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4.新しい出会いと森と川

「ほら、いつだったか人間に会ってみたいって言ってただろう?」


「言ったけど・・・」

 

 ・・・だけど、この2人はわたしを人間に会わせたくないんだと思ってた。過去に何回か近くにある村に行ってみようとしたことがあったけど、なんだかんだと理由をつけて行かせてくれなかった。何か人間に合わせたくない理由があるのかと思って直接聞いたこともあるけど「な、何もないわよ!?」以外の答えはもらえなかった。


「わたしが人間に会ってもいいの??」


羽をパタパタとさせて期待を込めた目で2人を見つめる。

ミドリちゃんが今まで見たことのないような真面目な顔でガマくんを見る。


「会うだけなら問題ないだろう。それに、人間がこの森に立ち入らない理由も気になるし、あの子供が何故森に入ってきたのかも気になる」

「それもそうね・・・」

「じゃあ、その理由を聞いてくればいいんだね!?行ってくる!!」


 この5年間、何も変わらない日々を送っていた。争いごともなく平和な毎日だった。でもそれじゃあつまらないよ。せっかくの異世界!このままここで何千年も過ごすなんて退屈過ぎる!さあ!新しい出会いが待っている!!


「あっ、待ちなさい!」


意気揚々と家から飛び出そうと、体を浮かせて発進したところでミドリちゃんに羽をガシッとつかまれた。


「いひゃい!!」

「よく聞きなさい!会って話を聞くだけよ? 人間に酷いことをしたり、ついていったりしちゃダメだからね?」

「はーい」


手を挙げて返事する。


「本当に分かってるのかしら?」

「分かってるし!過保護だよ!」

「あなたはまだ5歳で、この世界のことをよく知らないじゃない」


 5歳って・・・人間の頃を合わせたら20代後半だよ。それでも何千年も生きているミドリちゃんからすればまだまだお子様なんだろうけど。


「話は終わったかい?それじゃあ・・・」

「行っていいんだよね!いってきまーっす!」

「場所の説明を・・・」


今度こそ意気揚々と家から飛び出した。


 最後にガマくんが何か言っていた気がするけど、きっと「いってらっしゃい」的なことだろう。


「ふんふんふーん♪」


鼻歌を歌いながら川を下っていく。


 そういえば、ガマくんが言ってた人間の子供ってどこにいるんだろう?


「ま!この川沿い以外に人が歩けそうなところなんてないし、そのうち会えるよね!」


それから、暫く川を下っていると森を抜けた。抜けてしまった。どうしようかと考えていると、どこからか人の声が聞こえてきた。


 ん?何か聞こえるような・・・


「ねえ、本当にあの子に行かせてしまって大丈夫かしら?まだ10歳なのよ?」

「仕方ないだろう、もう村には森に入れるような若者はいない。それに、アレが自分から行くと言ったんだ」


村がある方角から人の話声が近づいてくる。


 どどど、どうしよう!? ガマくんに人間に会ってもいいとは言われてるけど・・・あの人達はガマくんの言ってた人間じゃないよね? 明らかに子供じゃないし!


「隠れなきゃ!!」


近くの木に実っていた林檎のような果物の陰に隠れた。


 羽、はみ出てないよね?


歩いてきたのは、50代後半くらいのボロボロの服を着たおじいちゃんと30代後半くらいの女の人と、やけに身綺麗な格好をした小太りのおじさま。


 大きい・・・当たり前かもしれないけど妖精のわたしと人間の彼らではまったくサイズが違う。これなら妖精達が人間を警戒するのも分かる気がするよ。あんな大きな生物に追われたりでもしたらトラウマになっちゃう。


「む?あの子は本当に森に向かったのか?人が入った形跡がまったくないぞ」

「恐らく森に入らず、この村から逃げたんでしょう。それより、こんなところに長居していては妖精の怒りに触れてしまうかもしれない、あの子供が森に入ってないことが確認できたのですから、さっさと戻りましょう、村長さん」


 そんなとこに突っ立ているだけでわたしは怒ったりしないし、ガマくんは「森に人間の子供が入った」と言っていた。あのおじさんの言ってることは全て間違っている。


「はぁ、そうだな、あの子には期待していたんだが・・・村はもう捨てるしかあるまい」

「あの子、どこに行ったのかしら?」


村長と呼ばれていたやせ細ったおじいさんは、何もかもを諦めたような悲しそうな目をして俯いた。他の2人も表情は分からないけど、村の方をジッと見つめている。


 村を捨てるとか言いっちゃてるし、話が重いよぉ。


ひとまず森に戻って、ミドリちゃん達に報告しに戻ろうと、隠れていた果物からそっと離れようとした瞬間、少し遠くから男の子の叫び声が聞こえた。


「村長にミーファおばさん!」


10歳くらいの黒髪黒目の男の子が満面の笑みでこちらに駆け寄ってきた。


「心配して来てくれたのかー!?」


「デル・・・!?」

「村長、何度も言ってるけど俺の名前は()()()だよ!デルじゃない!」


 ・・・「ディ」って言えない人、たまにいるよね。


「そんなことよりディル、どこに行っていたの?森の中には行ったの?大丈夫だったの?」

「うん、ただの森だった。動物はたくさんいたけど魔物は一体もいなかった。それに美味しそうな果物がたくさんあった。あと、ミーファおばさんの言ってた妖精は見かけなかったな」


 うん。わたしも人間を・・・というかあなたを見かけなかったからね!


「そうかそうか!やはり、あの噂はただの噂だったのだな。妖精はいない! ならばよい!さっそく国に報告してもらって、あの森を開拓してもらおう」


 え!? なんだって!?


「ところでディル、どうして進みやすい川沿いから入らなかったの??」

「え、だってこっちは()じゃなくて()じゃないか」

「「???」」


 ちょちょちょ、まずいよ!森を開拓とか言っちゃってるよ!ミドリちゃんに怒られるとか言ってらんないよ!放置してもっと面倒なことになる前に止めなきゃ!!


わたしは「よしっ」と気合を入れて人間達の前に飛び出して両手を広げる。


「止まりなさい!そんなことさせないよ!!」

読んでくださりありがとうございます。少年・・・ではなく、まだ男の子ですね。少しおバカなところが可愛いです。

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