248.そんなこと
「雷の妖精ちゃん! 久しぶりね! いい子だからこっちに来なさい!」
追ってくる船の上で、ミドリちゃんがそんなことを叫びながら蔦をわたしに向けてひゅるひゅると伸ばしてくる。わたしは「だったら説明してよ!」と電撃で蔦を払う。
どうして? ナナちゃんがくるみ村の巨大樹の中で引き籠ってるって言ってたのに! そして一番謎なのが、ディルの両親の仲間のような立ち位置にいることだよ!
ミドリちゃんが乗ってる? 浮いてる? 船にはディルの両親以外にも大勢の人間が乗っているみたいで、今も大砲をバンバンと撃ってくる。
「ちょっとガマくん! いったいどういうことなの!? どうしてミドリちゃんがここにいるの!?」
ミドリちゃんに聞いても「いいからこっちに来なさい!」としか言わないので、近くにいるガマくんに聞いてみる。
「そんなことより、聞いてよ雷の妖精」
「そんなことより!?」
そんなことじゃないよ!?
「僕、闇の妖精に頼まれて君の記憶の欠片を集めてたんだよ」
撃ってくる大砲をひょいひょいと涼しい顔で躱しながら、そんなことを言う。
それは知ってるよ。確か、わたしが緑の森を出発する前には既にガマくんは居なかったもんね。
「まず最初に雷の妖精の布団に潜り込んでいる緑の妖精の目を盗んで、こっそりと緑の妖精が持ってる記憶の欠片を盗んで出発して・・・」
え、ミドリちゃんそんなことしてたの!?
「グリューン王国ではパン屋巡りをして、次に火の地方を探し回ったけど何処にも記憶の欠片が無くて、仕方なくグリューン王国でもう一度パン屋巡りをしてからブルーメに行って、料理大会に夢中の水の妖精の目を盗んで水の妖精の持つ記憶の欠片を盗んで・・・」
え、あの時ブルーメにガマくんも居たの!? というかパン屋巡りし過ぎじゃない!?
「そして一番大変だったのが土の海さ。海という名なのに水が無いし、日差しも熱すぎるし・・・なんとか潜り込んで土の妖精の持つ記憶の欠片を盗むのに成功したけどね。あの時はさすがに仙人掌の妖精の力が欲しいと思ったね」
ガマくんはちゃんと熱さを感じるんだね・・・わたしには分からなかったよ。
「そのあと闇の妖精から記憶の欠片を受け取る為に待ち合わせ場所に行ったのに、居るハズの闇の妖精の使い魔が見当たらなくて困ったよ。空の滝にこっそり忍び込んで闇の妖精と連絡を取ったら先に一つだけ雷の妖精に渡しちゃったって言うし・・・」
「え・・・渡されたっけ?」
そんな記憶ないけど・・・あっ! 不思議な夢!
土の地方から南の果てに向かう道中、角の生えた魔物にお腹を貫かれたわたしは、ディル曰くブラックドッグに助けられたらしい。そのあと数日間だけ寝ている間に昔の記憶を見ていた。
あのブラックドッグは闇の妖精の使い魔? だったんだ!
「そして空の地方でついでに情報収集して記憶の欠片を集めてる人間がいることを知った僕は、その人間を追って泡沫島にたどり着いたのさ」
ディルの両親のことだね。
「その人間が残りの記憶の欠片を持っていたのは丁度良かったんだけど、やたらと強い上に妖精を殺しうる力を持ってる。しかも、現地の人間達もその人間の味方をしていてね。逆に奪われたり、奪い返したりと、時間が掛かってしまったんだ」
大砲の玉をすいすいと避けながら言う。
じゃあ、今こうして大砲を撃ってきているのはその泡沫島の人達ってことになるのかな? オームが言うには泡沫島は研究者が多くてカイス妖精信仰国とは犬猿の仲だって聞いてるけど・・・って、それまずいんじゃないの!? ・・・・・・え!? 聞き間違い!? 妖精を殺しうるって言った!?
