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257.妖精のわたし(前編)

それは遥か昔。

人類は未だ存在せず、それどころか惑星も、宇宙すらも存在しない。

約300億年前。


「・・・」


ソレは突然のことだった。


「・・・?」


最初に生まれたのは感情だった。


 不安、恐怖、孤独。


そんな存在に近寄るもう一つの存在がいた。

果てしない闇の中に、ポツンと。

形は無い。

色も無い。

それでも、そこに在るのが認識出来た。


「・・・!?」


何かが在る。

そう認識した途端、ソレに形が出来た。

黒い球体になり、縦長になり、そこから四本の棒が伸びる。


「・・・?」


ソレは上の2本の棒を奇妙に動かし、こちらに何か訴えているように見える。

そこで、こちらにも形があることを認識する。

金色の球体だった。

自由自在に形を変えられる。

黒い存在の真似をして、縦長にして、四本の棒を伸ばしてみる。


「・・・!」


すると、黒い存在は二本の棒を勢い良く振った。

こっちも真似して振ってみる。


「・・・!!」

「・・・!!」


ソレらは、初めて共感した。


・・・。


2つの存在は数億年を掛けて様々な感情を経験し、学び、自分を認識し、言語を生み出し、個性を生み出し、それに比例して体も自然と形成されていった。


そうして、【わたし】が生まれた。


「つまりね。何かに認識されて初めて、存在はそこに在るというこを証明できるんだよ」

「うん? そうなんだ?」


目の前の黒い存在が訳の分からないことを言う。黒い存在は未だに自分の形を固定させようとしない。

わたしの体はもう固定されている。金色の髪の毛で、移動する為の羽と足、対話する為の顔や手。そして、何の為にあるのか分からないけど、上半身の触り心地のいい2つの胸に、お腹にある小さなおへそ。


 わたしが自分で考えたんじゃなくて、気が付いたら自然とこうなってたからね。きっとわたしに必要な形なんだろうけど、何に使うのか分からない部位が何個かあるんだよね~。このお腹の小さな穴とか、股の部分とか・・・とりあえずそこの部位の名前は付けてみたけど、やっぱり分からない。無駄に穴が多すぎる気がする。


「ねぇ君。聞いてる~?」

「聞いてないよ!」


元気に返事をする。


「ハァ・・・君は発想力や感情を表現することに関しては凄いのに、致命的に知能が低いよね~。可愛さに全振りしたのー?」

「しょうがないじゃん。あなたの知能が高すぎるんだよ。でも、お互い違う同士だからこそ色々なことが発見出来て、学べて、たくさんの言葉を考えられたんだよ? むしろ、わたしの知能の低さを褒めて欲しいね!」


胸を張って得意げに笑う。この動作も、ずっと前にわたしが考えた。こうして言葉を放つと気持ちいいんだよね。


「それにしても、不思議だと思わない?」

「この2つのぼよぼよのこと?」

「君のその前方に付いている胸とやらの用途も不思議だけど、それじゃないかなー。俺達が生まれた理由についてだよ」


黒い存在は話しながら周囲を見渡す。


「君は馬鹿だから詳しいことは話さないけど、いくら考えても俺達が生まれる前に何か、もしくは誰かが存在していないと成り立たないんだよね~。そして、その誰かが存在する為には、その前にも何かが無いと成り立たない。でも、俺達が生まれた時は周囲には何も存在していなかったし、今も変わらないんだよ~」

「ふーん・・・」


 難しい話をしてるなぁ。


「君は不思議に思わないの?」

「別に? よく分かんないけど、理由が無いといけないの?」

「いけないわけじゃないけどさ~。俺達の存在を証明出来ないんだよ」

「ふーん・・・」

「ハァ・・・頼むからもう少し興味を持ってよ~」


そんな感じで黒い存在は難しいことを考えながら、わたしはのーんびりとダラダラしながら過ごすこと・・・過ごすことどれくらいが経ったのかな? 何か分かりやすい言葉? 単位?を考えた方がいいかもしれないね。


ともかく、暫くそうして過ごしているうちに新しい発見があった。


「君のそれ・・・なにかな?」

「これ? ()って名付けたよ!」


わたしは指先に光を出して微笑む。さっき、何気なく指遊びしてたら光ったんだよね。あら不思議。


「それ、どうやったの?」

「どうやったって・・・分かんないよ。こうやって指で遊んでたら・・・ぱぁぁってなった」

「パァァ? それはどういう意味の言葉なの?」

「え、分かんない。何となく口から出てきた」

「分かんないばっかりだね~」


 しょうがないよ。だって分かんないんだから。


黒い存在はわたしと同じように指の形を作ったり、「ぱぁぁ」と言ってみたりしたあと、黒い影をモヤモヤさせ始める。これは長考に入る時の合図だ。わたしは黒い存在から視線を外して光で遊ぶ。


