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149.助けなきゃ!

「ただいま、帰ったよ、おかえりなさい、すぐにディルを助けなきゃ!」

「ちょっとちょっと! ソニアちゃん。訳が分からないわよ!」


煙突から帰ってきたわたしは、とにかく早くディルを助けなきゃと急く心のままにディルの上に立つ。


「ディルちゃんを助ける方法が分かったの?」

「分かった・・・わけじゃないんだけど・・・」


 手掛かりを教えてもらっただけで、助ける方法が分かったわけじゃないんだよね。落ち着こう、わたし。


わたしは一度深呼吸をして、ミカちゃんを見上げる。


「えっと・・・」


 とりあえず、シロちゃんのことはディルを助けてから話そう。そして、その後にミカちゃんとディルに何とかしてもらう。火のドラゴンは偉い妖精様は干渉するなって言ってた。つまり、わたしだ。ディルやミカちゃんはそこに含まれないし、わたしが干渉しなければ2人には手を出さないとまで言われた。・・・じゃあ、ディルとミカちゃんに干渉してもらえばいいよね?


じっと黙っていたわたしに、ミカちゃんが「どうしたの?」と首を傾げる。わたしはシロちゃんのことは一旦置いといて、今は目の前のディルのことに集中することにする。早く助けて早く助けに行く。


「わたしが火のドラゴンに教えてもらったのは、ゾンビ化する原因だけで、助ける方法は教えてもらってないの」

「じゃあ、方法はアタシ達で考えきゃダメってことネ。 それで、原因は何なの?」


ミカちゃんが姿勢を正して聞く姿勢に入り、トキちゃんが「トキが眠くなる前に手早くね」と急かす。


「原因はスライムなんだって」

「「スライム?」」


2人が同時に首を傾げる。


「そう、スライム。普通のスライムは体内にある水の魔石で真水を出して操って獲物を捕らえるんだよね?」

「そうネ」

「でも、今回のこれは普通じゃなくて、ずーっと昔に存在してたスライムの亜種なの。体内にあるのは闇の魔石で、何らかの形で人間の体に寄生してその宿主を操って動植物を食べさせて栄養を取るんだって」

「なによそれ・・・もうスライムと全然違うじゃない」


 だよね。わたしもそう思う。


「でも、昔にいたスライムがなんで今・・・あっ」


ミカちゃんが「あっ」と口を開いてトキちゃんを見る。わたしも見る。トキちゃんは突然視線を向けられて目をパチクリとさせて驚いている。


「トキちゃん、言ってたじゃない。ドラゴンのブレスで氷が溶けて、その氷の中で凍ってた色んな物が島中に・・・って。その色んな物の中にさっきのスライムがいたんじゃないの?」

「あっ!!」


トキちゃんが「それだ!」みたいな顔でミカちゃんを指さす。


「でも、それが分かったところで・・・なんだよね」


 昔の人はそんな危険な魔物がいる中どうやって暮らしてたんだろうね?


「要は、ディルちゃんの中にいる元凶のスライムをやっつければいいのよネ」

「そうなんだけど、そもそもディルの体の何処にいるかも分からないし、分かったところでどうやってやっつけるのか・・・」


3人で「うーん」と首をひねる。


「運良く耳たぶとかにいれば簡単なんだけどな~・・・」

「さすがにそれは無いと思うけど・・・そうネ。でも、足とか腕ならまだやりようがあるかもしれないわネ」

「そうだね・・・え!?」


 まさか切断とか!? いやだよ!!


わたしが顔を真っ青にしてディルの腕を見てたら、ミカちゃんに「違うわよ」と頭を軽く叩かれた。ちょっと痛いかも。


「ほら、ここに来る前に地下通路から出て来た巨大スライムをソニアちゃんのビームで倒したじゃない? そのビームならディルちゃんのダメージを最小限にしつつ、寄生してるスライムをやっつけられると思うのよ」

「まぁ、足か腕にいればね・・・頭とか心臓だったらアウトだよ」


 これが日本だったら一発で場所が分かるのに。あの頭を検査するやつ・・・なんだっけ、MRI検査だったかな? ・・・そういえば、人間だった頃にお母さんが検査を怖がって、どういう仕組みなのかお医者さんを質問攻めにしてたっけな。


 ・・・・・・ん?


「それだ!!」


わたしはビシッと自分を指差す。


「どうしたのよ急に・・・」

「お、驚かさないで・・・」


ミカちゃんとトキちゃんがおかしな子を見るような目を向けてくるけど、気にしない。


 遠く離れた虹の妖精のナナちゃんと通信が出来て、光の玉が出せて、ビームも出せたんだもん。不思議な記憶の中のわたしも似たようなことをやっていたし、起きたらわたしも少し出来てた。・・・あの感覚を思い出して、人間だった頃の知識を活かせば出来る気がする! いや、出来なきゃダメなんだ!


