめてみることにしました。


 空母「翔鶴」「瑞鶴」を主力とした部隊を当初の予定通り行動させ、別動隊として空母「蒼龍」「飛龍」も送りました。


 別動隊は完全に情報封鎖をしており、主力部隊にも存在を知らせていませんでした。


 日本海軍の暗号を解読していたアメリカ海軍は、空母「レキシントン」「ヨークタウン」を送り込みましたが、空母四隻の艦上機により、撃沈され、日本軍はポートモレスビーを占領しました。


 この海戦は、「珊瑚海海戦」と名づけられ日本海軍の勝利に終わりました。


 海戦後も日本海軍は別動隊が存在していたことを秘匿したため、日本海軍が暗号を解読されていることに気づいたことがアメリカ海軍は分かりませんでした。


 連合艦隊司令部は、次に自分の作戦であるMI作戦を実施しようとしましたが、各方面から「待った!」の声が掛けられました。


 軍令部、そして連合艦隊司令部内部からもMI作戦に疑問が生じたからでした。


 ハワイ攻略に必要な陸上兵力の提供には、日本陸軍は難色を示していました。


 反対派は「陸軍が兵力を提供しないのではハワイ攻略ができないのだからMI作戦は実施する意味がない」と主張しました。


 それに対して推進派は「ミッドウェー島を攻略しようとすることで米空母を誘引し撃滅することで、米空母による本土空襲が二度とないようにする」と主張し、さらに「豪州遮断作戦のための陸上兵力の提供も陸軍は渋っており、ミッドウェー島攻略のための陸上兵力の提供は同意を得ているので、MI作戦は実施するべきだ」と主張しました。


 それに対して「米空母を誘引するならすでに占領しているポートモレスビーで充分である」という意見も出ました。


 さまざまな意見が出て、喧々諤々の議論の末に日本海軍が下した結論は次のようになりました。


「MI作戦は陸軍からの陸上兵力提供の目処が立つまでは一時中止、豪州遮断作戦を海軍は当面は主な目標とするが、陸軍からの陸上兵力の提供があるまでは、ポートモレスビーを拠点とした米海軍の誘引を目的とする」


 日本的な全員の顔を立てるための折衷案でした。


 日本陸軍は、海軍の混乱を見て、もともとあまり乗り気ではなかったことにより、海軍の作戦に大規模な陸上兵力を提供することを取り止めることにしました。


 この日本陸軍の決断が予想外の影響をもたらしました。


 この決断を日本陸軍が公表はしませんでしたが、特に隠そうともしなかったので、アメリカは諜報活動により比較的簡単に日本陸軍の決断を知りました。


 しかし、簡単に情報が手に入ったことにより、「これは欺瞞情報だ。真実は日本陸軍は大規模な陸上兵力を豪州遮断のために送ろうとしている」と判断しました。


 その拠点となるポートモレスビーを早急に奪還しようとしました。


 米海軍としては戦力が回復してからにしたかったのですが、ポートモレスビーが日本軍に占領されたことにより、本土北部が日本軍から空襲されるようになった豪州政府からの救援要請に米政府は応えたのです。


 ポートモレスビーを攻略するための米海軍は不充分な戦力の逐次投入となり、空母・戦艦などの米海軍でも戦力の回復が難しい大型艦を次々と失って行きました。


 第三次ポートモレスビー沖海戦では、日本海軍の大和型戦艦二隻とノースカロライナ級戦艦一隻・サウスダコタ級戦艦一隻が砲撃戦をし、日本海軍側が大和型二隻が中破、米海軍側が戦艦二隻撃沈の結果に終わったのは、何度も小説や映画になっているので皆さんもご存知でしょう。


 日本海軍は「豪州誘引作戦」が上手く行っているので、それを正式な作戦としました。


 米海軍の潜水艦による通商破壊戦の失敗も戦局に大きな影響を与えました。


 米海軍のマーク14魚雷は艦船に命中しても不発が多く、潜水艦の艦長たちは「不良品ではないか?」と海軍兵器局にクレームを入れましたが、兵器局は「艦長たちの技量不足だ」と取り合いませんでした。


