222.王子様=真面?
カイス妖精信仰国の第一王子、オーム。スズメとヨームのお兄さんで、スズメからは幼い頃から何かと目の敵にされていて、しょっちゅう嫌がらせを受けていたと聞いている。
それだけを聞くと面倒臭そうな人だけど、オームはくるみ村に騎士団を向かわせてくれたり、ミリド王国について積極的に調べてくれたりと、会ったことは無いけど間接的に色々と助けてくれてるんだよね。いまいち人物像が掴めないや。
ポテポテと不器用に走る黒猫の背の上で、わたしは恐らくオームの元に案内してくれているであろう、オームの側近のカササギの横顔を見上げながら口を開く。
「ねぇ、カササギ。オームってどんな人なの?」
カササギは突然わたしに話しかけられたことに目を丸くしながらも、少し視線を上に向けて考えてからニコリと微笑んで教えてくれる。
「私の主であるオーム様はぁ、幼い頃から何事にも真剣に全力を尽くすお方でぇ、他のご弟妹のような突出した才はお持ちではありませんがぁ、他の弟妹よりも努力をし続けてきた努力家ですぅ」
カササギはまるで自分のことのように自慢げに話す。
どうやら側近には慕われてるみたいだね。スズメは嫌がらせを受けていたって言ってたけど、もしかしたら子供の可愛い悪戯程度だったのかもしれない。幼い頃の印象が大人になっても残ってることってあるもん。
「じゃあ、オームの好きな物とか嫌いな物は何?」
「好きな物は・・・そうですねぇ。女性にとてもお優しく、オーム様の虜になった女性は国内に限らず数え切れない程いますぅ」
もしかしてカササギもその内の1人だったり?
・・・と、聞きたくなるようなウットリした顔をしている。
「嫌いな物は・・・不真面目で何の努力もしていない人は好きではない、とおっしゃっていたことがありましたねぇ」
マジか。
「・・・わたし、不真面目で何の努力もしてないんだけど・・・」
「あっ! いえ! あ、あくまでも人ですからぁ! 人間に限ったお話ですからぁ! お可愛らしいソニア様のことは好きだと思いますぅ!」
カササギはびっくりするくらい冷や汗を流しながら慌てて否定するけど、わたしが不真面目で何の努力もしてないことは否定しないんだね・・・。その通りなんだけどさ。
そう思って唇を尖らせていたら、わたしの考えが伝わったのか、カササギは「でもぉ・・・」と言葉を付け足した。
「こうして大妖精様であられるソニア様がわざわざ人間のオーム様のことを知ろうと私に質問をなさるのですからぁ、決して不真面目ではないと思いますよぉ。それにぃ、努力しているかどうかは意外と本人に自覚が無かったりしますからぁ」
相変わらず凄い量の冷や汗を流しながら必死に慰めてくれる。喋り方は少し気に入らないけど、悪い人ではなさそう。きっと、彼女が慕う第一王子のオームも最初に想像してたような悪い人ではないんだろうな。
コンコン
「オーム様。ソニア様と黒猫様をお連れいたしました」
装飾過多な扉をノックしたカササギがそう言った。
普通に喋ろうと思えば、喋れるんかい! ・・・っていうか、黒猫様て・・・。
キィと扉が開かれた。そこには、わたしと黒猫様を見下ろして大きく目を開けて「おぉ」と感嘆の息を吐くセミロングの灰色の髪を後ろで一つに纏めた、とても容姿の整った男が居た。でも、何よりも気になるのは部屋の中の状態だった。
「部屋きったな! ちゃんと片付けしなよ!」
思わずオームを見上げてそう言っちゃった。オームは何を言われたのか分からないような、ポカンとした顔になって部屋を見渡した。
「も、申し訳ありません・・・妹のスズメと同じで片付けが苦手な物で・・・」
何故か頭にクエスチョンマークを浮かべながら困惑顔でそう言うオーム。わたしは首を傾げる。
「スズメは別に片付け苦手じゃないでしょ? 船でスズメの部屋に居たこともあったけど、ちゃんと片付いてたよ?」
「え・・・そ、そうなのですか・・・・?」
「そうだよ」
必要な物が全てベッドから届くように計算されつくした配置だったもん。ディルはそんなスズメを何故かだらしないって言ってたけど、わたしは流石王女様だなって感心したよ。
「何か話があってわたしをここに案内したんだろうけど、まずはその前に部屋を片付けようね。わたしも手伝ってあげるから」
「はい・・・え!? ソニア様に手伝っていただくなど! ソニア様は何もせずにお待ちになってくだされば、私とカササギで急いで片付けます!」