・・・。


「あ、分かった~」


黒い存在が突然そんなことを言う。


「え、何が?」

「俺達が生まれた理由だね」

「久しぶりに喋ったと思ったら、いつの話をしてるの?」

「まぁまぁ、細かいことはいいから聞いてよ」

「うん・・・」


 まったく何の話なんだか思い出せないんだけど・・・。


「馬鹿な君にも分かりやすく言うと、俺達は観測者なんだよ」

「???」

「あらゆる現象は、意志ある者に観測されて初めて確定する」

「???」

「例えば、俺と君が同じ方向を向いているとする」

「うん」


実際に黒い存在と同じ方向を向いてみる。


「今、俺達の後ろには何がある?」

「いや、何も無いと思うけど・・・何かあったことなんて無いでしょ」

「そう。今は何も無い。でも、何かあるかもしれない。俺達が振り返るまでは分からないでしょ?」

「まぁ・・・そうなのかな」

「つまり、俺達の後ろには何も無い状態と、何かある状態の2つの状態があることになる」

「うん」

「そこで、俺達が振り返ってみる」


2人で後ろを振り返る。そこには、わたしがさっき遊んで出した光の玉がふわふわ浮いていた。


「ほら、俺達が振り返る(観測する)ことで何かある状態が確定した。言いたいことは分かった?」

「分かったけど・・・わたし達が生まれた理由と何か関係あるの?」

「君は本当に馬鹿だなぁ。つまり、俺達はこの無の状態から何かを誕生するのを観測する為に生まれたんだよ」


いまいち頭が追い付かない。わたしは首を傾げる動作をする。困った時にこうすれば、何となく間が持つ。


「俺は俺達の存在を証明する何かを考えてたけど、逆なんだ。俺達が何かを証明するんだよ」

「何かって・・・これとか?」


もう一度指に光を出して見せる。


「そうだね~。その場合、君は光を証明する存在になる」

「じゃあ、わたし達はこの光みたいに色々な現象を生み出していけばいいってこと?」


 面白そうになってきた!


「いや、俺達は何もしない。確かにこうして()()()()()()()を伝って喋れている以上、光以外にも何か生み出せそうだとは思う。でも、俺達はあくまで観測者だ。『その時』が来るまで待っているべきだよ」


 ちぇ~。面白そうだと思ったのにな。


・・・。


「暇だよ~・・・暇だよ! 暇だよ! 暇だよっ!!」


黒い存在の肩にあたる部分を掴んでゆさゆさと激しく揺さぶる。


「ひまひまひま~~~!!」


黒い存在の顔面にあたる部分をバシバシと激しく叩く。


「暇だよ! ひm―――」

「やめてよっ!」


顔面を叩いてた手をバシッと叩かれた。


「さっきからいったい何なの!? 俺は今色々と思考中なんだから邪魔しないでよ!」

「だって! 最初の頃はちゃんと相手して遊んでくれてたのにっ! 最近は思考中とか言って全然遊んでくれないじゃん!」

「俺はこれから起こる未来の事象を予測してたの! 惑星が出来て、生命が誕生して、巨大な生物に進化して、一度絶滅するところまで予測出来てたんだよ!? なのに君のせいで考えが霧散しちゃったよ!」

「はい? 予測? 何を難しいことを言ってるの?」

「難しいことなんかじゃないよ。あらゆる物質を全て観測することが出来れば、未来を予測することなんて容易いんだよね。ま、今はその物質がまだ生まれてないんだけどね~」


 相変わらずおかしなことを言ってるなぁ。


「ところで、君のその・・・体に付いているものはなに?」


黒い存在がわたしの体を上からの下に指を差す。


「これ? これは服って言うんだよ! 暇だったから創ったの! 光で出来てるんだよ! どう?」

「どうと言われても・・・何か意味があるものなの?」

「可愛いでしょ?」

「さぁ・・・わざわざ隠す意味が分からないね~。俺は自然体の方が美しいと思うけど・・・というか、あまり余計な物を生み出さないでくれない? 君のせいで俺の未来予測の精密度が下がっちゃうんだよ」


顔は無いけど、めちゃくちゃ不満そうなのが伝わってくる。でも、気にしない。


「そんなことよりさ」

「そんなこと!?」

「うん。そんなことより、前に言ってた()()()っていつ来るの? あれからだいぶ待ってると思うんだけど・・・」

「さぁね。いつかは分からない。でも、必ずくるよ」

「ふーん・・・」


 じゃあ、この暇な時間がまだまだ続くってことかぁ。・・・・・・あっ! 良いこと思いついた!