 日本海軍は不発で船体に刺さったマーク14魚雷を回収し、分析の結果、信管に欠陥があり不発になる確率が高いことを突き止めました。


 日本海軍は米海軍潜水艦の魚雷攻撃による被害を実際よりも過大に記載した偽の内部文書を作成し、自然な形で米国の諜報部に渡るようにしました。


 米海軍兵器局は、この偽の内部文書を信じたためマーク14魚雷の欠陥は改修されず。終戦まで米海軍の潜水艦の戦果は低調でした。


 最終的にポートモレスビーは米軍に奪還されましたが、失った艦船と将兵の数は米海軍の方が多かったのでした。


 特に沈没した艦船から脱出した将兵は、日本海軍は自軍の海域のため救助が比較的容易でしたが、米海軍には敵地のため救助が容易ではなく、生存者も日本海軍の捕虜になるという場合が多かったのです。


 その影響があらわれたのが太平洋戦争末期の「マリアナ沖海戦」でした。


 この海戦は日本海軍の「辛勝」に終わり、米軍はマリアナ諸島を占領できませんでした。


 米海軍は艦船の数では日本海軍を優越していましたが、それまでに失った将兵の穴埋めはルーキーばかりだったため、技量不足により敗退しました。


 しかし、日本海軍は空母などの大型艦で回復不能な損害を受けたため、いずれ回復してくる米海軍に敗北するのは明らかでした。


 さらに日本陸軍が満州でソ連軍に敗北しました。


 ナチス・ドイツを降伏させたソ連が日ソ不可侵条約を破棄、満州に攻め込みました。


 満州北部がソ連軍に占領されましたが、満州南部で何とか日本陸軍は持ちこたえました。


 満州の日本陸軍が南方に大兵力を引き抜かれていたら満州全土がソ連軍に占領されていたという説があります。


 アメリカ政府は中国全土がソ連の領域になることを恐れて、「ソ連に対する防波堤」にするために日本と講和することにしました。


 日本政府とアメリカ政府の激しい交渉の結果、講和条件は次のようになりました。


「満州南部と朝鮮半島は『高句麗民国』として独立国になり、日本軍は撤退、代わりに高句麗政府と安保条約を結んだアメリカ軍が在高米軍として高句麗に駐留する」


「日本海軍は大型艦は大和型戦艦『大和』『武蔵』の二隻、空母は『大鳳』『翔鶴』『瑞鶴』三隻の保有のみが認められ、代艦を建造するにはアメリカの同意が必要とする」


 この講和条約に反対した日本軍の継戦派によるクーデターが起きましたが、講和派によって鎮圧されました。


 米ソ冷戦を日本は「ソ連に対する防波堤」として活動しました。


 戦艦「大和」以下五隻の大型艦は改装を何度かしながら、1990年代まで現役でいました。


 アメリカが日本をソ連に対する防波堤として期待しながらも、日本海軍に自分たちが苦戦させられたこともあり、代艦の建造をなかなか認めなかったからです。


 ソ連崩壊時、ソ連の一部だった満州北部は高句麗民国への帰属を表明し、それは国際社会から認められました。


 最近は、中華人民共和国政府は「高句麗は歴史的に見て我が中国の領土である」と主張し、高句麗民国との国境近くで軍事演習を繰り返しています。


 日本政府は高句麗民国政府との協議により、「抑止力」として日本陸軍の大部隊を高句麗に駐留させることになり、戦後初めて、日本陸軍が大陸に派遣されることになりました。


 海でも、戦艦「大和」空母「大鳳」の退役にともない建造された排水量3万トンのミサイル戦艦「長門」「陸奥」、排水量7万トンの空母「赤城」「加賀」からなる日本海軍が抑止力となっています。


 我が日本はソ連が崩壊した後も「大陸に対する防波堤」という役割りは変わっていないということを国民のみなさんは自覚してください。


 それでは、私の話は終わりにして記念艦「大和」の見学に行きましょう!


 艦内の食堂では、海軍カレーとラムネがみなさんを待っています!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 国民への説明(案内)という新鮮な語り口で、楽しませていただきました! [一言] お恥ずかしながら、どこまでが作者様の前提説明なのかと思ってしまいました(汗) (史実の方もしっかりと学びたい…
[良い点] 御参加ありがとうございます。珊瑚海海戦からはじまる歴史改変、楽しませていただきました。 [一言]  ポート・モレスビーを起点に、連合軍側戦力を誘引するというのは、個人的に新鮮でした。これま…
[気になる点] 佐藤大輔の『戦艦大和夜襲命令―仮想・太平洋戦史(徳間文庫)』のオマージュでしょうか?
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