ガマくんはわたしが質問する暇を与えずに話を進める。
「そうやって人間達と争奪戦を繰り広げてたら、ある日、突然緑の妖精が現れたんだよ。どうやら本体ではないみたいだけど、それでもびっくりしたよ」
「本体じゃないの!?」
どう見ても本物の緑の妖精に見えるけど・・・。
今もディルの両親の頭上で「雷の妖精! こっちに来なさい!」と可哀想なくらい一生懸命に叫んでいる。
「たぶん、種を媒介にして意識を飛ばしてるんだと思う。もしアレが本体なら、僕はとっくに捕まってるからね。今の状態じゃあ上手く偉い妖精の力を発揮できないんじゃないかな」
「な、なるほど・・・」
だから、くるみ村の本体は巨大樹の中で引き籠ってるわけだ。
「でも、僕は優秀だからね。こうして雷の妖精の記憶の欠片を全て集めてわけさ」
「じゃあ、今これに触れたら記憶を取り戻せるの?」
「そうだけど、今はやめたほうがいい。記憶を取り戻している間は無防備になるからね」
ガマくんはそう言って蔦でグルグル巻きにされた円盤の束を振り回す。自分よりも大きいのに軽々振してるのが凄い。後ろからの砲撃も簡単に躱してるし・・・本当に優秀だ。
「おっと、そろそろ危ないね」
「え、なにが・・・」
ガマくんが前を指差す。ディル達が待つ海岸はもうすぐそこだ。ディルが「おーい! ソニア~!」と両手を上げて振っている。
「ディル!」
そこで初めて、船の先頭に乗っているディルの両親が口を開いた。・・・けど、砲弾の音とミドリちゃんの「きぃぃぃぃ! 早くしないと記憶を取り戻しちゃうじゃない! アンタ達も働きなさいよ!」という叫び声で何を言ってるのか分からない。
「雷の妖精、ボケーっとしてると危ないよ」
「うわわっ」
ガマくんに襟を引っ張られる。わたしの居たところに砲弾が通り過ぎ・・・。
「って、このままじゃあ!」
ディル達が待つ岸に直撃しちゃう!!
「ディル危ない!!」
「大丈夫だ!」
ディルは一歩前に出て、「ふん!」と砲弾を受け止めた。
えぇ・・・そんなドッヂボールのボールをキャッチするみたいに・・・。
なんとか岸に到着したわたしとガマくんは、後ろを振り返る。いつの間にか船の数が10隻くらいに増えてるけど、さすがにあの大きな船で浅瀬には来れないみたいで、近付いてはこない。
「浅瀬にも対応できる観客船と違って、あちらの船は近付けないみたいですわね」
「だが、あの旗は泡沫島のものだ。すぐに上陸してくるぞ」
杖を構えたスズメと、何故か黒猫様を抱えたオームが船を睨みながら言う。着替えてから後を追うって言ってたけど、わたしがガマくんを迎えに行ってる間に到着したみたいだ。
「雷の妖精、そこの黒い髪の少年は知ってるけど、他の人間達は誰だい? 味方と判断していいんだよね?」
「あ、うん! 味方だよ! そこの筋肉2人がキンケイとニッコクって言って・・・」
「いや、紹介は要らないよ。味方なら、戦えない人間はすぐに逃げたほうがいい。あいつらはちょっと血の気が多いからね。すぐ戦場になるよ」
ガマくんの発言に、スズメは「上等ですわ!」と杖を掲げて叫び、オームが「念のため避難勧告をしてきます!」と言ってキンケイとニッコクを連れて走り去っていく。そんな2人を横目で見ながら、わたしはディルの傍に飛ぶ。
「ディル、さっき砲弾を受け止めてたけど・・・大丈夫なの?」
「ん? ああ、こんな鉄の玉どうってことないぞ」
ドスンッと砂浜に砲弾を落とすディル。めっちゃ重そうだけどね。
「そういえば、空の妖精は? 見かけないけど・・・」
「空の妖精なら、なんかヤバい気配がするとか言って・・・おい、おいおい! マジかよ!!」
ディルがわたしの頭上を見ながら目を見開いて後退る。わたしは急いで振り返る。
え、ちょちょ!!
まず目に入って来たのは、船からこっちに跳んで来る大柄な男と、同じく飛んでくる緑の妖精。そしてさらに度肝を抜かれたのが、その遥か後ろで突如巻き起こった巨大な水の竜巻。その周囲では、空の妖精と巨大な青い龍が戦っていた。
あ、あの龍・・・なんか見覚えが・・・ってそんなこと考えてる場合じゃない!!