「やってみる!!」


パンッと自分の頬を叩く。


「ちょっとソニアちゃん! 何をやってみるのかアタシ達にも説明してよ!」


ミカちゃんがそう言い、トキちゃんがそれに同意するようにコクコクと頷く。


「説明はめんど・・・難しいから省くけど、スライムが寄生してる位置を探せるかもしれないの! 危ないからちょっと離れてて!」

「え? よくわから・・・」

「さぁ! はやく! あっちの壁まで!」


ミカちゃんは何か言いたげな顔でテーブルの上で座っていたトキちゃんを持って壁まで離れた。2人が安全な位置まで離れたのを確認して、わたしは未だトキちゃんによって凍らされているディルの真上に浮く。


 思い出すんだ。お母さんに質問攻めにされて紅茶を三杯もおかわりしていた若いお医者さんを・・・。不思議な記憶の中で星の核まで覗いていたわたしを・・・。


バチバチッ


ディルを中心に半径1メートルくらいを磁力を纏った青く輝く電気が覆い、磁場が発生する。わたしはその電気の中に入って、目を閉じる。


 ナナちゃんと通信するみたいに・・・ディルに集中して電波を飛ばす。それを、わたしの目に集める! ・・・ごめんねディル。ちょっと体の中覗くよ!!


カッと目を開く。


MRI検査の時の画像みたいに、ディルの体の内部が見える。


 うぅ・・・


わたしは顔を顰めながら、ディルの頭から順番に見ていく。


「あった!!」


 胃の中!! え? 胃の中!?


ディルの胃の中に明らかに臓器とは違う丸い物体があった。その中に魔石があるのも分かる。


 さすがに、ビームで胃に穴を空けるのはまずよね・・・?


何かいい方法は無いかと必死に頭を回転させる。


 うむぅ・・・人間だった頃の記憶で・・・医療の・・・お母さんの・・・シミ。・・・あっ! レーザー治療!! たしか、癌だって光で治療出来るんだったよね! わたしが死んで向こうでどれくらい経ってるか知らないけど、今ではもっと進んでいるかもしれない。


「やって出来ないことはない!」


わたしは両手を前に突き出す。ディルの胃の中にいるスライム目掛けて光を出して照準を合わせる。そして、光の太さを調節してスライムがすっぽり入るくらいの太さにする。


「大丈夫、大丈夫」


そう自分で自分に言い聞かせる。


 スライムだけを焼くイメージで・・・ディルの体に害は出さずに・・・。


「すぅ・・・はぁ・・・」


大きく深呼吸して、わたしは光に自分のイメージを通した。パッと光の色が一瞬赤色になり、消える。光が消えると共に、スライムも消え去っていた。魔石ごと焼き尽くしたみたいだ。


「ふぅ・・・」


周りの青い電気を消して、視界を元に戻す。


「うん。ディルの体には傷1つついてないね!」


ディルの無事を確認して、うんうんと頷く。


「な、何をしてたの? 終わったの?」


ミカちゃんがトキちゃんを持ちながら恐る恐るとわたしに近付いてくる。わたしはディルのお腹の上に立って、手招きする。


「うん! もう大丈夫だと思うよ。トキちゃん、ディルを凍らすのやめていいよ!」

「うん」


その途端、ディルが激しく咳き込んだ。お腹に乗ってたわたしは凄く揺れる。


「ゲホッ・・・ゴホッ・・・ハァハァ・・・」

「ディル!!」

「ディルちゃん!」


ミカちゃんが急いで駆け寄って来て、ディルを心配そうに見下ろす。ディルは呼吸を整えながら目を開けて起き上がり、わたしをそっと優しく両手で掴んだ。


「ディル? 戻ったんだよね・・・?」


ディルは荒く呼吸をしながらわたしを見つめたあと、自分の顔にわたしを当てて頬擦りした。


「わわっ・・・ディル? どうしたの?」


わたしがテシテシとディルの手を叩きながらそう尋ねると、ディルはそっと頬からわたしを離して耳元で囁やいた。


「好きだ」


それだけ言われて、わたしはディルの手から解放された。


 きゅ・・・急になに!?


羽がパタパタと動いてるのが分かる。わたしは真意を求めてディルの顔を見つめる。ディルは瞳を潤ませながらわたしを見て、口を開く。


「俺があんなんになってる間も意識はあったんだ。その間、もうこれで俺の人生は終わりなんじゃないかと思った。そして、ソニアにちゃんと伝えられないまま死ぬのは嫌だなって・・・」


 そっか・・・色々あって不安になってたんだね。その気持ちに答えてあげよう!


「わたしもディルのこと好きだよ!」


 今も昔も変わらず、わたしはディルのこと好きだよ!


「・・・ハァ」


 なんでそこで溜息!?


ディルは不満そうな顔で「まぁ、まだいいか」と呟いて、表情をキリッと切り替えてわたしを見る。


「言い忘れてた。・・・おはようソニア」

「うん! ・・・うん! おはようディル!」


 やっと聞けた。


わたしはディルの顔面に抱き着いた。近くで「よかったねソニアちゃん」というトキちゃんの声とミカちゃんの鼻をすする音が聞こえた。


 本当に・・・わたしの幸せはディルなしではありえないんだなって思ったよ。


一通りディルの顔面をガシガシしたわたしは、ディルにテーブルの上に座らされ、その隣にトキちゃんがミカちゃんの手によって座らされた。


「ソニア、その・・・さっきはごめん、叩いたりして・・・」

「あ~、ディルがゾンビだった時のね。全然気にしてないよ! でも、あとでデコピンね」

「ハ八ッ、なんだその可愛い罰は」


 さては本気のデコピンを食らったことないなー? わたしが本気をだせば例えドラゴンだって・・・


「それで、俺はどうやって助かっ・・・」

「・・・ってこんなことしてる場合じゃない!」


ディルが何か言いかけたけど、本当にそれどころじゃない!


 シロちゃんを助けなきゃ!!

読んでくださりありがとうございます。未知って怖いですよね。注射も怖いです。

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