オームは「とんでもない!」と顔色を変えてブンブンと頭を横に振るけど、わたしこそ待ってるだけなんてとんでもない。暇じゃん。
オームの言葉を無視して、わたしは黒猫様の背から降りて近くに転がっていたペンを両手で掲げて「さっさと片付けちゃおうか!」とウィンクする。オームとカササギは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で見合ったあと、仕方なさそうに肩を竦めた。
「では、そちらのペンは執務机の・・・」
「オッケー!」
「え?」
体を回転させてブンッと思いっ切りペンを執務机の方へ投げる。見事に執務机近くの床に落ちた。
「これでよし!っと」
「「え・・・?」」
オームとカササギが揃って首を傾げる。
「何をボサッとしてるの! わたしが効率よく片付けられるように指示を出してあげるから、2人は動いて!」
「「は、はい!!」」
それからわたしは本は本棚ら辺に、筆記用具や書類は机ら辺に放り投げるように指示をして、ほんの数分で見事に片付いた。
「やっぱり綺麗な部屋は気持ちいいね!」
「そ、そうですね・・・」
オームが小さな声で「あまり変わった感じがしないのですが」と言ったような気がするし、黒猫様が大事そうな書類でガリガリと爪とぎしてるけど、気にしない。
「じゃあ、改めて、自己紹介するね! わたしは雷の妖精のソニア! 空の妖精に会いにお城まで来たんだよ☆」
無我夢中に爪とぎする黒猫様の横で、オームの目線くらいまで浮かび上がってパチッとウィンクする。
「私はカイス妖精信仰国の第一王子、オームと申します。自己紹介が遅れてしまい申し訳ありません。こうして大妖精である美しく可愛らしいソニア様とお会いできたこと、誠に光栄です」
オームはそう言ってニコリと微笑む。さすが王子様、お世辞がうまい。
わたしが小さすぎて分からなかったけど、こうやってカササギの隣に並んでるオームを見ると、2人とも同じくらいの背なんだね。ヨームもスズメもたぶん高身長な方だったけど、オームは低めみたいだ。
改めて見てみると、中性的な顔立ちで、それでいてしっかりと男らしさもあり、ニコリと柔らかく微笑んだその顔は、わたしでも思わずドキッとしてしまうくらいには破壊力のあるものだった。国内に限らず虜になった女の子がいるっていうのも納得だ。
「それで、わたしに何かお話があるんでしょう?」
「だから、わざわざここに案内したんだよね?」と、大きな、わたしの何百倍もあるとても大きなソファに座って聞くと、オームは笑みを深めてコクリと頷いた。
「ソニア様を私の元に案内させたのは、空の大妖精様を紹介してさしあげるためです。ですがその前に、ソニア様は長い船旅でお疲れでしょうから、こちらでご休憩をなさってはいかがでしょう?」
休憩かぁ。別に疲れてはいないんだけど、まぁ、急いでるわけでもないし、せっかくだし厚意に甘えようかな。
わたしが「そうしようかな!」と笑ったら、オームとカササギも嬉しそうな、どこかホッと安堵したよな顔で笑った。
「では、何か飲み物と菓子を運ばせましょう」
オームはそう言って壁に取り付けられた白い魔石に触れて、小さな声で「例のものを」と言った。
「もしかして、それって遠くの人に声を届けられる魔石?」
「はい。何か障害物があったり遠距離過ぎると届けられないのですが、この取り付けられた魔石の奥は管で各部屋に繋がっていて、声を届けることが出来るのです」
「おぉ! 凄い! 思いつきそうで思いつかない発想だね! 考えた人は天才だ!」
「え、ええ。とても優秀な研究者でした」
自国の研究者を褒めたのに、何故か浮かない顔をしてしまった。もしかしたら既に亡くなってしまった研究者なのかもしれない。失敗しちゃった。自分なりに会話を持たせようと頑張ったけど、慣れないことはするもんじゃないね。
カササギの足にスリスリしている黒猫様を見て皆で和んでいたら、コンコンとノックの音がして、パッツパッツの執事服を着たやたらと筋肉質な男性がワゴンを押して入って来た。
「こちら、カイス妖精信仰国特産の果実を使ったお酒と、旬の果実を使ったパイでございます」
机の上に置かれたのは、オレンジの匂いがするカシオレっぽいカクテルと、つやのある美味しそうな焼き色のアップルパイだった。じゅるりと涎が垂れちゃう。
「お、美味しそう!」
目を輝かせるわたしに、筋肉質な執事が嬉しそうにニコリと微笑んで、何故かグッと上腕筋に力を入れてわたしに見せつけてくる。
・・・何してんの?
