表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
222/334

221.【オーム】金髪の妖精様を求めて

カイス妖精信仰国の第一王子、オーム視点のお話です。変人なヨームとスズメのお兄さんです。

私は父上が羨ましかった。大勢の人を惹きつけ、引き連れる父上が。私もあのようになりたい、大勢の人達を惹きつけたいと、幼い私は思った。


『第二王子のヨーム様は研究の才をお持ちだ!次々と革命的な魔道具をお考えになられる!』

『第一王女のスズメ様は天性の魔法師だ! 生まれながらに三つの属性を持っている!』


研究者達は弟のヨームに、魔法師達は妹を次期王にと言い始めたのはいつだったか。私を王にと言う者もいなかったわけではないが、弟妹を支持する者達に比べると圧倒的に少なかった。


だが、そんな私に父上は期待した。『お前にも何か秀でた才能があるハズだ。それを開花させろ』と。『私は次期王はお前が良いと思っている』と。


私は頑張った。使えるものはほぼ全て利用し、手段を選ばずに。だが、本物の天才は私の本気の努力など軽々と越えていった。弟のヨームは犬猿の仲だった泡沫島の研究者達と打ち解け、共同研究まで行い、難航していた泡沫島での情報ギルド設立を成功させた。妹のスズメは魔法師団長をも越える魔石の使い手になり、彼女に実戦で敵う者はいないとさえ言われている。


 それに比べ、私は・・・。


着実に支持者は増えていっているものの、パッとしない。でも、それでも父上は私に期待した。


『お前に宝物庫の管理を任せる』


宝物庫には、空の大妖精様の大切な物がある。それがいったい何なのか、実際に見ても分からなかった。恐らく我々人間なんかには到底分かるような物では無いのだろう。


そして、私が宝物庫の管理を任された一年後に、何者かが宝物庫から空の大妖精様の大切な物を盗んだ。


大失態に顔を真っ青にしていると、空の大妖精様から直々に呼び出しを受けた。本来ならば一年に一度の歌納祭の時にしか御目にかかれない空の大妖精様は、感情の読めない表情で私を見下ろして、澄んだ声でこうおっしゃった


『マジでヤバい』


私は思わず首を傾げてしまう。


『取り返して、アレ、めっちゃ大事なヤツ』


私は持てる全ての情報網を駆使して、盗み出した奴を探した。


 内密に、慎重に、絶対に事を露見させるわけにはいかない。でなければ、今まで私が築いてきた人望が泡となって消えてしまう。


犯人を見つけた。だが、あと一歩の所で逃げられてしまった。私は再び空の大妖精様に呼び出しを受けた。


『も、申し訳ございません!! 現在全力で捜索にあたっているのですが、ドレッド共和国から逃げ出したあとの情報が不自然に無くなっていて・・・!』


地面に頭をこすり付け、全力で謝罪をした。それに対して空の大妖精様はこう仰った。


『それ、やっぱいい、何とかなる、っぽい』


私は『へ?』としか返せなかった。


『それよりも、連れて来て欲しい妖精が、いる。大事な、大事な、家族』


そうおっしゃった空の大妖精様のお声は今まで聴いたなかで一番柔らかく、感情的だった。


『空の大妖精様の家族でしょうか?』

『うん。金髪の妖精。めっちゃ可愛い、めっちゃ元気な音』


 『家族』と言うからには、その金髪の妖精様も大妖精様と考えた方がよさそうだな。


『・・・空の大妖精様の家族である金髪の妖精様を探して連れて来て欲しい・・・ということでしょうか?』

『そう。今は、なんやかんやあって、昔の記憶が無い、けど、大事な家族だから、必ず連れて来て。出来なかったら・・・』


空の大妖精様はそう言いながら私の鼓膜まで風を使って直接声を届ける。


『色々と世界中にバラしちゃうから、君の小間使いの闇市場のことも、夜中に1人でコッソリしてることも』


 ・・・なんとしても金髪の妖精を・・・!!