わたしはもう一度黒い存在の顔部分をバシバシと叩く。


「やめてってば!」

「聞いてよ! 良いことを思い付いたんだよ!」

「聞くから叩くのをやめてよ!」


仕方ないからやめてあげる。そして、わたしは大きな胸を張って口を開く。


「わたし、暇だから分裂する!」

「は?」


 わぁ、黒い存在のこんなマヌケな声は初めて聞いたよ。新鮮だぁ。


「ほら、わたしって光以外にも色々と出せるでしょ?」

「いや、初めて聞いたけど・・・」

「あなたが長いこと考え込んでる間に生み出せるようになったの! ほら!」


わたしは手を前に差し出し、光以外の様々な現象を生み出す。まだ名前は付けてないけど、赤くゆらゆらと揺れるもの、ふよふよと浮かぶ青色のもの・・・それらを出して黒い存在に見せる。


「本当に君は・・・うん? まって分裂するってまさか・・・」


 さすが! 理解が早いね早すぎるね!


「そう! 前にわたし達は現象を観測して証明する存在だって言ってたでしょ? でも、さっき見せたみたいに現象って光以外にもたくさんあるみたいなの。だったら、それぞれの現象に証明する存在が複数いたっていいと思わない?」

「思わないよ! 俺、何もしないで『その時』が来るまで待ってようって言ったよね!?」


 確かに言ってたね。ちゃんと覚えてるよ。


「でも、暇なんだもん!」


 わたしが複数いれば、きっと楽しいよね! 黒い存在と一緒にいても遊んでくれないからつまんないもん!


「じゃあ、やっちゃうよ~!」


そう言いながら、わたしは手を広げる。


「え、ちょっ、まさか・・・やめて! 無理だから!」

「そんなのやってみないと分からないよ!」


 わたしの存在が消えないように光だけは手元に残してっと・・・


「えいっ!!」


光以外の現象を、わたしの中から分裂させる。


 よしっ! これでわたしが何人も・・・


「あれ?」


キョロキョロと周囲を見渡してみるけど、わたし以外にわたしの姿は見当たらない。代わりに、キラキラとした塊みたいなのが見渡す限りに散らばっている。


「なにこれ・・・もしかして失敗?」

「もしかしなくても失敗だよ。・・・だから言ったじゃんか~」

「どうして!?」


黒い存在の肩にあたる部分をガシッと掴んでゆさゆさ揺さぶる。


「君は光以外の現象に何か名前を付けたりした?」

「してないよ?」

「じゃあ、それだよ」

「え!? 名前を付けてないから失敗しちゃったの!?」


 そんな・・・先に名前を付けて置けばよかったぁ。


「まぁ、名前はそこまで関係無いんだけどね~。要は、君が光以外の現象を何となくでしか把握していないからだね。だからまだ現象として確定してない。結果、中途半端なものが散らばって、君は無駄に力を失ったんだよ・・・」

「そんにゃぁ~」


 ガックリだよぉ。


「じゃあ、この散らばってるキラキラはいったい何なのさ?」

「うーん・・・そうだね。まだ何にもなっていない、何にでもなれる・・・()()()()()とでも言おうかな」


 カノウセイ! なんだか良い響き!! 失敗しちゃったけど、これはこれでよかったかも!


「君は何故か興奮してるみたいだけど、俺は凄く悲しいよ・・・」

「え、どうして?」


 これから何だか面白くなってきたっていうのに?


「俺はね? 今まで色々と推測してきたけど、それが正しいと分かるものが無かった。だから、『その時』が来て、そこからの事象を観測し続けて、俺の未来予測が正しいことを証明したかったの。それなのに君が余計なことをしたせいで『その時』が来てすらいないのに瓦解し始めたんだよ~・・・」