わたしが運ばれてきたアップルパイと筋肉を交互に見ていたら、オームが「見事でしょう?」と得意げに言った。
どっちが? アップルパイが? 筋肉が?
「そこの執事は、キンケイとニッコクには及ばぬものの、国内でトップレベルの筋肉の持ち主なのですよ。ご自由にご覧ください」
あ、筋肉の方ね。ご覧くださいって・・・他人の筋肉にそんなこと言う人初めて見たよ。
せっかくなので、わたしはマジマジと筋肉を見る。言われたから見るだけで、決して見たいわけじゃないよ。触ってみたいなとか思ってないよ。
確かに凄い筋肉だけど、わたしはディルの方が好きかな。形は綺麗だけど、なんていうか、しなやかさが足りないね。実践向きじゃない。見せるために鍛えられた感じだ。
わたしが前のめりになって筋肉を真剣に分析していると、その筋肉の持ち主がいきなり「ふんっ!!」と部屋中の空気が震えるような大きな声で叫んで、パァン!と執事服が弾けた。急な大きな音に、わたしは「きゃあ!」とひっくり返る。床でゴロゴロしていた黒猫様も「ンニャー!」と飛び跳ねている。
「なにぃ!? 急になに!?」
服を弾けさせた執事は気持ち良さそうに半裸でポーズを取ってわたしに見せつけている。その目がギラリと光ってわたしを捉えている。
こ、こわいよ・・・。
執事にビクビクしていたら、オームが慌ててわたしと執事の間に入ってきて、勢い良く頭を下げた。
「も、申し訳ありません! ソニア様にお褒めの御言葉を頂き興奮してしまったようで・・・すぐに退室させます!」
「う、うん。もう少し大きめのサイズの執事服を用意してあげてね・・・」
さすがカイス妖精信仰国。おかしな人だらけだ。
気を取り直して、わたしは目の前にあるアップルパイをカササギに小さく小さく切り分けてもらい、パクリと食べる。
「うんっ~~~~!! 甘くてサクサクでぐじゅってしてて、すっごい美味しい!」
頬に手を当ててそう言うと、オームとカササギはホッと息を吐いた。そんな二人を横目に見ながら、わたしは小さなコップに入ったカシオレを見る。
休憩にってお酒を持ってこさせるのはちょっとどうかと思うんだよね。好きだから飲むけど。
ゴクゴク・・・
ちょっとぬるい気がするけど、普通に美味しい。
前に学園でお酒を飲んだ時は飲み過ぎて失敗しちゃったけど、この量で、しかもカシオレで酔うことはさすがのわたしでもありえない。
「ニャーン」
「だめだよ。猫にはちょっと味が濃すぎるよ。それに、さっきチキンを食べたばかりでしょ」
「めっ」と人差し指を立てて注意する。そんなわたしと黒猫様のやり取りを微笑ましそうに見ているカササギと、壁に取り付けられた声を届ける魔石に触れて何か言っているオームを視界の端に入れながら、パクパクとアップルパイを食べる。
「ふぅ~お腹いっぱいになっちゃった~」
そういえば、おへそを露出した服装だったことを思い出して自分のお腹をバッと見下ろす。
よかった。膨らんでない、妖精の体って不思議。
そうコッソリと安堵してたら、またコンコンと扉がノックされた。
「オーム様、従兄弟のシマ様とエナ様が・・・」
扉の向こうの男性が言い終える前に、バァンと扉が勢い良く開け放たれた。そして、元気に走って入ってくる2人のよく似た幼い男の子達。
「「オームお兄様! 妖精様がいらっしゃるとは本当ですか!?」」
そう言って駆けつけてきた男の子達の頭に手を置きながら、オームは申し訳無さそうにわたしを見る。
「申し訳ありません。この子達は父の弟の子で、双子のシマとエナで、どうも何処かでソニア様のお話を耳にしたらしく・・・」
「わぁ! 本当に妖精様がいらっしゃいます!」
「ちっちゃくて可愛いです!」
そう言ってトコトコと近づいてくる4.5歳くらいの双子の男の子達。
あなた達の方がずっと可愛いよ!