幸い、妖精様の時間感覚は人間と違って大雑把だ。焦ることは無い。


 考えようによっては、これはチャンスだ! ここで空の大妖精様のお役に立ち、失点を補って余りあるほどの功績を立てれば!! ・・・フッ、空の大妖精様が私を認めて下されば、それはもう次期王は私に決定だ!


それに、金髪の妖精の情報は知っている。ミリド王国とグリューン王国を中心に稼ぎに出ていた闇市場が、その金髪の妖精が原因で解散することになったからだ。便利な小間使いが減ったのは痛い。


 2.3年くらいは情報収集と闇市場の立て直しに時間を費やすことになりそうだな。


それから暫くは上手くいっていた。運良く弟のヨームが禁書庫に出入りしている所を目撃し、それを公衆の場で父上に報告することでヨームを排除出来た。忌々しいことに亡命して実刑からは逃れたみたいだし、そのせいで協力関係になりつつあった泡沫島との溝が一気に深まったりしたが、対して問題ではない。私が王になるための邪魔ではない。


そして、妹のスズメは自ら『王になどなりたくありませんわ』と公言したことで、勝手に盛り上がっていた魔法師達の勢いは削がれた。


 いいぞ! いいぞ! これであとは金髪の妖精様さえ私の手元に来れば、全てが上手くいく!


闇市場の体制がある程度整った。


 グリューン王国の端にある村に居た金髪の妖精が、複数の村人と共に村を出て、水の大妖精様がいらっしゃるブルーメに向かったらしい。何が目的だ?


『どうやら、共に行動している黒髪の少年の両親を探しているようですぅ』


私の一番の側近であるカササギがそう報告する。彼女は私が幼い頃から仕えてくれていて、唯一私と闇市場の繋がりを知っている者だ。とてもずる賢く、私ほどではないが容姿も悪くない。喋り方以外は気に入っている。


『人間の両親を探しているのか? 何故だ?』

『申し訳ございませぇん。そこまではぁ』


イラッ


 長年の付き合いで馬鹿にされているわけではないのは分かるが、それでもその言い方は少しイラッとくるな。


『・・・ただでさえ妖精様の考えなんて分からないのだ。記憶を失っているらしい未知の大妖精様の考えなど分かるわけも無しか・・・』


ブルーメでは情報収集に努めた。さすがに武の大会で各国の著名人や騎士団長が集まるなかで闇市場を動かすのはリスクが大きい。そこで馬鹿な下級貴族が下手に手を出して痛い目にあったらしいが、私の知ったことではない。


ブルーメから船に乗ってオードム王国に向かうという金髪の妖精を一度は見失ったものの、無事にオードム王国で姿を確認出来た。


一度解散した闇市場は、半数はミリド王国に、半数は各地に散らばっている。オードム王国にも散らばった闇市場の組員がいたハズだ。


『あのぉ、黒髪の少年の対策にぃ・・・』


カササギが何か言うのを手で制して止める。


『分かっている。あの黒髪の少年は油断ならない。名だたる猛者が出場する武の大会で準優勝したのだ。対策に例のハズレの魔石を現地の組員に送れ』


それは、闇属性の魔物を思うがままに使役し、時には闇の適性持ちの人間すらも操る危険な魔物の魔石だ。あまりにも危険なため、発見次第即討伐と情報ギルドによって決められていて、その魔石で人間を操れることは限られた者しか知らない。


 闇の適性持ちは戦闘面において非常に厄介だが、弱点もそれなりにあるからな。



失敗した。ハズレの魔石を持たせた組員が殺された。土の中に死体が埋まっていたらしい。


 黒髪の少年がやったのか・・・?


