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ちっちゃい妖精さんになりました! 暇なので近くにいた少年についていきます  作者: SHIRA
第2章 グルメな妖精と絶景のブルーメ
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52.小休止と打ち合わせ

宿に戻ると、食堂でデンガとマリちゃんと昼食を食べていたジェシーに、いきなり「ソニアちゃんでしょ?」と言われた。


 ・・・はて? 何のことだろう。


「あの轟音のことよ! ソニアちゃんでしょ!?」


首を傾げるわたしにジェシーは言い寄る。


「俺達は村で散々聞いたから慣れてるけど、お袋やプラティは水の山に異変が起きたんじゃないかって軽くパニックになってたぞ」

「ソニアちゃんの雷すごい音だもんね」


デンガとマリちゃんが「ね~」「な~」と仲良く微笑み合う。


 緑の森にいた時は、よく裏の山で雷を落とす練習してたからね。あそこはいくら雷で山が剝げてもミドリちゃんが元に戻してくれるから遠慮なく落とせる。楽しかったなぁ。


わたしはジェシー達と厨房からディルの分の昼食を持って出てきたカカとプラティにわたしの今日の行動を説明した。


「ソニアちゃん、凄い妖精さんだったんだね・・・」

「まったく・・・プラティと一緒に騒いでたアタシ達が馬鹿みたいだね」

「主級の魔物を何体も・・・!? たまに忘れるけど妖精は本当に妖精なんだなぁ」


プラティ、カカ、デンガがわたしを見て感嘆の声を漏らす。


「私も見たかった~」

「マリちゃんが見たいなら、もう一度波の妖精に頼んでみるのもやぶさかではないよ!」


 そうすれば、マリちゃんに「すごいよ! ソニアお姉ちゃん」って言ってもらえるかもしれない!


わたしが「ふんす」と鼻息荒くやる気になっていると、ディルにチョンッと背中を突かれた。


「やめてやれ、解体が追い付かないと思うぞ。あっ・・・午後は俺も屋敷に解体の手伝いに行くかなぁ」

「そしたら私達も一緒に行きましょうか。マリちゃん、料理大会に出たいんでしょ? 受付を済ませないと」

「分かった!」


マリちゃんが「楽しみ!」と瞳を輝かせる。


「そうだ!マリちゃん用に小さいお魚を捕まえて来たんだった!ディル! お魚!」


わたしがディルに視線を向けると、ディルがリュックの中からお魚の入った革袋を取り出して、中身をマリちゃん達に見せてくれる。


「うわ~!たくさん! ありがとうソニアちゃん!ディルお兄ちゃん!」


マリちゃんがお魚を覗きながらぴょんぴょんと跳ねる。


 喜んで貰えて良かったよ! やっぱりわたしがお姉ちゃんだよね!


昼食を食べ終わったジェシー達は、揃って島主のお屋敷に向かっていった。カカとプラティも大会に参加するらしく、私達が持って来たお魚を裏の氷室に入れると、「早めに戻ってくるよ」と言ってジェシー達に続いて宿を出ていった。


「俺はどうしようかな~」


ディルが「うぅん!」と伸びをしながら退屈そうに言う。


「ふぁ~~ぁ、わたしはゆっくり昼寝でもしようかなあ」

「ソニアがそうするなら俺も部屋で休むか。起きたら屋敷に行くか~」


わたしとディルは二階に上がって、それぞれ男女に別れて部屋に入ろうとする。


「ソニアもこっちだろ?」


ディルが自分が入ろうとしている男性側の部屋の扉をコンコンと叩きながら言った。


「え、わたし女だよ?」

「そうじゃなくて、ソニア1人で扉開けられないだろ? 入ったら出られなくなるだろ」


 ・・・そうだった!


わたしはディルと一緒に男性側の部屋に入る。そして、ベッドの上に置いてある枕の上で、寝心地のいいポジションを探してもふもふしていると、ディルがボフンっとベッドに勢いよく座った。わたしは衝撃で少し跳ねた。


「そういえば、水の妖精に聞いたのか?」

「へ? 何が?」

「ヨームが言ってただろ? 魚が食べられなくなった原因は水の妖精だって」


 あっ、忘れてた。マリちゃんに渡すお魚と波の妖精のことしか考えてなかったや。


「まぁ、また会う機会はあるだろうし、その時は忘れずに聞くよ」

「別にそこまで気になってるわけじゃないから、どっちでもいいけどな」


 わたしは気になるよ。・・・忘れてたんだけどね。


枕の上で良い感じのポジションを見つけたわたしは、丸くなって寝る態勢になる。


 このワンピース、可愛くて気に入ってるんだけど微妙に寝づらいんだよね。作ってもらった手前少し言いづらいんだけど。それに羽が邪魔だ。仰向けで寝ると凄い違和感を感じる・・・でも、何故か起きたら必ず仰向けになってるんだよね。不思議だ。


「おやすみ、ソニア」


ディルの優しい声を最後に、わたしは意識を手放した。



 んん・・・なんか・・・聞こえる。


「・・・そんなにチラチラと見て、ディル君は分かりやすいわよね」

「あ・・・は!? 見てないし!」

「ふふっ、ディル君も男の子だもんね」


 ディルに・・・ジェシー?


わたしは「ん~~!」と背筋を伸ばして起き上がる。やっぱり仰向けになってた。しかも両手を上げて。わたしに気が付いたジェシーがニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべてディルとわたしを交互に見る。


「あら、ソニアちゃんおはよう。今ディル君がソニアちゃんの・・・」

「っわあああ! いいから!言わなくていいから!」


ディルがわたしの前に出て、ブンブンと両手を振る。


 どうしたんだろう? ディルの顔が真っ赤だ。


寝ている間に乱れていた服をジェシーがキュッキュッと直してくれる。その間に部屋を見渡すと、マリちゃんの姿が見当たらない。ついでにヨームも。


 ・・・マリちゃんは厨房でお手伝いかな?