「いいの! いいの! こっちおいで!」
わたしは男の子達を止めようとするオームを笑顔で制して、男の子達に手招きする。
「あの、妖精様。歌を贈ってもいいですか? 私達、妖精様にお会いした時の為にたくさんお歌を練習したのです」
まるで子犬のようなクリクリした大きな目でそう言われれば、断れるハズがない。わたしは「どうぞ!」と破顔した。
双子の男の子達は緊張した顔でお互いを見合ってコクリと頷いたあと、手をつないで「せーのっ」と歌い始めた。
うんうん。正直歌はぜんぜん上手くないし、歌詞も難しい言葉でまったく理解出来ないけど、可愛いから何でもいいや!
「・・・ど、どうでしょうか? 上手く歌えていたでしょうか?」
心配そうにわたしを見る男の子達にわたしはパチパチと拍手を贈る。
「百点満点です!」
男の子達は嬉しそうに手を繋いだまま跳ねてキャッキャと喜ぶ。
どうして急に歌を贈ろうと思ったのか謎だけど、可愛いから何でもいいや!
その後、男の子達は「お忙しいところ失礼しました」と入って来た時の無邪気さは噓のように潔く冷静に退室していった。
もう少し男の子達と遊んでいたかったんだけどな・・・。
「少し休憩に時間を取りすぎてしまいましたね。空の大妖精様の元へご案内しましょう」
そうだった! 美味しいお菓子とお酒と、可愛い男の子達の可愛い歌のせいですっかり目的を見失ってた!
オームが扉に向かって歩き始める。ソファの上で寛いでいたわたしも慌ててぴょんっと飛び立つ。
「・・・ニャー!!」
「え?」
勢い良く飛び立ったわたしに向かって、床でじっとわたしを見ていた黒猫様が突然獲物を捉えていたような目で飛び掛かって来た。
「うわっ、あぶなっ!」
間一髪、擦れ擦れで黒猫様を躱した。そして、黒猫様はそのままの勢いで・・・
「ふぐっ!?」
カイス妖精信仰国の第一王子であるオームの股間に突撃した。
「オーム様!?」
「わぁ! 大丈夫!?」
物凄く痛そうに眉間に皺を寄せて股間を押さえながらうずくまるオーム。「おいたわしや」と心配そうに眉を下げながらオームの背中に手を回して跪くカササギ。床に降り立って「そんなに痛いの?大丈夫?」と顔を覗き込むわたし。何事も無かったかのようにスタスタと歩き始める黒猫様。
「うっ・・・だ、大丈夫です。さ、さぁ・・・行きましょう」
生まれたての子鹿のように一所懸命に立ち上がろうとするオーム。
本当に大丈夫なの? 男の人にとってそこって急所なんでしょ?
