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ちっちゃい妖精さんになりました! 暇なので近くにいた少年についていきます  作者: SHIRA
第2章 グルメな妖精と絶景のブルーメ
55/334

54.マリちゃんと3人の妖精

ツンツンツン


「んぅ~・・・」


ツンツンツン


 なんだろう? 誰かに頬を突かれてる・・・マリちゃんかな?


・・・ベシッ


 いたっ! 叩かれた!?


「やめてよ! ・・・って、水の妖精!?」


バッと瞼を開けると、水の妖精と波の妖精の2人のニマニマした顔がドアップで見えた。


「うわっ、ちかっ! ・・・なんでここに? というかどうやって部屋に入って来たの?」

「思い出したんです」


水の妖精が腕を組んでプクーッと頬を膨らました。わたしは2人の妖精を退かして、マリちゃんとジェシーを起こさないようにベッドから少し離れたところに移動する。水の妖精が頬を膨らましたままついてくる。


「思い出したって・・・、もしかしてディルの両親のこと?」

「違います。波の妖精とした人間に対する約束です」


 ・・・確か、人間を傷つけない、殺さない、それとあと1つが忘れちゃったんだよね。


「人間を危険な目に合わせない、です」

「へぇ~」


思ったより普通だなと思ってると。波の妖精がおずおずと手を挙げた。


「私は悪くないんです!」


波の妖精は瞳を潤ませて、必死に懇願するように水の妖精を見る。


 波の妖精はなんでそんなに焦ってるんだろう・・・?


わたしは波の妖精と遊んだ一昨日のことを思い出す。一緒に砂浜に行って、わたしが小さいお魚がたくさん欲しいと言った。そしたら波の妖精が遠くの海から小さいお魚と一緒に大きな魔物も連れて来た。その魔物は砂浜にいた親子を襲おうとしてた。


 ・・・うん。約束破ってるね。間一髪でわたしが雷を落としたから無事だったけど、危なかったね。


「だって、雷の妖精がたくさんお魚が欲しいって言うから!」


波の妖精がわたしを指差して睨む。


 え!? わたしのせいじゃないよ!


「ちょっと! まるでわたしのせいみたいな言い方しないでよ!お魚を連れて来るだけであんな巨大な魔物を使うなんて思わないでしょ!?」

「なんですか! 雷の妖精だってその後じゃんじゃん連れて来てって言ってたじゃないですか!」

「というか! この約束って水の妖精も忘れてた・・・うわっ!」


わたしと雷の妖精が言い争っていると、急に上からドパーッと水が降ってきた。そして降ってきた水は床に落ちる前にパッと消えた。


「喧嘩両成敗です。そして波の妖精は5年間水の山から出ることを禁止します」

「えぇっ!・・・まぁ、5年だけならいっか」


水の妖精があっさりと言う。


 わたしにとっては5年はそこそこ重い罰だと思うんだけど、2000年近く生きてる波の妖精からしたら軽いみたいだね。


「雷の妖精はなにやら人間達と面白そうなことは企んでるそうですね? 人間達が噂してましたよ」


水の妖精が薄っすら笑みを浮かべてわたしを見る。


「企んでるって・・・料理大会のこと?」

「そうです、それです。私も仲間に入れてください。私も美味しいお魚料理を食べたいです」


笑顔のままずずいっとわたしに近付いてくる。


「ま、まぁ、わたしと同じ審査員役ならいいけど・・・そもそも、水の妖精が人間にお魚を食べたら駄目って言ったんじゃないの?」

「・・・はて?」


水の妖精がコテっと首を傾げる。その横で波の妖精が今度は勢い良く手を挙げた。


「はい、波の妖精さん。どうぞ」

「私、覚えてます! 昔人間達が大量にお魚を乱獲してたのを見て、水の妖精が私達の分が無くなるから人間達に食べるなって言ってました!」


波の妖精が「してやったり」というような顔で水の妖精を見る。


 なんてしょうもない・・・わたし達妖精が食べる量なんて雀の涙でしょうに。


水の妖精はすいーっと目を逸らす。


「まぁ、それは横に置いておいて・・・」


 ・・・横に置かれちゃった。


「雷の妖精は私達がどうやってこの部屋に入って来たのかと聞いていましたよね?」

「あ、そうそう! わたしどう頑張っても扉どころか窓も開けられないのに! どうやって入って来たの? 2人で協力したとか?」

「違いますよ。見ててください」


そう言って水の妖精は自分の片腕を出して、その腕をポチャンと水に変化させた。変化させた水はそのまま水の妖精にくっついて自在に動いている。


「こうやって隙間を通って入って来たんですよ」

「おお! 凄い! そしてちょっときもい!」

「緑の子達も似たようなことをしてませんでしたか?」


 確かに植物の中に入ったりはしてたけど、腕を植物に変えたりはしてなかったと思うんだけど、もしかしたら出来るのかな。


「わたしもそれっぽいこと出来るかな?」

「出来るハズですよ」

「よし! やってみる!」


わたしは想像する。


 自分の腕が電気になるように・・・電気になるように・・・ってなにその状態!? ぜんぜん想像できないよ!


