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ちっちゃい妖精さんになりました! 暇なので近くにいた少年についていきます  作者: SHIRA
第2章 グルメな妖精と絶景のブルーメ
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48.アザレアの議事録

「料理大会・・・ですか?」


王子様が「詳しく説明してくれ」と目で訴えてくる。


「お魚料理大会!武の大会と連動して開催するの!」


 我ながらいい考えだと思うんだよね。武の大会も盛り上がるし、お魚料理を広められるし!さらに、わたしも楽しい! 一石二鳥どころじゃないね!


「料理大会とは何ですか?何をする大会なんですか?」


王子様は「頼むからもっと詳しく説明してくれ」と目で訴えてくる。


「そんなの料理に決まってるでしょ!お魚料理大会だからお魚を使った料理だね」


王子様が「連動して開催か」と真面目な顔で考え込んでいる。


「武の大会が終わった後に、そのまま観客を帰さずに同じ場所でやるの!そしたら大会を見に来たブルーメ以外の人達にも魚料理を周知できるでしょ? ・・・あっ、そうだ!武の大会の優勝者を審査員とかにしたら面白いんじゃない!?」


わたしが捲し立てるように話すと、王子様が真面目な顔で思案する。


「武の大会まであと4日しかありません。準備が間に合うかどうか・・・それに・・・」

「あら、いいではありませんかクラウス様。今から急いでお父様に手紙を出して、人員を派遣していただきましょう。会場はそのまま同じ場所を使うんですから、そうすれば何とか間に合うでしょう。それに、グリューン王国を救ってくださった妖精様のお願いですよ」


アザレアがわたしの意見を後押ししてくれる。さすがコンフィーヤ公爵の娘さんだね。


「私からもお願い致します。ブルーメを立ち直すためにもどうか!」


ゲダイが王子様に向かって深々と頭を下げた。


「・・・ハァ、分かった。アザレア、コンフィーヤ公爵への手紙を用意して今日発の帆船で届けさせてくれ。ゲダイは町への周知を頼む。全力で参加者を募ってくれ。開催出来ても参加者がいなければ話にならないからな。大会の詳細は追って発表する」

「かしこまりました」

「分かりました」


アザレアとゲダイが王子様に頭を下げる。


「妖精様は申し訳ないですが、料理大会について色々と決めなくてはならないことがありますので・・・」


 話し合いたいってことだよね。正直そういう頭を使いそうなのは勘弁願いたいけど、わたしが言い出したことだし、ここは我慢しよう。


「今日は何にも予定はないからじっくり話し合おうね!一緒に料理大会を成功させよう!」

「俺は何をしてればいいんだよ・・・」


気合を入れるわたしとは対照的に、ディルはあまり乗り気ではないみたいだ。


「ディルも一緒に考えようよ!ねぇ王子様、ディルに何か食べ物を出してあげて欲しいんだけど!」


 食べ物があればディルもここに留まってくれるハズ!


「分かりました。お茶とお菓子を用意させます」


王子様がお屋敷の執事を呼んでお茶とお菓子を頼むと、それ程時間がかからずに沢山のクッキーと冷たいお茶が運ばれて来た。ディルがクッキーを食べ始めると同時に手紙を出していたアザレアが戻って来た。アザレアをチラッと見た王子様がわたしを見て話し始める。


「それでは、料理大会の詳細を決めていきましょう」


わたしと王子様とアザレア、そこにオブザーバーのディルを添えて話し合うこと数時間、気付けばお昼過ぎになっていた。ディルのお腹から「ぐぅぅぅ」と大きな鳴き声が聞こえた。


「ディル、あんなにお菓子をバクバク食べてたのに・・・」

「いくら食べても菓子じゃあお腹が膨らまないんだよ・・・肉が食べたい!」


ディルがまるで子供のように我儘を言う。


 ・・・ディルはまだ子供か。なら仕方ないね。


「大体のことは決まりましたし、あとの細かいことはわたくしとクラウス様の2人で話し合いますからソニア様とディルさんは自由にしていただいて結構ですわよ」


アザレアが書いていた議事録のような物をテーブルに置いて、チラチラと王子様のことを見ながら言った。わたしはアザレアが置いたメモ用紙の上に立って、何が書いてあるのか見てみる。そこには、わたし達が話し合った事が箇条書きで記されていた。



~ソニアちゃん考案!プリティ料理大会~


・参加条件はある程度料理ができる人、年齢制限はなし

・審査員はわたくし、クラウス様、ソニアちゃん、武の大会の上位2名(毒見役)