人間だった頃、わたしと妹がまだ幼稚園に入園したばかりの頃に、ふざけてパパ・・・じゃなくてお父さんの股間を蹴っ飛ばして、思いの外本気で痛がられて、子供ながらに凄い罪悪感に襲われた記憶がある。
オームの震える手で押さえられた股間を正面から見ていると、ヒラリと一枚の紙切れが落ちて来た。なんとなく、何が書かれてるのか気になって読み上げる。
「えっと・・・金髪の大妖精様に関する報告?」
そこには、お酒と筋肉が好きとか、片付けが苦手だとか、わたしの好きな物や嫌いな物などが、細かく書かれてあった。そして紙の最後の方には、【酒と料理を用意する】【シマとエナに協力を要請する】とかやることリストのようなことが書いてあり、一番下には【ソニア様に気に入られ、次期王に推薦して貰う】と力強く書かれていた。
「なにこれ?」
紙切れを見下ろして首を傾げるわたしに、カササギがうずくまっているオームを庇うように間に立った。
「ち、違うのですぅ! これは、これは・・・私が勝手に調べていたものでぇ・・・!」
「でも、明らかにオームのポケットから落ちて来たよ?」
わたしが疑いの目をカササギに向けると、後ろでうずくまっていたオームがゆっくりと息を吸って、口を開いた。
「良い、カササギ。・・・ソニア様、これは私の物で間違いありません。手の者にソニア様のことを調べさせて、私が計画を立てました」
「ソニア様! オーム様は決して悪気は無いのですぅ! 結果的に騙すような形になってしまいましたが、これもオーム様が次期王になりたい一心でぇ! より良い国を目指す一心でぇ!」
「カササギ! もう良い! 見苦しいぞ!」
カササギが必死にオームを弁護して、オームが力無く「また失敗か・・・」と項垂れた。
わたし、まだ「なにこれ?」としか言ってないんだけど? 相変わらずカイス妖精信仰国の人は大袈裟だなぁ。
わたしが「ハァ・・・」と溜息を吐くと、カササギがビクッと体を震わせて、オームは何もかも諦めたような顔で目を伏せた。
「オームを次期王に推薦するくらい別に構わないよ?」
「「え?」」
口を開けてマヌケな顔でバッと勢い良くわたしを見る2人に、わたしはもう一度溜息を吐いてから説明する。
「あのね、何を勘違いしてるのか知らないけど、こんなにわたしのことを調べてくれてまで持て成されて、わたしは嬉しいよ。相手に喜んでもらうために相手を知ろうとするのは普通のことだと思うし、何か目的があって気に入ってもらおうとするのも、出世の為には大事なことだと思うよ」
人間だった頃も、出世欲のあった人は積極的に会社の上層部の人達と飲みニケーションを行ってたしね。
「・・・えっと、では、ソニア様は私に怒ってなどいなく、しかも、私を次期王に推薦してくださるのですか?」
「うん!」
ニコリと微笑む。
それに、もう一人の次期王候補のスズメは王なんてなりたくないって言ってた気がするしね。これで皆が幸せだ。まぁ、わたしが推薦したからって本当に王になれるかはちょっと分からないけど。
「カササギがオームのことを努力家で難にでも全力を尽くす方だって褒めてたし、他のカイス妖精信仰国の人達に比べたらだいぶ真面な性格してるっぽいしね! わたしはオームが次期王でいいと思うよ!」
ホント、ヨームとスズメの兄とは思えないくらい真面な人だよね!
わたしの言葉に、オームは感激したよに瞳を潤ませながらカササギを見て、わたしを見る。「よかったですねぇ」と涙ぐむカササギ。
「ああ、ああ。本当に良かった。ようやく・・・成功した」
さっきは「また失敗か・・・」って言ってたもんね。もしかしたら、今まで彼はたくさん努力してきて何にでも全力を尽くしてきたけど、それが空回りして失敗することの方が多かったのかもしれない。
失敗は成長の元って誰かが言ってたしね。これからは今までの失敗を活かして、良い王になれるように努力して欲しい。あわよくば、妖精信仰とか言う気持ち悪い信仰を止めさせて欲しいんだけど・・・
「ソニア様! 本当にありがとうございます! 私、カイス妖精信仰国第一王子オームは、より一層の信仰をソニア様に誓います!」
「オーム様の側近である私、カササギも同じくぅ」
そう言ってわたしの目の前で床に額をつけて、土下座のようなポーズをする2人。
無理そうだね。
わたしは「じゃあ、さっそく空の妖精のとこに案内して?」と目の前の灰色のサラサラ髪をポンポンと叩いた。
読んでくださりありがとうございます。
ソニア(きっと膝カックンとかしょうもない嫌がらせをしてたんだろうな)