『少年の名前はディル。今年で14歳。金髪の妖精ソニア様と共に行方知らずの両親を探しているみたいですねぇ』


カササギが私の息がかかった情報ギルド職員から受け取った報告書を見ながら言う。


『両親の名は?』

『・・・ルイヴとサディですぅ』


 宝物庫で盗みを働いた者達と同じ名か。偶然では無いだろう。空の大妖精様の大切な物が何かは分からない。だが、恐らく金髪の妖精様はソレを必要としている。そして、ソレを盗んだ者の息子を利用して探している。・・・と、考えるのが妥当か。


『それで、金髪の妖精様の次の行先は?』

『・・・分かりませぇん』


 言い方は腹立つが、顔は申し訳無さそうにしているから許そう。


『何故分からない? 次の行先をそれとなくカイス妖精信仰国に誘導するか、無理そうならば必ず行き先を問うように命令したハズだが?』

『それがぁ・・・命令した職員が実物の妖精様を前に興奮し過ぎて失礼を働き、金髪の妖精様に気絶させられたみたいですねぇ・・・』


 失礼を働いてよく気絶だけで済んだな。


『ハァ・・・その職員には減給を言い渡せ』


その後、南の果てで金髪の妖精様の目撃情報が届いたのと同時に、黒髪の少年ディルが愛し子様になったことと、新種の魔物(スライム)の情報も一緒に届いた。


『それと、もう一つご報告がぁ・・・』

『なんだ?』

『グリューン王国の端にある、金髪の妖精様が元々いた村のことは覚えていらっしゃいますかぁ?』

『ああ、確か今はくるみ村・・・とかいう名前だったか?』


 名前は知っているが、金髪の妖精様が居なくなってからはあまり興味が無かった。そこで何かあったのか?


『そのくるみ村でぇ、金髪の妖精様の目撃情報が多数上がっているみたいでですぅ』

『は? 帰ったのか?』

『いえ、それがぁ・・・』


カササギは目を逸らして言い難そうに口を開く。


『南の果てでの目撃情報のタイミングからぁ、金髪の妖精様は2人いるとしか考えられませぇん』


 誰か教えてくれ。どちらが空の大妖精様が求める金髪の妖精様なんだ。


そう問うたところで誰も答えてなどくれないし、空の大妖精様に自由に面会を出来るわけでもない。


 考えても分からないことに時間を費やすのは愚かだな。まずは居場所が分かっているくるみ村の金髪の妖精様をどうにかするか。


『カササギ。お前がくるみ村に向かえ。私はもう片方の金髪の妖精様の情報を集める』

『私が・・・ですかぁ?』

『そうだ。闇市場の組員を自由に使え。だが、カイス妖精信仰国の名と私の名は極力出すなよ。スズメの横槍対策と宝物庫の失敗の隠蔽の為に秘密裏に闇市場を使って動いてきたのだ。私が金髪の妖精様を追っていることをカイス妖精信仰国の者に悟らせるな』

『・・・分かりましたぁ』


カササギはそう返事はしたものの、不安そうな顔で私を見ている。


『どうした? 何か心配事でもあるのか?』

『い、いえ・・・ただ、カイス妖精信仰国の名もオーム様の名も出さずに金髪の妖精様をお連れする為にはどうすればよいのか・・・とぉ』

『確かにな。素直に金髪の妖精様がついて来て下さるとも限らないし、村の者達が妖精様を手放すとも考えられないな・・・』


 何か理由を用意する必要があるな。


『・・・ミリド王国だ。あそこを利用するぞ』

『ミリド王国・・・ですかぁ?』

『革命を起こさせ、傀儡の王を祀り上げる。そしてくるみ村を攻めさせ、お前は金髪の妖精様をお救いしろ』


私の言葉に、カササギは大きく目を見開く。


『その為だけに国を一つひっくり返すのですかぁ!?』

『あの国は無能で怠慢で強欲な王のせいで民達が苦しんでいる。大義名分と武力さえ与えてやれば勝手に革命してくれる。あとは傀儡の王だが・・・』


 グリューン王国とブルーメで金髪の妖精様に手を出そうとしていた愚かな下級貴族がいたな。適当に情報操作をしてアレを王に立てるか。馬鹿で欲が強い者の方が扱いやすい。


『王に魅力が無くとも、革命後は暫く闇市場で稼いだ金で国を維持して、税金などは最低限に納めるようにすれば、国民からの不満は恐らくほとんど出ないハズだ。前任が無能だと馬鹿な下級貴族でも好印象を与えるのは難しくない』

『さすがオーム様ですぅ』


ミリド王国の革命が無事成功し、カササギを送り出して数日後、頭が痛くなるような報告が届いた。


・ミリド王国の元王妃が大金を盗んでドレッド共和国に逃げました。ザリース王が闇市場を使って追っ手を放ちました。


 あそこはマズイ! スズメが聴講生としてそこの学園に通っているんだぞ! 何かする前は必ず私に相談しろとザリースには言ったハズだ! あの馬鹿が! 勘の鋭いスズメ(あいつ)が闇市場とミリド王国の繋がりを疑問視して、私と闇市場の繋がりまでバレたらどうする!?