「むぅ、難しい・・・」

「焦らなくても大丈夫ですよ! 私も出来るようになるまでに何年もかかりましたから!」


波の妖精がポンポンとわたしの頭を撫でる。


「わたしは今すぐに出来るようになりたいんだよ!」

「相変わらずあなたはせっかちですね」

「相変わらずって・・・まだ会って数日でしょ?」

「それでも分かりますよ」


それから暫く水の妖精と波の妖精からアドバイスを受けながら頑張っていると、マリちゃんが起きた。


「おはようソニアちゃん・・・わあっ!妖精さんが3人もいる!」


マリちゃんが緑色の瞳をキラキラと輝かせながら「妖精さん! 妖精さん!」と寝ているジェシーを踏んづけてこちらに近寄ってくる。ジェシーが「うっ」と呻き声をあげたけど、マリちゃんはお構いなしだ。妖精しか見えてない。


「何で妖精さんが増えてるの!? 何してるの!?」


マリちゃんがブンブンと腕を振りながら水の妖精と波の妖精に顔を近付ける。


「あなたが緑の妖精が言っていた小麦色の子供ですね? 初めまして、私は水の妖精です」

「私は波の妖精です!」

「私はマリです!」


3人が向かい合ってお辞儀し合う。シュールな画だ。


「妖精さん達はソニアちゃんのお友達なの?」

「そんなところです」


水の妖精がわたしを見ながらそう答える。


「妖精さん達は何をしてたの!?」

「私達はソニアちゃんの応援をしてたんですよ!」

「応援?」


波の妖精が自分の腕を水に変化させながらこの部屋に入って来た方法とわたしが今やろうとしていることを説明する。


「フフッ、ソニアちゃん自分で扉開けられないもんね。私も応援する!」


 マリちゃん、完全にわたしを歳下扱いしてる・・・。


その後、わたしはマリちゃんの熱烈な応援を受けながら頑張ってみたけど、結局バチバチと放電するだけで何も変化は無かった。最終的に、わたしは水の妖精と波の妖精と一緒にマリちゃんの膝の上に強引に乗せられて撫でまわされたあと、水の妖精達は水の山へと帰っていった。大会当日にまたこの部屋に来るらしい。マリちゃんはホクホク笑顔だ。


「あら?マリちゃん今日は早いわね」


ジェシーがベッドから起き上がって驚いた顔でマリちゃんを見て言う。マリちゃんがトテトテとジェシーに駆け寄っていい笑顔で口を開く。


「うん!妖精さんがいたから!」

「はい? 妖精さんならいつも一緒にいるでしょ?」


ジェシーが不思議そうにわたしを見ながら言う。マリちゃんが「違うの!」と興奮気味にブンブンと首を振った。


「ソニアちゃんもいたけど、他にもいたの!青い妖精さんが2人!」

「青い妖精さんが・・・? ソニアちゃん、どういうこと?」


わたしはジェシーに水の妖精に叩かれて起こされたところから、マリちゃんに撫でまわされたとこまで簡単に説明した。


「マリちゃんの膝の上で・・・何よそれ見たかったわ。・・・どうりでマリちゃんが元気なわけね」


わたし達は顔を洗って身支度を整えたあと、一階の食堂で男性組と一緒に朝食を食べながら今日の皆の予定を話す。


「俺は今日も修行だ!」


ディルが元気に宣言した。


「俺も一緒に行きたいんだが、昨日午前中に釣りをしてるところを知り合いに見られてて、今日教えてくれって頼まれてるんだよな」

「じゃあ今日はその知り合いと海に行くのか?」


ディルがジェシーをチラッと見ながら言った。


 いい加減ジェシーにプロポーズしないとだよね?


「ああ、せっかくだから旨そうな魚釣って帰ってくるぜ」


デンガは得意そうに言ったけど、ディルは心配そうな目でジェシーとデンガを交互に見ている。ちなみに、昨日話していた勝負に賭ける物はまだ決まってないらしい。


「私は今日もお魚料理の特訓をするよ」

「僕も魚料理を研究したいので厨房をお借りしてもいいですか? もちろんお金が必要なら払いますよ」


 マリちゃんとヨームは厨房ね。仲良くできるかなぁ?


「ヨーム、私の真似しないで」

「真似じゃないですよ」


ヨームとマリちゃんが睨み合う。睨んでるのはマリちゃんだけだけど。そんな雰囲気だ。


「お金はいらないけど、後片付けはしておくれよ。マリちゃんは大丈夫だと思うけどね」

「分かりました」

「私と離れたところでやってね」

「そんなに広くないと思いますが、極力見ないようにしますよ。僕も誰かの研究結果を横取りしたりされたりは嫌いですから」


朝食を食べ終えると、皆が今日の行動を開始する。ディルは山に修行に、デンガは海に釣りに、マリちゃんとヨームは厨房に、カカとプラティは今日も主婦達の集まりに行った。皆で昨日の夜試行錯誤した結果を話し合うそうだ。わたしは自分の身体を電気に変える特訓をする為に女性部屋に戻る。ジェシーも一緒だ。わたしが1人では扉を開けられないのもあるけど、ジェシーも部屋でやりたいことがあると言っていた。


「うーん・・・」


バチバチバチ!


「ううううううう!!」


バチ―ン!!


「うにゃああああああ!」


ビリリリィィィ!!


「ちょっとちょっと! 大丈夫なの? 凄い音がしてるけど!」


椅子に座って縫い物をしていたジェシーが首元のネックレスを揺らしながら屈んで、床で奇声を上げていたわたしを心配そうに見下ろす。その瞬間、わたしは何かに引っ張られた。


「わわっ!」

「え!? ちょっとソニアちゃん!?」


 か、体があああ!!

読んでくださりありがとうございます。マリちゃん大興奮。

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