「まずいね・・・いくら本体じゃないとはいえ、偉い妖精である緑の妖精の相手はキツイから、僕は記憶の欠片を守ることに専念することになる。そこの人間の2人、雷の妖精を頼むよ。もし、死なせたら殺すからね」
「言われなくても!」
「お任せくださいませ!」
殺すとか脅されてるのに自信満々に応えるディルとスズメ。頼もしいね。
「こら! 莢蒾の妖精! 逃げない!」
「緑の妖精! いい加減諦めなよ!」
ガマくんが上空に逃げると、ミドリちゃんも進行方向を変えてガマくんを追いかける。
ミドリちゃんには色々と聞きたいことがあったんだけど、仕方ないか。
ドサァア!!
わたし達の前に、ディルのお父さんがダイナミックにヒーロー着地した。
「お父さん・・・」
ディルが震える声を出す。5歳の時に居なくなって10年近く行方知らずだった、ずっと探していたお父さんが目の前にいるんだ。だけど、感動の再会とはいかない。ディルは警戒するように魔剣を構えて、いつでも光の盾が出せるように左手に魔石を構える。隣のスズメも杖の先端を向けている。その上空では、ミドリちゃんとガマくんの蔦を使った追いかけっこが始まっていた。
「初めまして、光の大妖精ソニア。俺の名前はルイヴ。勇者の祖先で、光の大妖精の完全な復活を阻止しに来た。殺したくはない。暫くの間大人しく捕まっててくれないか?」
ディルのお父さん、ルイヴはディルには一切視線を向けず、何故か同情するような目をわたしに向けて優しく問う。
え、ちょっと待って。何を言ってるの? この人は・・・勇者の祖先? 復活の阻止? そんなことよりも、もっと大事なものがあるでしょう!!
「ふざけないで! そんなことより、目の前にいる自分の息子に何か言う事ないの!?」
「息子?」
ルイヴは首を傾げて、わたし、スズメ、ディルを順番に見る。
「お父さん・・・」
「お前・・・もしかしてディルか!?」
気付いてなかったの!? 父親失格だよ!
変わらず警戒するように身構えるディルと、反対に嬉しそうに目を見張らいて口角を上げるルイヴ。
「でっかくなったなぁ!」
嬉しそうにディルに近付くルイヴ。その間に杖を構えたスズメが入った。
「止まってくださいませ。ディル様のお父様」
「お、なんだ?」
「あなたは先程ソニア様を捕まえると言いました。ソニア様に危害を加える人はわたくし達の敵ですわ! 不用意に近付かないでくださる?」
「わたくし達?」
ルイヴはスズメを見て、その後ろで辛そうな顔をして身構えているディルを見る。
「ディル、お前もお父さんとお母さんの敵に回るのか?」
「・・・ああ! ソニアを傷付ける奴は・・・例えお父さんとお母さんでも敵だ!」
ディル・・・。
「ハァ・・・お父さんもお母さんもお前のことは大切に思ってる。だから手荒な真似はしたくない。お前が光の大妖精と行動を共にしていて、愛し子と呼ばれていることは知っている。それほどその光の大妖精を慕ってるんだろう。だが、今はお父さんとお母さんを信じて下がっててくれ」
「ちっちゃい頃に俺を置いて行ったくせに今更何を言ってんだよ! 家族に置いて行かれて、友達も村から出て行って、一人ぼっちだった俺を救ってくれたのはソニアだ!」
ディルはスズメを優しく押しのけて、力強い目でそう言った。わたしも「そうだ!そうだ!」と援護する。
「村に前を置いて行ったのは悪いと思ってる。だが、そうするしかない理由があったんだ」
「どんな理由でも自分の息子を置いてくなんてありえないよ! 親失格!!」
「何も知らねぇ生まれたばかりの妖精は黙ってろ」
「ひっ」
ギロッと睨まれた。こわい。その瞬間、スズメの杖の先端が青く光り、水の弾丸がルイヴ目掛けて発射された。
「ふん!」
パシャ!