・審査方法は点数式。毒見役で10点ずつ、他3名で20点ずつの計80点

・開催日時は武の大会最終日の表彰後、参加者の人数によっては前日に予選

・料理に使用する魚は各自で用意、可能なら運営側で何種類か用意

・わたくしの席はクラウス様とソニアちゃんの隣



「えーっと・・・ソニアちゃん考案?プリティ料理大会・・・?」

「え・・・ちょっ! ソニアちゃ・・・様!?」


わたしが読み上げようとしていたら、アザレアが慌ててメモ用紙をバッと取り上げた。


 色々とツッコミたいところはあるけど・・・そんな赤面するくらい見られたくないのなら、こんな見えるところに置かなければいいのに。


「別に様はいらないよ、ソニアちゃんって呼んでいいからね!」


わたしはアザレアを見上げて微笑む。・・・けど、アザレアは首を横に振る。


「そ、そんなわけにはいきませんわ!お父様達もクラウス様もソニア様と呼んでいます。わたくしだけそのような呼び方はできません」

「そういえば、城のメイドさん達はソニアちゃんって呼んでなかったか?」


ディルが痛いとこをついた。アザレアが「うぅ」と言葉に詰まり、必死に言い訳を考える。


「メ、メイドは平民です!わたくし達は貴族なのですから・・・」

「アザレア」


王子様がアザレアの言葉を遮って名前を呼んだ。アザレアが「なんですか?」と少し頬を膨らませて王子様を見る。


「ソニア様が許可をくれたのだから、他の貴族がいない場面だけでもそう呼んだらどうだ?」


王子様が優しい微笑みをアザレアに向ける。


「しかし、クラウス様が・・・」

「私は気にしないぞ。むしろ婚約者となったのだから取り繕わない姿も見せてほしいくらいだ」

「で、でしたらクラウス様以外の貴族が居ないところでは、ありがたくソニアちゃんと呼ばせてもらいますわね」


アザレアが手に持っているメモ用紙を必要以上に小さく折りたたみながらそう言った。


 アザレアはコンフィーヤ公爵ほどお堅くはないみたいだね。


わたしとディルはお屋敷を出て、町に買い物に行く。本当なら物価が高騰しているブルーメではあまりお金を使いたくないんだけど、王子様に別れの挨拶をした時に「これでブルーメにお金を落として行ってくれ」と銀貨が何枚か入った袋を貰ったので、それで今日のお昼ご飯を食べたり、気になる物を買ったりするつもりだ。


「それにしてもこの袋、銀貨だけじゃなくて大銀貨も入ってるぞ」


ディルが袋の中を覗きながら言う。


「へぇ~、多いの?」

「ルテンのお店に売ってるパンが銅貨2枚くらいだぞ。大銀貨1枚もあれば、えーっと・・・何個だ?たぶん20個以上は買えるんじゃないか?かなり多い」

「ふーん」


 ・・・言われてもよく分からないや。そういえば、ディルは今いくらくらいのお金を持ってるんだろう?この先どれくらい必要になるのか分からないけど、充分な蓄えはあるのかな?


「ちなみに、ディルは今どれくらいのお金を持ってるの?」


ディルは自分のリュックの中からお金が入った袋を取り出して中身を確認する。


「えっと、大銀貨が5枚と銀貨が12枚と銅貨が数枚か・・・小金貨3枚分くらいか」

「それでこの先足りるの?」

「・・・足りると思うか?」


ディルは静かに袋をリュックに仕舞ったあと、引き攣った笑顔でわたしに問いかけた。


「いや、分かんないよ!そんな心配になるような額しかないの!?」

「節約すれば30日くらいは大丈夫・・・かもしれない」

「え~・・・、超不安なんだけど」

「その30日で稼げば大丈夫だろ!」


 ・・・でも節約して30日なんでしょ?そんなんで働きながらお母さんとお父さんを探すのは大変じゃない? ・・・って言いたいけど、折角前向きになってるんだし不安を煽るようなことは言わないでおこう。


途中でディルが銀貨2枚を支払ってホットドックのような物を買い食いしながら町中を散策していると、向かいから大量の木札と数枚の紙を両手で抱えた紺色の髪の中年男性が歩いてきた。


「あれって、お屋敷にいた人じゃない?島の偉い人の・・・そうゲッターさん!」

「島主のゲダイさんな」


いつの間にか3本のホットドックを食べ終わっていたディルが、ピシッとわたしにツッコミを入れる。ゲダイがわたし達に気付いて少し歩くスピードを上げて向かって来た。


「ソニア様にディルさん。お話合いはもう終わったんですか?」


ゲダイが木札の山から顔を覗かして言った。


「うん、大体ね! 細かいことはこれからアザレアと王子様で話すんだって!わたし達はディルのお腹が鳴ったから先に退席して来たの!」

「違うぞ!話がひと段落したから帰らせて貰ったんだ!」


ディルが慌てて否定するけど、どっちかというと前者だと思う。


「そ、そうなんですか。順調に話が進んでいるようでなによりです」


ゲダイが持っている大量の木札を抱え直しながら言った。


「ゲダイさんは何をしてるんだ? それ、持つの大変そうだけど代わりに持とうか?」

「お気遣いありがとうございます。ですがこれは料理大会の開催を宣伝する為の物で、これから色々な場所に配って行かなくてはなりませんから、長い時間付き合わさせるわけにもいきません」

「2人で配ればそんな長い時間かからないだろ?」


そう言って、ディルがゲダイの持っている木札の半分くらいをサッと掠め取った。


「あ・・・」

「ソニアの無茶ぶりに付き合わせてるんだから、俺もこれくらいはやるよ。どこに配ればいいのか教えてくれよ」


 付き合わせてるって言うけど、この人とわたしはWinn-Winnの関係なんだよ!


ゲダイは諦めてディルに配る先を教えると、「配り終わったらそのまま自由にしていただいて結構です、本当にありがとうございます」と言って足早に去って行った。ディルが持っている木札を配るのは町の東側にある宿が数軒で、余った木札は通行人に渡すか住宅の郵便受けに入れるかして欲しいとのこと。ゲダイが持っていた紙は町の掲示板に貼るらしい。


ちなみに木札には、『可愛い妖精様主催の料理大会開催決定!! 日時は武の大会の後、詳細は後日発表予定』と書いてあった。

読んでくださりありがとうございます。どうでもいいことですがアザレアとコンフィーヤ公爵は左利きです。

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