「じゃあ、あなたの未来予測は間違ってたってことでいいじゃん! わたしの存在を考慮してなかったのが失敗だったね!」


黒い存在の肩をポンポンと叩いて慰めてあげる。


「仕方ない。君とはお別れだね」


黒い存在はそう言って肩に置いていたわたしの手を払う。


「え・・・お別れって何をするの? わたしのこと消したりとか・・・しないよね・・・?」


声が震える。こわすぎると声が震えちゃうんだ・・・。


「安心して。君の存在を消すなんて絶対にしないし、俺はこれでも君のことが好きだからね~」

「わ、わたしもあなたのことが好きだよ! だからお別れなんて嫌だよ!」

「そう言ってくれて俺も嬉しいよ。・・・でも、俺の目的に君は邪魔なんだよね。お別れは俺も嫌だけど、こうなってしまった以上しょうがないんだよ」


黒い存在はそう言いながら、辺りに漂っているキラキラを自身に取り込み始める。


「な、何をしてるの?」

「君が考えなしに散らばせた可能性の塊を取り込んで、新たな現象を生み出すんだよ。・・・そうだね~、空間・・・いや、()()とでも名付けようかな」


複数のキラキラを取り込んだ黒い存在は、真上に手を掲げる。すると、そこに穴が開いた。


「え・・・なにこれぇ」


覗いて見ると、そこにはキラキラが一切無い、わたし達が生まれた時と同じ何も無い空間が広がっていた。


「俺はあたらしく創ったこっちの次元で『その時』を待つ。だから、君とはお別れだよ」

「待ってよ! わたしも行きたい!」

「君はこっちの次元でやるべきことがあるよ。例えば、そこらじゅうにあるキラキラの後始末とかね。このまま放置しておけば何が起こるか分からない。こっちの次元に影響でも及ぼされたらたまったもんじゃないからね~」



 後始末って・・・。


「それじゃあ・・・わたし、ひとりぼっちになっちゃうよぉ」


 今まで黒い存在がいてくれたのに・・・。


「大丈夫だよ。俺には君が関わる未来を予測するのは難しい。でも、君なら大丈夫。それだけは何となく分かるんだよね」

「わたしには分からないよ・・・後始末って言うけど、どうしたらいいの? わたしは君みたいに知能が高く無いから・・・不安だよ」

「好きにしたらいい。自由に行動したらいい。感情の赴くままに体を動かしたらいい。慎重すぎる俺には出来ないけど、マイペースな君になら出来ることだ。難しく考えるのは馬鹿な君には向いてないからね~」


 もう・・・一言余計だよ! 分かってるけどさ。


「ま、もう二度と会えないってわけじゃないよ。そのうちこっちの次元の様子を見に来るからね~」

「本当!?」

「本当だよ。君にも会いたいしね~」


 やった!


「じゃあ、暫くお別れだよ。俺に聞いておきたいことがあったら今のうちに聞いてね~」


 聞いておきたいこと・・・あっ。


「そうだ! 今まで不思議に思ってたんだけど、君ってどうしてわたしみたいに形を固定させないの?」


わたしはもう形を固定させてしっかりと体があるけど、黒い存在はずっと黒い影のままだからね。


「メリットが無いからね~。これも推測だけど、体があると、君みたいに感情に振り回されやすい気がするんだよ。興味はあるんだけどね~」


 わたし、感情に振り回されてるかなぁ? そんなことないと思うけどな。


「あっ、そうだ。俺も君と別れる前に気になることを解消しておきたいんだけど、いい?」

「うん! もちろん!」


黒い存在は「ありがとう」とお礼を言ってわたしに近付く。そして・・・


もみゅ


わたしの胸を鷲掴みにした。


「ひゃあ!」

「前から触り心地が気になってたんだよね~。ふーん・・・そっかぁ・・・なかなかだねぇ。癖になりそうだよ」

「な、何か・・・何かちょっと・・・なにこれ!?」


 今ままで経験したことのない感情だよぉ。


「ふう。スッキリしたし、お別れだね。こういう時は何て言ったらいいんだろうね? こういう言葉は考えて無かったね~」

「そうだね。別れるなんて考えて無かったもん」

「じゃあ・・・さようなら。なんてどうかな?」

「なんかちょっと悲しいね。・・・お別れって悲しいものなんだね」

「それは何だか嫌だね。じゃあ・・・またね。なんてどう?」

「うん! そっちの方がいい気がする!」


わたし達は生まれて初めて共感した時と同じように手を挙げて、精一杯振る。


「またね!」

「うん、またね~」



―――――。


「ふふふーんふふふーん」


これは言葉じゃない。そして挨拶でもない。鼻歌だ。

わたしが考えた。こうしていると、寂しさが和らぐんだよね。


「ほっ! よっ! ほい!」


暗闇の中、わたしは変な掛け声を発しながら周囲に浮いている小さなキラキラを集めては合体させる。掛け声を出す必要はないけど、こうすると虚しさが和らぐ。


「ふう・・・だいぶスッキリしてきた!」


周囲にたくさん浮いていた小さなキラキラが無くなって、それを合体させた大きなキラキラが何個も出来上がる。お陰で周囲の景色がだいぶスッキリした。


 合体させて何の意味があるか分かんないけど、だいぶイイ感じになったんじゃない?