拳を軽く振っただけで、その水の弾丸は霧散する。
「おいおい・・・いくらなんでも脅しに使うにゃ殺傷力が強すぎるだろ。お嬢さん?」
「うるさいですわ! こんなに可愛らしいソニア様を怖がらせたのですから、首の一本でも切り落として然るべきですわ!」
「そ、そうだそうだぁ・・・」
ディルの後ろで震えながらスズメを援護する。ディルがそっと指で頭を撫でてくれた。自分だって複雑な心境なのに、わたしを気遣ってくれてる。そんなディルの様子を見て、ルイヴが溜息を吐く。
「ディル、そんなに光の大妖精が大切か?」
「当たり前だ!」
「その光の大妖精が、勇者物語で魔王と呼ばれていた存在で、かつて人類を滅ぼしかけた元凶だと言ってもか?」
「え?」
驚いて声を出したのはわたしだ。ディルもスズメも黙ってルイヴを見ている。
わたしが・・・人類を?
「血の気の多い連中を今も船で待たせてるから詳しいことを説明する時間はねぇが、そのちっちゃい光の大妖精がその頃の記憶を取り戻せば、今度は人類が完全に滅ぶ危険性がある」
わ、わたし記憶を取り戻してもそんなことしないよ!
って言いたいけど、さっき睨まれたのがこわくて言えない。
「本当は緑の森に産まれた直後に殺しに行ったんだが、そこにいる緑の妖精に『お願いだからやめて』って泣きながらせがまれてな」
ミドリちゃん・・・。
「俺はそれでも強行するべきだと思ったんだが、妻がさすがに可哀想だって言い出した。それで緑の妖精と取引をして、とりあえず殺さずに記憶の欠片を集めて破壊することにしたんだ」
そんな取引がわたしが産まれてすぐの頃に行われてたなんて・・・あれ? でも、それならどうしてミドリちゃんが持つ記憶の欠片はその時に破壊しなかったんだろう?
わたしがそう疑問に思ってると、ルイヴが上空で追いかけっこしているミドリちゃんに向かって叫んだ。
「今となっては正直その取引も成立しなくなってきたけどな!破壊したと思ってた緑の妖精は自分の持つ記憶の欠片は偽物だったみてぇだしな!」
「それは・・・だってしょうがないでしょう! あれは私と光の妖精の大切な思い出だもの! そう簡単に破壊されたくないもの!」
そっか・・・他の妖精にとってはそういう扱いになるんだ。だったら尚更諦められない!
「ハァ・・・まぁ、そういうわけだ。確かに俺は親失格かもしれない。でも、全人類の命を救うためだ。息子を村に置いて行くには十分すぎる理由だろ? 分かったらさっさと下がって光の大妖精をこっちに渡してくれ」
ルイヴがこちらに手を差し出す。ディルは迷いなくその手をパシッと払った。
「おいディル・・・その妖精は昔人類を絶滅させかけたんだぞ!? また人類が滅ぶかもしれないんだぞ!? 」
ディルはその言葉を無視して、後ろで浮いているわたしを振り返って見る。
「ソニアは記憶を取り戻したいんだよな?」
取り戻したい。今の話を聞いてこわいとは思った。でも、わたしを慕ってくれてる他の偉い妖精の為にも、ちゃんと記憶を・・・思い出を・・・皆との思い出を取り戻したい!