・ドレッド共和国に放った闇市場からの報告で、ドレッド共和国の学園に金髪の妖精様と愛し子様が通っているそうです。


 このままでは・・・またスズメに全てを持っていかれる! 何でも出来る天才な妹は、いつも私を越え、私の得るハズだった物をかっさらっていくんだ!


『手段は選ぶな。なんとしても金髪の妖精様を連れ出せ。ただし、私の名とカイス妖精信仰国の名は絶対に出すな』


そう命令を下して数日後・・・またしても失敗した。母上が魔法師団を連れて、金髪の妖精様とお友達になったスズメを迎えに国を出た。父上からは『こうなっては次期王は表面上だけでもスズメにするほか無い。だが、実務は全てお前に任せたいと思っている』と言われた。


 違うのです父上。私は父上のような、たくさんの人達を惹きつけられるような王になりたいのです。王の仕事がしたいわけでは無いのです。


『申し訳ございませぇん。予想外のことが立て続けに起きてしまいぃ・・・いえ、私の考えが足らず、金髪の妖精様をお連れすることが出来ませんでしたぁ』


カササギが喋り方とは正反対に、悔しそうな表情できつく拳を握りながらそう報告した。


 カササギを責められない。本当に予想外のことが多すぎた。何故かオードム王国の騎士団長がスノウドラゴンを操り参戦、魔改造された機動力に優れたゴーレムが次々と村人の救出、治癒の魔石を使える幼い女の子、緑の森から現れた巨大な仙人掌、どこからか情報を得て駆け付けたドレッド共和国の聖女・・・カササギの報告を聞いて、私は溜息しか出なかった。


『それから、くるみ村には・・・いえ、何でもないですぅ』


何かを言いかけたカササギに、私からも報告する。


『カササギ、ミリド王国は終わりだ。どうやら金髪の妖精様の逆鱗に触れてしまったらしい』


くるみ村での出来事を知ってか、ドレッド共和国でのミリド王国所有の闇市場の襲撃のせいか、愛し子様と行動を共にしている金髪の妖精様がミリド王国周辺に凄まじい攻撃を行い、ミリド王国を陸の孤島にしてしまった。


『そ、そのようなことが可能なのですかぁ!?』


いつも冷静な彼女が珍しく声を荒げる。


『可能なのだろう。大妖精様ならば。これで確信が持てた。ドレッド共和国にいた金髪の妖精様が空の大妖精様が求めていらっしゃる金髪の大妖精様だ』


カササギがゴクリと唾を吞んで、深刻な表情で頷く。


『カササギ、ミリド王国と闇市場と私が繋がっていたことは絶対に口外するな。私も、お前も、金髪の大妖精様の怒りを受けることになる』

『・・・分かっておりますぅ』


 とりあえず暫くは大人しくして、機を待つか。


そう思っていたら、朗報が届いた。


『オーム様が一応とヒバリ様の魔法師団に忍び込ませていたオーム様派の魔法師からで、金髪の大妖精様が船の上で姿をくらませたそうです』


詳細は分からないが、愛し子様との間に何かあったらしい。『船の上にはいる・・・ハズです。たぶん』というふんわりした報告が届いた。『何か進展があればまた知らせるように』と命じて数日後、別口で母上とスズメが乗った船が到着したと報告があった。


『すぐに母上の船を調べに行け! 街の中も隅々まで探せ!』


隠密行動が得意な側近達にそう命じた。そして、側近達の報告が届くよりも先に、母上とスズメが愛し子を連れて城にやって来た。私も挨拶するように言われたが『猛烈にお腹が痛いです。限界です』と恥を捨てて断った。