わたしはコクリと自信満々に頷く。


「これで気持ち良く飛べるよ~・・・ふふーんふふーん」


黒い存在は感情の赴くままに動いたらいいって言ってた。だからわたしは、何も難しいことを考えずに、感情の赴くままに、ただ気持ち良く飛ぶ。


ゴッ!


「ふぎゃあ!」

「・・・!?」


 何かにぶつかった!? キラキラはスッキリさせたのに・・・というか、キラキラは実体が無いからぶつからないハズなんだけど・・・って、あぁ!!


視界の端が何かうるさいと思ったら、わたしが頑張って合体させた大きなキラキラ達がさっきの衝撃でお互いにぶつかりあい、そして爆発しちゃった。赤・青・白と光りながら無数に分裂して、四方八方に弾け飛んでいく。


「うわぁ・・・大変だぁ・・・」


 せっかく苦労して集めたのに・・・。


わたしはその原因になったぶつかったものを見る。


 え、うそ!?


そこには、暗い長い髪、暗い瞳、暗い羽、暗いワンピースの、色とか各部に大きさ形は違うけど、わたしと同じような体を持つ存在がいた。


「・・・っ! あぅ・・・あぁ・・・」


その存在は口をパクパクとさせて何かを伝えようとしている。


「わぁ! わたしと同じだぁ!」

「・・・っ!?」


わたしはその存在の手を握って、笑いながらグルグルと回る。


 すごい! 黒い存在と違って手が温かい! 温もりがある!


その存在はわたしの口を見て不思議そうに目を丸くする。


「あっ・・・コレのこと? これは言葉って言うんだよ! わたしと・・・わたしじゃないのと一緒にながーい時間をかけて考えたの!」

「・・・っ! はっ・・・うぅ・・・!」


その存在は一生懸命に口を開け閉めして、わたしの真似をしようとする。


「大丈夫! すぐに使えるようにしてあげるから!」


わたしはその存在に顔を近付けて、パチッと片目を閉じる。そして、『言葉の話し方』という情報を電波に乗せてその存在に直接送る。ちなみに、片目を閉じることに意味はない。


 何となく、こうして動きを入れた方がやりやすいんだよね。


「こ・・・とばっ・・・」


その存在は、驚愕の顔を浮かべながら恐る恐ると口を開いた。


「そうそう! そんな感じ!」

「私じゃない・・・を何て言えばいいのか・・・見つからない」


わたしに向かって手を挙げてそんなことを言う。


「ん? わたしのことを何て呼べばいいかってこと?」


その存在は肯定するようにわたしの瞳をじーっと見つめてくる。


「うーん・・・好きなように呼んでいいよ!」


 「君」でも「あなた」でも、どっちでもいい。黒い存在もそう呼んでたしね。


「・・・っ! そ・・・んにゃ・・・!?」

「え? そ・・・にあ・・・?」


 なにそれ? 「君」でも「あなた」でもないよ? 言葉の情報はちゃんと正しく送ったハズなんだけど・・・。


「ちっ・・・ちが・・・」


 違うの?


「あっ・・・」


 もしかしてこれって・・・


「ソニア!」


わたしは大きく叫ぶ。


 きっと名前だ! わたしに名前を付けてくれたんだ!


「わたしはソニアだね!」


 やった! やった! わたしに名前が付いた! そうだよね! 現象に名前は付けて来たけど、わたし自身に名前があってもいいんだよ! わたしも黒い存在もどうして今まで気が付かなかったんだろう!?


わたしはその存在を見つめてニコリと微笑む。その存在は顔を赤くした。


 顔が赤くなった・・・どういう表情だろう? ・・・あっ、そうだ。わたしに名前を付けてくれたんだから、わたしも名前を付けてあげよう!


「じゃあそっちは・・・ビオラ!あなたの名前はビオラ! わたしの名前はソニア!」


困った様子だったビオラの表情がパァっと明るくなる。そして「ソニア!」とギュッと抱きついてきた。胸はわたしよりだいぶ小さいけど、身長はわたしよりも少し高いみたい。


「ソニアのこと好き!」

「わたしもだよ! えっとぉ・・・こういう時は何て言葉を言おうかな・・・そうだ! よろしくね!」

「うん! よろしくね!」

読んでくださりありがとうございます。分かりづらいかもですが、『その時』=ビックバン、です。


黒い存在が向かった次元=自然とビックバンが起こり、宇宙が誕生する次元。

ソニアがいる次元=ソニアが気ままに行動して宇宙っぽいものを生み出す次元。


・・・こんな解釈です。

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