「うん! わたし、取り戻したい!」
「そうか。・・・ソニアは、記憶を取り戻したら人類を滅ぼすのか?」
そんなの決まってる。
「滅ぼさない!!」
ブンブンと首を振って答える。ディルが「相変わらず可愛いな」と笑って、スズメが「それでこそソニア様ですわ!」と得意げに胸を張った。
「おいディル・・・記憶が無い状態のそいつに聞いたところで・・・」
「うるさい! 記憶を取り戻したところで、今の記憶が消えるわけじゃない! ソニアが滅ぼさないって言ったら滅ぼさないんだ!」
「お前・・・そんなに光の大妖精のことが・・・」
「ああ、俺は・・・ソニアのことが好きだ。・・・愛してる」
ディル・・・。
スズメが「フーフー!」とわたしの脇腹を小指で突いてくる。少しは空気を読んでほしい。
「ディル・・・本当に俺達と敵対して、その妖精の味方をするのか?」
「当たり前だ! 愛した女の願い事一つ叶えてやれないなんて、男が廃るだろ!」
ディル・・・こんな状況だけど、ドキッとしちゃった。
「フッ・・・はっはっはっはっは!」
ルイヴが何故か突然笑い出す。スズメが「頭沸いてしまったじゃないですの?」と気持ち悪いものを見る目で見る。普段気持ち悪いスズメに気持ち悪そうに見られるなんて相当だ。
「ハァ・・・やっぱりお前は俺の息子だ!」
ルイヴは嬉しそうに笑い、自分の拳をゴツンと突き合わせる。右手には黒色の闇の魔石が、左手には・・・黒と言うには暗すぎる、まったく光を反射しない漆黒の魔石が嵌められたグローブを付けていた。
「覚悟しろよ! 最悪の場合、緑の妖精との取引は無視して光の大妖精は殺すからな!」
「その前にあなたが死になさい!」
「え、スズメ何を・・・きゃあ!」
スズメにしてはやや乱暴にわたしを鷲掴みにして、その場に風を巻き起こして上空に飛び上がる。そして片手で杖を持ったスズメは杖を頭上に掲げる。
「骨すら残らないと思いなさい!」
スズメの頭上に大きな高熱の火の玉が出現する。
「おい、おいおい! スズメ! そんなことしたら本当に死んじゃう・・・ってか俺も巻き込まれるだろ!」
ディルは慌ててるけど、何故かルイヴは「ほう」と口角を上げるだけだ。
パチン!!
「きゃ!」
突然、スズメの杖が弾け飛んだ。同時に火の玉も消える。
「ど、どうしたの!?」
スズメの手の中で身を捩って必死に状況を把握しようとするけど、よく分からない。
「あの船の上にいる、弓を持った女性ですわ。あの女性の矢で杖が弾かれましたの」
沖に停まっている船の上には、弓を構えてニコリと優雅に微笑んでいるディルのお母さんが立っていた。
「ソニア様! 杖を!」
「あ、うん!」
わたしが電磁力で飛ばされた杖を引き寄せて、スズメがキャッチする。そして風を巻き起こしながらふわりと地面に着地した。
「スズメ・・・カイス妖精信仰国の第一王女か。お前らも光の大妖精の味方をするってことでいいんだよな。それがカイス妖精信仰国の答えだと判断していいんだよな?」
「フンッ、脅しですの? 味方も何も・・・カイス妖精信仰国はソニア様の熱烈なファンですから!」
「そうか・・・分かった。死人は出さないように伝えてあるが、それなりの被害は覚悟しろよ」
「上等ですわ!」
ルイヴは船に向かってバッと拳を上げる。すると、10隻近くある船から大勢の青髪の人達が降りてきた。しかも、海の上を走って。
「ルイヴさんのお許しが出たぞ!! お前ら俺に続けえええ!!」
「よっしゃあああ! ヨームさんの仇討ちじゃああああ!」
「泡沫島の研究者なめんじゃねぇぞオラァ!!」
す、すごい血の気が多い! というか、ヨームは確かに罪に問われて亡命したけど、死んではいないよ!?
「すごい血の気の多さですわね・・・本当に死人が出ないように伝えてますの?」
「・・・ああ、伝えてる。・・・ハズだ。たぶん。・・・うん、伝えたぞ。その記憶はある」
「どうしてあなたが不安そうなんですの・・・」
スズメが肩を竦めながら、わたしを掴んでいた手を放す。
「ソニア様、そのような心配そうな顔をしなくても、わたくしとディル様で必ずお守りするので大丈夫ですわ。ねぇ、ディル様」
「ああ。例えお父さんでも敵は敵だ。ソニアを守るためなら容赦はしない」
ディルは魔剣を鞘から抜いて、魔剣に魔気を流す。
「こっちもだ。殺すつもりはないが、例え息子でも人類を守る為なら容赦はしない」
「行くぞ!」
「来い! ディル!!」
ディルがルイヴに向かって駆け出す。それと同時に、スズメが杖でディルを援護しようとするけど、未だ船の上にいるディルのお母さんが弓で邪魔をしてそれをさせない。
そうして、とうとう戦いが始まってしまった。
遠くの海では、空の妖精vs謎の龍
上空では、ガマくんvsミドリちゃん
砂浜では、ディルvsルイヴ
船と岸の間では、スズメvsディルのお母さん
わ、わたしはどうすれば・・・!?
読んでくださりありがとうございます。
戦いからあぶれたソニアでした。