 今を逃すわけにはいかない。恐らく、ここが私のこれからの人生の分岐点となるだろう。


そして、私の元には遠くの声を届ける空の魔石を使った報告が次々と届く。


『金髪の大妖精様はとてもお綺麗で、それでいて幻想的な青い瞳をしていらっしゃいました!』

『金髪の大妖精様のお声はとても小さいですが、心が洗われるようなとてもお可愛らしいお声です。幸せ過ぎて耳が取れそう』

『金髪の大妖精様と目が合ったかもしれません! どうしましょう!?』

『金髪の大妖精様はお腹を出した格好をしておられました。あの可愛らしい小さなおへそを食べたいです』


 碌な報告がこない!


『私が求めているのはそのような情報ではない! 居場所やその場の状況を報告しろ! それと最後の変態は今すぐ戻ってこい! 思想が危険すぎる!』


 こういう面でも、闇市場の方が使い勝手がいいんだがな。・・・さすがにカイス妖精信仰国で闇市場を使うわけにはいかない。


『オーム様!アレをご覧ください!』


窓の外を見ていたカササギが目線を外さずにそう叫んだ。私は椅子から立ち上がり、カササギの視線の先を見る。


 あれは・・・黒猫? いや、背に何か乗せているな。


目を凝らしてよく見てみると、背に乗っているのは金髪の大妖精様だった。後ろでまとめたフワフワした長い金髪を靡かせながら、屋根の上を黒猫に走らせて城の方へ向かって来ている。そして城門の前に降り立ち、門番をしている魔法師団と何やら話し始めた。


『カササギ! 急げ! 金髪の大妖精様をここまで案内しろ!』

『ただいま!』


カササギが部屋を飛び出していった。私は表情が綻ぶのを必死に抑える。


 まだだ。まだ喜ぶな。ここからが本番だ。


金髪の大妖精様に気に入って頂き、空の大妖精様を紹介し、お二人の大妖精様のお役に立つことで私を次期王として認めて頂かなければならない。


 大妖精様とお友達になったスズメを越えて王になるには、お二人の大妖精様の口から私を推薦して頂くしかないのだから。


私は執務机の上に視線を向け、闇市場や私の手の者から送られてきた金髪の大妖精様について書かれた報告書を見る。


・お名前はソニア様。雷の妖精と名乗ることもある。スタイルの良い女の子の大妖精様。

・お好きな物は筋肉と美味しい料理とお酒。幼い子供に相好を崩す姿も確認。

・お嫌いな物は戦いと悪事。大きな音や声に怯えるような素振りも確認。

・片付けが苦手で、同じく片付けが出来ないスズメ様と打ち解け合っている様子。


 ・・・スタイルの良い女の子とは何だ? 絶対に組み合わさない二つの単語が並んでいるが・・・それに、女の子という単語のあとに好きな物が筋肉と美味しい料理とお酒、それに幼い子供とは・・・まるで結婚適齢期を逃した女性のようだな。


私はその後に続く報告書を読みながら、少しでも金髪の大妖精様に好印象を与える為にはどうすればいいのか考える。


暫くして、コンコンと部屋の扉がノックされた。


「オーム様。ソニア様と黒猫様をお連れいたしました」


私自ら扉を開ける。


 ・・・スタイルの良い女の子。


そこには、黒猫に跨った女の子の妖精がいた。整った可愛らしいお顔は幼いのに、胸は大人のそれで、引っ込んでいるところはしっかり引っ込んでいる。私の手のひらサイズくらいに小さく、猫に跨っているにも拘わらず、その美しい体のラインが分かった。まさに、スタイルの良い女の子だった。


 ・・・もしもソニア様が妖精ではなく、人間だったなら、間違いなく求婚を考えたであろうな。


金髪の大妖精ソニア様は、後ろで一つに結んだふわふわの黄金色の髪を揺らしながら部屋の中を見渡したあと、澄み切った湖のような綺麗な青い瞳で私を見上げて口を開いた。

読んでくださりありがとうございます。カイス妖精信仰国の第一王子、オーム視点のお話でした。ヨームとスズメの兄で、彼もまた・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