「ヨームはまだ戻って来てないの?」

「あいつなら、早くても明日の夕方くらいだと思うぞ」


デンガが窓の外を眺めながら言う。


「デンガはヨームがどこに行ったか知ってるの?」

「知らないが、予想はつく。グリューン王国の港町に荷物を取りに行ったんじゃないか?」

「そういえば、宿代の延長が続いてるって言ってたわね」


 確かに・・・お金が発生するなら早く荷物を取りに行かないとだね。


わたし達が部屋で明日の予定を話し合っていると、マリちゃんが「そろそろお客さんが来るって!」と元気に言いながら扉を開けて入って来た。


皆で宿のお手伝いをして夕食を済ましたあと、それぞれ男女に別れて部屋に戻って寝る準備をする。

ちなみに、夕食は今日わたし達が持って来た小さなお魚を使った炒飯みたいな物だった。お魚を使った炒飯なんて初めて食べたけど、なかなか美味しかった。


「そういえば、わたしが寝ている間に何を話してたの?」

「ちょっとディル君をからかっていただけよ。これからはディル君と二人きりになるんだから、寝る時は気を付けてね。おやすみ、マリちゃん、ソニアちゃん」


そう言ってジェシーはベッドに横になって布団を被った。わたしは例の如くマリちゃんの上で寝る。


 ・・・うーん、何に気を付ければいいんだろう? もしかして、実はわたしも寝相が悪かったり?


翌日、わたしは厨房でマリちゃんと一緒にお魚の研究だ。二人だけじゃ心配だからとジェシーも一緒にいる。カカとプラティはブルーメの主婦達が集まって行われる会議に行った。そこでお魚料理についての情報交換をするらしい。デンガは昨日夕食の間にわたしが教えた釣りをしに海に向かい、ディルは「修業してくる!」と言い残して水の山に走って行った。


「それじゃあ、わたしからマリちゃんに特別に美味しいお魚レシピを教えます!」

「よろしくお願いします!」


マリちゃんがバッと腰を90度に曲げてお辞儀した。


 うんうん。礼儀正しいね。いい子いい子。


「マリちゃんだから教えるんだからね。他の人に教えちゃダメだよ?」

「うん!」

「ねぇ、ソニアちゃん。私はいいの?」


厨房の端に椅子を持って来て座ったジェシーが「思いっ切り見えてるけど」と言う。


「ジェシーはいいの。マリちゃんのお母さんだし、大会には出ないんでしょ?」

「そうね、私はマリちゃんを応援するから出ないわね」

「なら大丈夫! あ、でもジェシーも皆にレシピを教えたらだめだからね!」

「分ってるわよ」


わたしがマリちゃんに教えるのは、人間だった頃によく作っていた物だ。美味しいし、お金もそんなにかからないし、意外と簡単に出来る。そしてお酒に合うのだ。特に日本酒ね。幸いこの世界にも似たような調味料があったので久しぶりに懐かしい味を堪能できそうだ。


「どう・・・かな? お母さん、ソニアちゃん。美味しくできたかな?」


マリちゃんが出来上がった料理を持って、試食するジェシーを心配そうに見上げる。


「ん~!美味しいわね! 流石マリちゃん!」


ジェシーが頬を押さえて幸せそうに笑う。マリちゃんがホッと胸を撫でおろした。それを見て、わたしも試食する。


「この味~! お酒が飲みたくなるね!」

「ソニアちゃん、お酒飲めるの!? まだ8歳でしょ?」


ジェシーがギョッと目を見開いてわたしを見てくる。


 ・・・どうなんだろう? 妖精になってから飲んだことないけど・・・大丈夫だよね? 今度飲む機会があれば気を付けて飲んでみよう。


午後はアザレアが来て、料理大会の詳細な打ち合わせをした。最初にわたしから挨拶をして欲しいと言われたので、「皆がびっくりするような挨拶考えておくね」答えたら、「大丈夫です」と言われた。

 

 ・・・どっちの意味の大丈夫なんだろう。


ちなみに、料理大会は予選は行わずに武の大会が終わる二日目の最後にやるらしい。参加者の人数的に予選を行う必要はないみたいだ。それでも急に開催が決まったにしては集まっているそうだ。


「それと、先日の魔物の件なのですけど、ソニアちゃんさえ良ければ魔石や素材を大会の賞品にしたいのですけれど・・・」

「いいよ!」


申し訳なさそうにお願いするアザレアに食い気味に返事をする。


「え、いいのですか? かなり貴重な物だと思うのですが」

「いいのいいの! 料理大会はわたしが言い出したことだし! それにわたしは妖精だから魔石を使えないしね。あ、でも素材に関してはディルにも聞いてみていい? 全部はいらないけど、もしかしたら少し欲しいって言うかもしれないから!」

「そう言って下さると助かります。素材に関しては一応全種類のを少しずつ取って置きますね」


 男の子はそういう素材で良い武器や防具を作るのが好きそうだもんね。きっとディルも好きに違いない。


「それでは、当日の朝に島主のお屋敷で待っていますわね」


アザレアが帰って暫くすると、カカとプラティが戻って来た。わたしがカカにお願いされて一所懸命に天井の掃除をしていると、自分よりも大きなリュックを背負ったヨームが「戻りました~」とのんきな声で言いながら扉を開けて戻って来た。

読んでくださりありがとうございます。ディル、思春期。

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